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ただいま
第七話
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由貴と虹雨は通された店内を見渡す。スーツやシャツ、生地など外観からすると店内はこんなに広かったのかと。
「実はいつもきてる黒スーツ、ここのおっさんに作ってもらったんだ」
「あのいかがわしい黒スーツか」
「いかがわしくない。てか別にあんなの着たくないけど着た方が切り替えできるし、気持ちが……ってお前が着ろとかなんか言っとったやろ」
「言ったかなぁ、そんなこと」
とぼけるのが上手い由貴。普段はスウェットを着てゆるっとしている虹雨だがスーツを着るとしまって見えると思ったがホストっぽいスーツで少しいかがわしいと動画サイトやネット掲示板に書かれているのは事実である。
「あのスーツ高いやろ、どう見ても置かれてる生地とか絶対輸入物だし、まずもってオーダーものだから高い……低収入のお前がどうしてあんないいスーツ持ってるのか。しかも同じやつ三着くらいあったぞ」
虹雨は目を泳がす。たいていそういう目線の時は何か裏があるのは分かっている。聞き出そうとしても濁されるだけだと由貴は諦めた。その時に奥から店主がやってきた。
「お二人ともご無沙汰しております。虹雨さんもお母様が12月頭にスーツのお直しで持ってきてくださって」
「は、はい……師走の忙しい時にありがとうございました」
この会話で由貴はハハーンとやはりなと理解した。スーツを買ったのは虹雨の母親であった。メンテナンスまで母親に任せているのかとよみ通りだと勝手に1人で納得した。
「1人でこのお店をやってらっしゃたんですか」
「そうですね、一応全国に仲間があってそのグループにも入ってますから連携はとってますし、一部商品はサイズを測って生地と形を選んでデータを送って海外で作って送ってもらってるんですよ」
「……失礼ですが後継の方は」
店主は由貴の質問にニコッと答えた。
「娘が2人いるのですが……離婚しまして別で暮らしているんです。残念ながらあまり被服には興味がないようで……作るよりかは作っているものを買うくらいですかねぇ。後継はもういいので私の代で終わりです、元々昔からそう思ってましたから」
店の中はアンティークのものばかりで閉まってしまうのはもったいないくらいである。
「そいや、由貴はなんでおっさんの名刺持ってるんだ」
「それは……」
店主は覚えてると頷いて話を始めた。
「実はいつもきてる黒スーツ、ここのおっさんに作ってもらったんだ」
「あのいかがわしい黒スーツか」
「いかがわしくない。てか別にあんなの着たくないけど着た方が切り替えできるし、気持ちが……ってお前が着ろとかなんか言っとったやろ」
「言ったかなぁ、そんなこと」
とぼけるのが上手い由貴。普段はスウェットを着てゆるっとしている虹雨だがスーツを着るとしまって見えると思ったがホストっぽいスーツで少しいかがわしいと動画サイトやネット掲示板に書かれているのは事実である。
「あのスーツ高いやろ、どう見ても置かれてる生地とか絶対輸入物だし、まずもってオーダーものだから高い……低収入のお前がどうしてあんないいスーツ持ってるのか。しかも同じやつ三着くらいあったぞ」
虹雨は目を泳がす。たいていそういう目線の時は何か裏があるのは分かっている。聞き出そうとしても濁されるだけだと由貴は諦めた。その時に奥から店主がやってきた。
「お二人ともご無沙汰しております。虹雨さんもお母様が12月頭にスーツのお直しで持ってきてくださって」
「は、はい……師走の忙しい時にありがとうございました」
この会話で由貴はハハーンとやはりなと理解した。スーツを買ったのは虹雨の母親であった。メンテナンスまで母親に任せているのかとよみ通りだと勝手に1人で納得した。
「1人でこのお店をやってらっしゃたんですか」
「そうですね、一応全国に仲間があってそのグループにも入ってますから連携はとってますし、一部商品はサイズを測って生地と形を選んでデータを送って海外で作って送ってもらってるんですよ」
「……失礼ですが後継の方は」
店主は由貴の質問にニコッと答えた。
「娘が2人いるのですが……離婚しまして別で暮らしているんです。残念ながらあまり被服には興味がないようで……作るよりかは作っているものを買うくらいですかねぇ。後継はもういいので私の代で終わりです、元々昔からそう思ってましたから」
店の中はアンティークのものばかりで閉まってしまうのはもったいないくらいである。
「そいや、由貴はなんでおっさんの名刺持ってるんだ」
「それは……」
店主は覚えてると頷いて話を始めた。
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