最高で最強なふたり

麻木香豆

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再会

第一話

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 あれから十年以上経つ。

 肌寒い冬。とても冷え込み夜はもう凍え死ぬほど寒い。
「もう僕はダメかもしれん」

 都会のとあるビルの屋上。由貴は仕事でここの清掃に来たことがあり、夜は屋上に行けることを知っていた。

 夜景が遠くに見える。このビルは市街地にある寂しげな場所に建っている。

 彼は大学卒業後、一度は家電販売店の正社員として働いたのだが、過大なノルマやパワハラで精神を病み一年で辞めてしまい、その後はアルバイトで食いつないできた。
 しかしここ数年の不景気と由貴の遅刻が重なりクビになってしまったのだ。

 実家に帰る金も無く、実家との折り合いも悪く連絡も取っておらず、かつ公共料金も家賃も払えずに今度住んでいた部屋から退去命令、そして借金だけ残り、頼る当てもなく露頭に迷って最後にこの屋上に来た。落ちこぼれになっていたのだ。

「こんなに真っ暗だなんて。僕の最後の死には相応しいなぁ」
 日中はここまで暗くはない。夜に来たのは初めてである。あまりの暗さに少し驚いている。

「ああ、それでええんや……一度はいい思いしたから、あの頃にな」
 柵を越え、そっと目を瞑る由貴。足はガクガク震える。

 その時だった。
「それでいいの?」
 と声がした。

「えっ」
 由貴の横に黒ずくめの長髪の女の子が立っていた。

 よく見てみると女の子の手にはかぼちゃの何か。それが仄かに光っている。
「カボチャのお化け?!」
 由貴は目を擦ってもう一度見る。
「ジャックオーランタン」
 女の子は差し出す。格好はそれに合わせてなのか猫みたいな格好だ。しかもミニスカート。そして谷間が見える。由貴はドキッとした。目線に困る。
 しばらく女性と話してはいないからだ。そしてあまり女性に免疫がない。ダメだと思いながらも何度かちらちらと見てしまう。

「いやいや、君……なんでそこおるんや」
「あなたこそなんでここにいるの?」
「それは……」
「ハロウィンのコスプレ撮影しにきてたんだけどさ、それは全部嘘で。カメラマンの男に暴行されて……そっから記憶がないんだ」
「うげっ……最悪やな」
「……誰か私を助けにきてくれないかな」
「このビルの中にいるってこと?」
 うん、と彼女は頷いた。
「まだここにいるってことは探せばええんやけど……俺は今から……」
 と地面を見た瞬間。

「バカ! 何やってるんや!」
「わぁっ!」
 男の声が聞こえて由貴は後ろから引っ張られて柵の中に倒れ込んだ。
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