家内安全、夫夫円満（-2020）

短編集

あなたのそばで

「あっ……あっ……」
　李仁が椅子に座って、僕だけ全裸で彼の上に乗る。ゆっくり上下に動く。彼が僕を支えて……何度かキスをする。
　家にこもっている間はどうしても李仁とエッチする回数が増える。今は僕が休みだから尚更。

「ねぇっ、お仕事中でしょ？ダメだよ、李仁ぉ」
「とか言いながら腰を動かしてるのは誰？」
とさらに激しく揺らされる。
「いやぁあああああっ！！」
「あっん、いくぅ……ミナくんっ！！！」



◆◆◆
　全裸でベッドに横たわり、李仁がデスクで仕事をしている姿を見る。カタカタカタカタとパソコンのキーボードを叩く音、仕事をしてる李仁の姿がかっこいい。
　毛布にくるまって微睡む。なかなか最近寝つきが悪く、変な時間に眠くなる。四月初めには高校も始まるかもしれないのにこの体調のリズムを整えなくてはいけない。

　シャーペンでシャッシャと図面描く音。本屋のディスプレイも考えている李仁。こんな時期でも本を売ろうと工夫している李仁。すごいなぁ。今の時代パソコンで作業できるのに図面を描くときは手描き。
　
　それを描いたらスキャナで読み取ってデータを送る。声をかけることができないくらい集中している彼をみてずっとこのままだったらいいのに、なんて思ってしまう。

「退屈でしょ？　今寝たらまた夜中寝られなくなるわよ」
　頭を撫でてくれた。……うん、眠くなりそうだったよ。最近はスイーツ作りも身が入らないし、なるべくそういう材料よりも肉とか魚のストックに回したいから作ってない。

「憎い……」
「なにが？」
「ミナくんが普通じゃなくなっちゃった。そんなふうにさせたこの世が憎い……」
「李仁……」
　今にも泣き出しそうな李仁の顔。ごめんね、李仁。心配かけちゃって。
　と思った瞬間、李仁は僕のお尻を掴んだ！！

「なんてね！　この桃みたいなお尻！剣道やってないし、筋トレもしてなくて締まりのない身体！！　明日からまた本格的に筋トレしましょ！」
　今度はお腹の肉も掴まれた。たしかに締まりがないなぁ、この体。だらしない。


「でも肉肉しいミナくん、久しぶりだから可愛いけどね」
「もう、まだ仕事でしょ？」
「休憩ですぅ」
「李仁もしばらく在宅のほうがいい？」
「んー、退屈ぅ。でも休憩のたびにミナくんとエッチできちゃう」
「バカ」
「バカだもん」
「ふふっ」
「ミナくん、笑った」
「李仁のおかげ」
　李仁に抱きついた時だった。

　ピロロロン！
　
「あっ、会社から……しかもテレビ電話！ミナくん映り込まないようにしなきゃ」
　李仁は服と髪の毛を整えてビデオの位置を変えて出た。

「はい、里志です」
　仕事してる時は旧姓だもんな。喋り方も違う。ああ、僕はしばらくこのままがいいや。

『里志さん、ボタンかけちがえてますよ？！』
　と電話先の彼の部下。
「あらやだ！」