最高で最強なふたり

麻木香豆

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事故物件

第四話

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 その男の子は青白い顔して二人を見ている。
「あ、キミヤスくん。怖がらんでもええ。こいつは俺の幼馴染や」
 キミヤスと呼ばれた男の子は由貴に会釈をした。
「ども、由貴ですーっ……て。キミヤスくん?! お前、名前しっとんのか」
「この子は元々の住人やし、結構話したら仲ようなって」
「かと言ってまず紹介してくれや。奥におって気づかなかった」
「それはすまん」
 キミヤスはまたペコリと頭を下げた。なんかなぜかそれが申し訳なくなった由貴は虹雨とともに彼の前に行き座った。

「まず違和感はアパートの外観とこの部屋の中。外は古いのにこの中だけめっちゃ綺麗、リフォーム仕立て。こんな綺麗なとこそんなに収入なさそうな虹雨が住めるわけない。つまりリフォームしなきゃいけない事情とその事情で安くなった家賃で住めた、てことやな」
「……正解」
 虹雨はさっぱりと正直に認めた。つまりこの部屋は事故物件であるのだ。

「事故物件に住むのも訳あってな。事故物件を抱えて入居者がおらず他の部屋も借りられず大家が借金抱えてしまうという話聞いてな」
「……よく聞く話やな」
「映画でもあるやろ、ルームロンダリング」
 由貴は首を傾げた。そんな映画あったかと。
「事故や事件が起きた部屋に住んで何事もなく過ごして退去するってやつ。そうすればその次に住む人に一個前に事故物件でしたと言わなくてええやつ。まぁその映画の主人公も霊と対話ができるやつやったな」
「まさかそれで稼いでるのか」
「それも仕事の一つや。ここで何軒目やろ……ついでに除霊すれば報酬もらえるんやでぇ」
 虹雨はニヤッと笑った。

「うわー……そんなええ仕事どこでもらうんや」
「あ、由貴……興味持った? 紹介したろか。一応下請けやけど、俺らの地元の探偵事務所からの依頼でな……」
「なに?! 教えてくれ」
 と由貴が食いついたところでキミヤスがか細い声で

『あの、すいません……盛り上がってるところですが』
 割入り、二人は我に帰った。
「すまん、キミヤスくんのこと忘れとったわ」
「ごめんね」
『いいえ、2人の間割り入ってしまい……』
 キミヤスは肩身狭そうにして遠慮してた。さっきの二人の霊とは大違いである。

「ルームロンダリングはさておき、ここでどんな事件おきたん。キミヤスくんも巻き込まれたってことやろ」
 キミヤスは頷いた。

『母が半狂乱になって祖父と父と僕を殺しました』

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