46 / 99
ようこそ、さっそくですが
第五話
しおりを挟む
「僕たちはネットの中で知り合った中です。ずっとナナさんはネットのつぶやきで家族の不満を書いていて、どの人が見ても明らかにその家族のやってることは理不尽でナナさんは家政婦扱い、僕ら見てる側は逃げろ、離婚しろ、それしかできなかった」
隣にいたナナはうつむいている。虹雨はハッとした。何かを思い出したのだ。
「最近、死んだやろ。あの山の崖から車で落ちた……」
ミツオは頷いた。一年も経ってない、当時人妻とネットで知り合った男が心中をしたのではないかと大騒動になった事件。
ブレーキ痕はなかったが、のちに車が調べられブレーキの不具合があり、ナナのこれからは一からやり直し自由に生きていきたいという書き込みと、新天地である県外の施設の住所があったことで心中でなくミツオがナナの新しい生活をする場所までの後押しとして車を出した矢先の事故と警察はそう見解を示した。だがしばらくはあらゆる噂が錯綜した。
「……ナナをはやく遠くに逃がしたかった。〇〇県の山奥に同じ思いで苦しんで逃げてきた女性をかくまう施設があることをネットの仲間から聞いて……」
虹雨はううむ、と口元を触る。ミツオは手が震えている。
「ミツオ君はナナさんを逃した後どうするつもりだった」
「……普通の生活に戻るつもりです」
「でも戻れんかったな、死んだから」
「……」
「それにナナさんをその場所に連れて行ってもナナさんは大変な思いをしただけでしたよ」
「なんで? そこは絶対ナナさんを救ってくれるって」
「誰から聞いた」
虹雨はミツオに詰め寄った。ミツオはおろおろする。
「ネットで……」
ナナも頷く。
「ネットでか、ネットでって。鵜呑みにしたんか……」
「鵜呑みというか……」
「藁にもすがる気持ちやったのはわかるが、事故で死んだ方がまだマシやったわ」
「なんで!!!」
虹雨はカバンの中からいつものサングラスと革手袋をつけた。服はスエットのままだがこの方が気合が入るようだ。
「なぁ虹雨、なんで死んだ方がまだマシやったってどういうことや」
「たわけか。〇〇県の山奥、施設でピンとこないか」
「……ええと……」
由貴は考える。カメラが下を向いたのを虹雨が直して自分の顔を映した。
「俺らの天敵である一つ、女王蜂たちの巣どこだ……」
「あっ……」
由貴は思い出した。ナナとミツオは2人の顔を覗き込む。
「何ですか、女王蜂って」
「……そなんお前らが今知っても意味がない、成仏せぇ」
虹雨はミツオの額に指を当てた。
「え」
ミツオとナナは消えた。
「……ふぅ」
虹雨はサングラスを外した。
隣にいたナナはうつむいている。虹雨はハッとした。何かを思い出したのだ。
「最近、死んだやろ。あの山の崖から車で落ちた……」
ミツオは頷いた。一年も経ってない、当時人妻とネットで知り合った男が心中をしたのではないかと大騒動になった事件。
ブレーキ痕はなかったが、のちに車が調べられブレーキの不具合があり、ナナのこれからは一からやり直し自由に生きていきたいという書き込みと、新天地である県外の施設の住所があったことで心中でなくミツオがナナの新しい生活をする場所までの後押しとして車を出した矢先の事故と警察はそう見解を示した。だがしばらくはあらゆる噂が錯綜した。
「……ナナをはやく遠くに逃がしたかった。〇〇県の山奥に同じ思いで苦しんで逃げてきた女性をかくまう施設があることをネットの仲間から聞いて……」
虹雨はううむ、と口元を触る。ミツオは手が震えている。
「ミツオ君はナナさんを逃した後どうするつもりだった」
「……普通の生活に戻るつもりです」
「でも戻れんかったな、死んだから」
「……」
「それにナナさんをその場所に連れて行ってもナナさんは大変な思いをしただけでしたよ」
「なんで? そこは絶対ナナさんを救ってくれるって」
「誰から聞いた」
虹雨はミツオに詰め寄った。ミツオはおろおろする。
「ネットで……」
ナナも頷く。
「ネットでか、ネットでって。鵜呑みにしたんか……」
「鵜呑みというか……」
「藁にもすがる気持ちやったのはわかるが、事故で死んだ方がまだマシやったわ」
「なんで!!!」
虹雨はカバンの中からいつものサングラスと革手袋をつけた。服はスエットのままだがこの方が気合が入るようだ。
「なぁ虹雨、なんで死んだ方がまだマシやったってどういうことや」
「たわけか。〇〇県の山奥、施設でピンとこないか」
「……ええと……」
由貴は考える。カメラが下を向いたのを虹雨が直して自分の顔を映した。
「俺らの天敵である一つ、女王蜂たちの巣どこだ……」
「あっ……」
由貴は思い出した。ナナとミツオは2人の顔を覗き込む。
「何ですか、女王蜂って」
「……そなんお前らが今知っても意味がない、成仏せぇ」
虹雨はミツオの額に指を当てた。
「え」
ミツオとナナは消えた。
「……ふぅ」
虹雨はサングラスを外した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
THE TOUCH/ザ・タッチ -呪触-
ジャストコーズ/小林正典
ホラー
※アルファポリス「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」サバイバルホラー賞受賞。群馬県の山中で起こった惨殺事件。それから六十年の時が経ち、夏休みを楽しもうと、山にあるログハウスへと泊まりに来た六人の大学生たち。一方、爽やかな自然に場違いなヤクザの三人組も、死体を埋める仕事のため、同所へ訪れていた。大学生が謎の老人と遭遇したことで事態は一変し、不可解な死の連鎖が起こっていく。生死を賭けた呪いの鬼ごっこが、今始まった……。
ゴーストキッチン『ファントム』
魔茶来
ホラー
レストランで働く俺は突然職を失う。
しかし縁あって「ゴーストキッチン」としてレストランを始めることにした。
本来「ゴーストキッチン」というのは、心霊なんかとは何の関係もないもの。
簡単に言えばキッチン(厨房)の機能のみを持つ飲食店のこと。
店では料理を提供しない、お客さんへ食べ物を届けるのはデリバリー業者に任せている。
この形態は「ダークキッチン」とか「バーチャルキッチン」なんかの呼び方もある。
しかし、数か月後、深夜二時になると色々な訳アリの客が注文をしてくるようになった。
訳アリの客たち・・・なんとそのお客たちは実は未練を持った霊達だ!!
そう、俺の店は本当の霊(ゴースト)達がお客様として注文する店となってしまった・・・
俺と死神運転手がキッチンカーに乗って、お客の未練を晴らして成仏させるヘンテコ・レストランの物語が今始まる。
その影にご注意!
秋元智也
ホラー
浅田恵、一見女のように見える外見とその名前からよく間違えられる事が
いいのだが、れっきとした男である。
いつだったか覚えていないが陰住むモノが見えるようになったのは運が悪い
としか言いようがない。
見たくて見ている訳ではない。
だが、向こうは見えている者には悪戯をしてくる事が多く、極力気にしない
ようにしているのだが、気づくと目が合ってしまう。
そういう時は関わらないように逃げるのが一番だった。
その日も見てはいけないモノを見てしまった。
それは陰に生きるモノではなく…。
ツギハギ・リポート
主道 学
ホラー
拝啓。海道くんへ。そっちは何かとバタバタしているんだろうなあ。だから、たまには田舎で遊ぼうよ。なんて……でも、今年は絶対にきっと、楽しいよ。
死んだはずの中学時代の友達から、急に田舎へ来ないかと手紙が来た。手紙には俺の大学時代に別れた恋人もその村にいると書いてあった……。
ただ、疑問に思うんだ。
あそこは、今じゃ廃村になっているはずだった。
かつて村のあった廃病院は誰のものですか?
暗夜の灯火
波と海を見たな
ホラー
大学を卒業後、所謂「一流企業」へ入社した俺。
毎日毎日残業続きで、いつしかそれが当たり前に変わった頃のこと。
あまりの忙しさから死んだように家と職場を往復していた俺は、過労から居眠り運転をしてしまう。
どうにか一命を取り留めたが、長い入院生活の中で自分と仕事に疑問を持った俺は、会社を辞めて地方の村へと移住を決める。
村の名前は「夜染」。
呪配
真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。
デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。
『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』
その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。
不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……?
「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる