最高で最強なふたり

麻木香豆

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ようこそ、さっそくですが

第四話

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 2人はご飯を食べ終えてある程度部屋を片付けるかと始める。そこまで2人は荷物は多い方でもないが由貴が撮影や動画編集のための機材や机や椅子が欲しいと言い出し虹雨が立て替えて購入しそれも届いていた。

 部屋は平屋建てで2LDK。一応曰く付きではない、事故物件ではない。

「ネット内見では大丈夫だとか言ってたけど、もしかしたらルームロンダリングで記載がない場合もあるかもな……」
「物騒なこと言うなよ、由貴」
「ネット越しでは見えないこともあるしな」

 由貴の目はまっすぐ何かを見ていた。虹雨は嫌な予感しかなかった。

「美佳子も簡単にここにきちまったし、由貴は引きつけやすいし……まさか」

 虹雨がゆっくり後ろを見る。

「なんで」

 当たりであった。見知らぬ男女2人が壁にもたれかかっていた。

「おかしい、さっきまでいなかったし……ネットサイトの事故物件にはここは炎上しとらんかったのに。やっぱ由貴、お前連れてきたんか」
「そう言うことになるんでしょう、死んだのがここじゃないところで……日中は多分死んだ所で2人して立ってるんやろな」
「まぁ良くあるパターンだが……そうだったら前の住人が死亡のためとかなるはずだが」

 虹雨は男女2人の前に立った。2人は虹雨を見るなり会釈をする。2人の間に少し距離がある。

「なんでここに来た。何か言いたいことでもあるのか、伝えたいことでもあるのか」
「はじまった、虹雨先生の除霊タイム」

 由貴はカメラを取り出して撮影を始めた。こういうことになるとテンションが上がる由貴。

「今はスエットやけどな」
「だったら着替えるか」
「まぁええわ。めんどくさい。サクッと除霊して今日はもう寝たいんや」
「僕はこの後編集作業残ってるんですけども」
「……はいはい、じゃあお二人さん。まずは自己紹介してや」

 2人の男女は黙っている。なぜ黙っているのだろうか、由貴はごくりと唾を飲み込む。

「そか、話したくないんか……それに2人は恋人って感じやないな」

 そう言うと2人はぎくっと反応した。虹雨はニヤッとする。

「ただのカップルやないな。曰く付きの……うーん、体の関係はない」
「なんでわかるんだ」

 男の方が声を出した。女よりも若い。まだ20代前半、女性は30代後半。

「……互いの距離、彼女の方は少し怯えている。かといって誘拐犯とかではない」
「彼は、ミツオ君は誘拐犯ではないです」
 女も声を出した。彼女の薬指には指輪がある。
「……俺が話すよ。ナナさん」

 男、ミツオが語り出した。


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