23 / 93
ふーふになるまで
第22話 告白
しおりを挟む
朝起きて湊音は李仁が用意してくれた朝ごはんを食べる。
朝から手の込んだものを作るもんだと。
『この食器や箸は元彼のものだろうか』
と気にしてしまう湊音。
「それ、お客様用だから」
「えっ、そ、そう……」
『あまり見てたからバレたかな……』
「カイから連絡あってさ……あ、元彼はカイくんっていうんだけどね。昨日メール入っててねー。『また男を連れて来たのか』って。驚かせてごめんね」
「ううん、僕も聞こうとしたけど……アレかなぁと思ってさ」
「まぁいつかはバレると思ったけどさ。もう別れるし、このマンションもらえるし。今はミナくん一筋」
李仁はニコッと微笑む。湊音はそれを聞いて少し嬉しいような、そうでもないような。
「李仁は過去とか気にするほう?」
「んー、犯罪とかなければ……」
湊音はお茶を飲んで少し間を開けて言った。
「僕がバツイチでも?」
「別に」
「女性と結婚していたとしても?」
「ノンケとは何人かとしたことあるから大丈夫」
そして少し間を開けて
「元妻との間に……子供がいてもか」
李仁は流石に手を止めたがすぐ返した。
「……認知はしてるの?」
「うん」
李仁は笑った。
「だからこないだ絵本見てたんだー」
「うん、そういうわけ」
「……ふぅん」
「ごめん、朝からこんな話」
「大丈夫。認知してなかったら張り手だけど」
「……怖っ」
「どういう経緯かは今は聞かないけど少しほっとした」
『ほっとした?』
湊音はキョトンとした。李仁はごはんを食べ終わり食器を片付ける。
「ミナくんの遺伝子がこの世に残っていること」
「えっ」
「私たちこれからずっと一緒にいるとして……男と男同士では組み合わせできないから」
李仁は簡単にさらっと言ったが湊音は同性同士付き合うことの行く末は全く考えておらず、普通とは違うということを思い知ることになる。
だがまだ付き合ったのかというとまだ始まったばかりの二人であり、湊音にとっては早い話にしか思えなかった。
「なんてね、重い話返し」
と李仁が舌を出していつものように戯ける。
湊音もごはんをたべおわり、それを李仁が片付ける。そしてスーツはあのオーダーしたものを。
「すごく似合うねーカッコいい」
「ありがとう。しかも取りに行ってくれて……また頼みたい」
「うんうん、そうしよー。わたしも毎年作ってるし。仕事の気合いの入り具合が違うのよー」
李仁は昼前の出勤とのことでまだルームウェア。そのまま玄関先まで送り届けてくれるらしい。駅までは歩いていくため少し早めにでることにした。
「今夜は本屋で終わりまで仕事だから来てね」
「うん……行けたら」
「合鍵渡しておくし、夜ご飯も作っておくから先食べていいよ」
湊音は今日1日のことを考えるとすごく気持ちが萎えてしまう。だが戻る場所はある。
「もぉ、少しはいい顔して。じゃあわたしがおまじないかけてあげる」
と言って湊音のおでこにキスをした。
『おまじないってこのこと?! 口じゃなくて……』
湊音は嬉しくて爪先待ちになり李仁の唇に軽くキスをした。
「あらっ、キスをしたくなるおまじないだったかしらー。いってらっしゃい」
「いってきます」
それから湊音は学校に行き、授業をし、放課後にはPTA総会。ほとんど彼に対しての批判的な抗議で湊音は謝罪に追い込まれるが大島のフォローでその場はおさまった。
クラブに行ったこと、街中で李仁とキスをしたということ、元妻との間に子供がいたことなどだが教師のプライベートのことだとあまり深く掘り下げないとしたものの、あまりにも親たちからの心象は良い物ではない。
生徒に示しがつかないとか、ましてや今は二年生を受け持つ湊音はそのまま来年受験生を受け持たせるかと不安になる親たちもいた。
彼の今後は湊音を帰らせたあと、主任や校長、教頭らが話し合いをして次の日に判断を下すとのことになった。
『疲れた……クラブに行ったことは軽率だったが同性愛者ってことに食いつく親たちが多かったな』
街中で男女のカップルが行き交うのを見ると同性同士は普通ではないのか、と湊音は感じた。今後李仁と付き合うとして堂々と街を歩けるのだろうか。
まずもって同性同士結婚ができる国ではない。
『李仁に会いたい、けど疲れた……』
湊音は李仁の家に戻ることにした。スマホには志津子からのメールがあり、
「昨日はごめんなさい。パパと二人で話し合いました。今日は帰ってくるの?待ってます」
と。湊音は
「帰らない」
とかえした。今帰ったとしても話さなくてはいけないだろう、疲れることが目に見えている。
子供のことを隠していたことは申し訳なかったと思う湊音だが、今話すものではないかと。それを考えるだけでも頭が痛くなる。
駅から李仁の家に向かう途中でも色々考えてしまうがネガティブなことしか思いつかない湊音。
明日には自分の進退が決まる。2年の担任はそのまま持ち上がって3年も担当することが多い。それを見守ってやらないのか、練習を休みにしている剣道部の部員たちにもなんと言えばいいのか、担当を受け持つクラスの生徒たちになんと言われるのか、どんな目で見られるのか。今日1日でもちょっと変な雰囲気がした。
『もう嫌だ』
気づけば李仁のマンションに着いていた。
『李仁はやたらとポジティブだからあのポジティブさを分けて欲しい。そういえば彼がかけてくれた魔法というのは効果あったのだろうか……』
とぼとぼと部屋まで行き、鍵を開ける。すると明かりがついていた。
『ん? 李仁帰ってきてるのか』
すると李仁が出てきた。湊音はびっくりする。そこにはニコニコと待っている彼がいた。
「おかえりなさい。今日は早く帰ってきちゃったー。早くご飯食べよっ」
美味しい匂いもする。湊音はカバンを置き、李仁に抱きついた。
「ちょっとぉ、ミナくんー」
「李仁ぉおおおお」
しばらく湊音は李仁に抱きつきながらたくさん泣いた。気が張っていたのが一気に弾けた。
李仁は頭を撫でて何も聞かず抱きしめた。
朝から手の込んだものを作るもんだと。
『この食器や箸は元彼のものだろうか』
と気にしてしまう湊音。
「それ、お客様用だから」
「えっ、そ、そう……」
『あまり見てたからバレたかな……』
「カイから連絡あってさ……あ、元彼はカイくんっていうんだけどね。昨日メール入っててねー。『また男を連れて来たのか』って。驚かせてごめんね」
「ううん、僕も聞こうとしたけど……アレかなぁと思ってさ」
「まぁいつかはバレると思ったけどさ。もう別れるし、このマンションもらえるし。今はミナくん一筋」
李仁はニコッと微笑む。湊音はそれを聞いて少し嬉しいような、そうでもないような。
「李仁は過去とか気にするほう?」
「んー、犯罪とかなければ……」
湊音はお茶を飲んで少し間を開けて言った。
「僕がバツイチでも?」
「別に」
「女性と結婚していたとしても?」
「ノンケとは何人かとしたことあるから大丈夫」
そして少し間を開けて
「元妻との間に……子供がいてもか」
李仁は流石に手を止めたがすぐ返した。
「……認知はしてるの?」
「うん」
李仁は笑った。
「だからこないだ絵本見てたんだー」
「うん、そういうわけ」
「……ふぅん」
「ごめん、朝からこんな話」
「大丈夫。認知してなかったら張り手だけど」
「……怖っ」
「どういう経緯かは今は聞かないけど少しほっとした」
『ほっとした?』
湊音はキョトンとした。李仁はごはんを食べ終わり食器を片付ける。
「ミナくんの遺伝子がこの世に残っていること」
「えっ」
「私たちこれからずっと一緒にいるとして……男と男同士では組み合わせできないから」
李仁は簡単にさらっと言ったが湊音は同性同士付き合うことの行く末は全く考えておらず、普通とは違うということを思い知ることになる。
だがまだ付き合ったのかというとまだ始まったばかりの二人であり、湊音にとっては早い話にしか思えなかった。
「なんてね、重い話返し」
と李仁が舌を出していつものように戯ける。
湊音もごはんをたべおわり、それを李仁が片付ける。そしてスーツはあのオーダーしたものを。
「すごく似合うねーカッコいい」
「ありがとう。しかも取りに行ってくれて……また頼みたい」
「うんうん、そうしよー。わたしも毎年作ってるし。仕事の気合いの入り具合が違うのよー」
李仁は昼前の出勤とのことでまだルームウェア。そのまま玄関先まで送り届けてくれるらしい。駅までは歩いていくため少し早めにでることにした。
「今夜は本屋で終わりまで仕事だから来てね」
「うん……行けたら」
「合鍵渡しておくし、夜ご飯も作っておくから先食べていいよ」
湊音は今日1日のことを考えるとすごく気持ちが萎えてしまう。だが戻る場所はある。
「もぉ、少しはいい顔して。じゃあわたしがおまじないかけてあげる」
と言って湊音のおでこにキスをした。
『おまじないってこのこと?! 口じゃなくて……』
湊音は嬉しくて爪先待ちになり李仁の唇に軽くキスをした。
「あらっ、キスをしたくなるおまじないだったかしらー。いってらっしゃい」
「いってきます」
それから湊音は学校に行き、授業をし、放課後にはPTA総会。ほとんど彼に対しての批判的な抗議で湊音は謝罪に追い込まれるが大島のフォローでその場はおさまった。
クラブに行ったこと、街中で李仁とキスをしたということ、元妻との間に子供がいたことなどだが教師のプライベートのことだとあまり深く掘り下げないとしたものの、あまりにも親たちからの心象は良い物ではない。
生徒に示しがつかないとか、ましてや今は二年生を受け持つ湊音はそのまま来年受験生を受け持たせるかと不安になる親たちもいた。
彼の今後は湊音を帰らせたあと、主任や校長、教頭らが話し合いをして次の日に判断を下すとのことになった。
『疲れた……クラブに行ったことは軽率だったが同性愛者ってことに食いつく親たちが多かったな』
街中で男女のカップルが行き交うのを見ると同性同士は普通ではないのか、と湊音は感じた。今後李仁と付き合うとして堂々と街を歩けるのだろうか。
まずもって同性同士結婚ができる国ではない。
『李仁に会いたい、けど疲れた……』
湊音は李仁の家に戻ることにした。スマホには志津子からのメールがあり、
「昨日はごめんなさい。パパと二人で話し合いました。今日は帰ってくるの?待ってます」
と。湊音は
「帰らない」
とかえした。今帰ったとしても話さなくてはいけないだろう、疲れることが目に見えている。
子供のことを隠していたことは申し訳なかったと思う湊音だが、今話すものではないかと。それを考えるだけでも頭が痛くなる。
駅から李仁の家に向かう途中でも色々考えてしまうがネガティブなことしか思いつかない湊音。
明日には自分の進退が決まる。2年の担任はそのまま持ち上がって3年も担当することが多い。それを見守ってやらないのか、練習を休みにしている剣道部の部員たちにもなんと言えばいいのか、担当を受け持つクラスの生徒たちになんと言われるのか、どんな目で見られるのか。今日1日でもちょっと変な雰囲気がした。
『もう嫌だ』
気づけば李仁のマンションに着いていた。
『李仁はやたらとポジティブだからあのポジティブさを分けて欲しい。そういえば彼がかけてくれた魔法というのは効果あったのだろうか……』
とぼとぼと部屋まで行き、鍵を開ける。すると明かりがついていた。
『ん? 李仁帰ってきてるのか』
すると李仁が出てきた。湊音はびっくりする。そこにはニコニコと待っている彼がいた。
「おかえりなさい。今日は早く帰ってきちゃったー。早くご飯食べよっ」
美味しい匂いもする。湊音はカバンを置き、李仁に抱きついた。
「ちょっとぉ、ミナくんー」
「李仁ぉおおおお」
しばらく湊音は李仁に抱きつきながらたくさん泣いた。気が張っていたのが一気に弾けた。
李仁は頭を撫でて何も聞かず抱きしめた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる