家内安全、夫夫円満（-2020）

おまけ…お互いのこと10個褒め合わないと出られない部屋に通されたのだが

第1話

　駅、夜8時過ぎ。市の中心部にあり、学生から社会人、カップル、いろんな人が行き交う。駅前には居酒屋が多くあり、金曜日ともあって浮かれたサラリーマンたちが店に吸い込まれていく。

「みなくーん」
　背の高いスーツ姿の男が手を振って待ってる。彼は李仁。書店営業部の33歳。タバコの吸い殻を喫煙所の灰皿に捨てた。
「李仁、お待たせ。これでも急いで来た方なんだ」
　ポロシャツとスラックスに斜めがけバッグの紐の部分をぎゅっと握って走ってきたのは、湊音。李仁と同じ年で高校教師である。小柄で３３歳には見えない。車がない湊音は学校の最寄りの駅から電車でここまできた。

「部活動の指導お疲れ様。今日も可愛いわね」
　人目もはばからず李仁は湊音をグイッと引き寄せておでこにキスをする。背の高い李仁は少しかがんで今度は口に。
　李仁はゲイで女っぽいが、たまに男気のある行動をするため、女性にもモテる。本人は男しか興味がないというが……。

　湊音は体を引き離す。顔を真っ赤にして。通行人はジロジロみている。
「もうやめろって。人前ではキスしちゃダメだって約束したじゃん」
　少し怒り気味だがその様子を見た李仁は湊音を愛おしく感じる。

「お腹すいたから、早くご飯食べに行こう♪」
　ぎゅっと手を李仁はつなぎ、湊音は俯いてついていく。少し恥ずかしいようだ。