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短編集

喫茶店にて

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 とある昼下がり。李仁の運転でとある喫茶店についた。僕たちの友達が家族で経営している。アットホームな場所。
 僕らの家から少し離れているからたまにしか行けないけど落ち着く場所。

「いらっしゃいませ……あら、李仁さんに湊音さん」
 出迎えてくれたのは店主のアオイくん。彼もまた李仁と知り合いなんだけど(体の関係とかはあったか不明)僕らより年下で料理もすごく腕が良くて美味しい。
 コーヒーも美味しいし。奥のキッチンでは彼の弟さん夫婦もいる。

 カウンター席に座り本日のランチプレート。ミートスパゲティとオムレツ、ひじきサラダ。

「美味しいっ」
「ひじきサラダ、ドレッシングもいいね。あとでレシピ教えて」
 李仁はすぐ自分で取り入れようとする。元バーテンダーで料理好きな彼ならでは。

「李仁さん、また本の選定お願いします」
「了解。今度リスト送るね」
 ちゃっかり本屋の仕事もしている。李仁が営業で喫茶店に置く本を選定してとか。本当2人はどこまでの関係だったのだろう。気にしてたらキリがないや。

 デザートは手作りチーズケーキ。甘すぎないから好き。
 こないだレシピ教えてもらったのに再現が難しいんだよなー。
「でもあれはあれで美味しいわよ」
「まぁここで食べられるしね」
「そうね」
 僕らの会話をニコニコしながら見てくれるアオイくん。

 ふとカウンターの奥を見るといつもとは違う写真が飾ってあった。
「あ、気になった? つい最近変えたばかりよ」
 そこには若いアオイくんと、横にはアオイくんの彼氏だったツカサさんが寄り添っている写真だった。

 もともとこの喫茶店はアオイくんの両親が経営していて、そこの常連だったツカサさんがアオイくんと恋に落ちて2人で喫茶店を継ぐことになった。

 でも数年前にツカサさんは癌で亡くなってしまった。数回だけ僕もツカサさんに会ったけどとても優しくて穏やかな人だった。

「整頓していたらこの写真出てきてね、喫茶店をリニューアルしたときのかな。まだ癌を宣告される前だから少しふっくらしてるでしょ」
 とアオイくんは写真の中のツカサさんを愛おしく見ている。
 そういえば2人一緒にいる時ずっと隣にいたっけ。

「もうすぐ三回忌……早いもんだなあ」
「今度は義父さんもきてくれるんだっけ」
「うん。だから今ツカサのレシピ見直してお出しする料理を選んでるところなの」
 2人の交際はずっと反対されていた。でもようやく和解したそうだ。

 生きているうちに認められていたら良かったのにな。

「はいはーい、2人。今度はこのクッキーも食べて」
「至れり尽くせりだなぁ」
「2人きてくれるからつい嬉しくって」
 アオイくんの笑顔好きだなぁー。無邪気で。僕らはクッキーをかじる。美味しい。


 喫茶店から出る時、自家製ジャムをもらった。
「またきてくださいね」
「うん、三回忌のときに行くわ」
 ブルーベリージャム、美味しそう。微笑むアオイくん。彼はこれからどうするんだろう。
 心なしか李仁を見て微笑んでいる。李仁も。この2人、やっぱなんか関係あったのかな。




◆◆◆
 車に乗り込むときに李仁が
「ミナくん、ちょっと疑ってる?」
 ドキッ。バレたか。僕は頷いた。
「アオイくんは確かに好みのタイプよ。クラブでも何回かモーションかけたけどダメだった」
「えっ、李仁の誘惑を避けた?」
 李仁は僕と付き合う前(付き合ってる時もだけど)はいろんな男の人と関係持ってて、彼が誘惑すれば大抵堕ちる、とか聞いたことあったけど……。

「ツカサさんがピッタリくっついててーダメだったのよ。あー、あの子甘い顔してバリタチなんだからっ、悔しかった」
 バリタチっ! 見かけによらずだな……。
でも特に関係はないんだ。なんか前からもありそうだなぁと思ってちょっとモヤモヤしながらお店行ってたけど。
 ちょっとほっとした。……すると李仁が僕の肩を抱き寄せてキスをしてきた!

「もう、嫉妬しないで。私はミナくんが大好きなんだからっ」
「李仁ぉっ、大好き」
 チュッチュとキスが激しくなる。
 座席を押し倒されてキスの連発。って、お店の駐車場でなにしてるのっ。
「あん、もう我慢できないっ。私をタチにさせちゃったミナくん」
「し、知るかっ!」
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