最高で最強なふたり

麻木香豆

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事故物件

第十話

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「ハァ? 彼女?!」
 そんなわけないと由貴は昨晩あの家族以外生身の人間は2人きりだったのにと……。でもわかっていた。

「……虹雨、説明してもらおうか」
 虹雨は目を泳がす。

「彼女って言い方があかんやろ……勝手に好きになっただけやろ」

『ひどい、こーちゃんっ』

「こーちゃん?! 幽霊の彼女に……こーちゃんだなんて呼ばせてるのかよ」
「るっせぇ! ちゃうわ……勝手に朝食作る料理好きなギャルが付き纏ってるだけなんや」
「ふーん……」

 由貴は鼻で笑う。昔からこいつは女の子にはモテていたなと思い出す。

「もうええ、帰っていい……いつもありがとう」
『いつもって……てかお友達いるなら言ってよねー。こーちゃんの分しかないんだから』
「あとは俺がやる、もうこいつがいるからお前はもう成仏せえ」

 ボムっ

 とギャルがえっとした顔をして青い炎に包まれて消えた。

「うわー、簡単に女を捨てた……」
「また人聞き悪い。勝手についてきただけやし本当は成仏せなかんなにズルズル居座ってたからええんやて」
「うわー、一番タチ悪いやつや、昔からそうなん……女の子をその気にさせて。幽霊の女の子もそうするんやねー、こーちゃん」
「こーちゃんうるさい!! 今から朝ごはんお前の分まで作るからあっち行ってろ!」
「へいへーい」

 由貴はダイニングに行き料理の音を聞きながら待つ。

「ちなみに部屋の中をきれいにしてくれたのも、こーちゃん親衛隊かい?」
「だからその言い方っ……まぁそうだが……呼べば来る」
「すげぇな、お前上手く使ってんなぁ」
 虹雨は2人分の朝ごはんを器用に運ぶ。
「使わないと勿体無いやろ……あの時の様子だとうまく使えてなかったんか」
「……まぁな、てか普通に美味い」

 と由貴はペロリと目玉焼きを口に頬張る。

「実家の居酒屋賄い目玉焼きや、もっと味わって食べろ。でも相変わらず豪勢に食べるよな……ラーメン屋の時もあっという間に特盛からの替え玉おかわりだったしな」
「久しぶりのご飯だったし……てかその動画残してある?」
「残してるけど?」
「ならいい。また後で動画編集しなきゃな。あのコンビニもあるし」
「おう頼んだ。そうだ……あれも」

 虹雨は席を立ち浴室と和室の部屋にあったかと思うと2台カメラを持ってきた。

「昨晩のキミヤス一家退治もええリアクションやったでぇ!!」
「浴室の時は知ったったけど他にも隠しカメラあったんかー!」
「もちろん!」
「幽霊操れるならキミヤス一家も自分で除霊できたろ……ハメやがって!」

 由貴は怒りのあまり虹雨の分の朝ごはんも一気に平らげた。

「あっ、お前ー!!!!」
「女たらしの騙し屋こーちゃん!」
「うるせぇ!!!」

 そんなこんなで2人の再会は良かったのかどうかはまだいまの時点ではよくわかってない。
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