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第1節 〜施設脱出編〜
第2話 能力検査
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――いきなり何を言っているんだこの看護師は。
死んだことになっていると?俺はここにいるぞ。
「ではこれにて失礼します。施設の規律などはまた
後日説明します。取り敢えず今日のところは休養をとって下さい」
白いナース服に身を包んだ看護師はそう言い捨て、重そうなドアを閉めて去った。
おかしい。何かがおかしいぞ。
普通はこのまま少し賑やかな病室に連れられ、暖かい布団に横になる筈だ。
だがこの辺りは人の気配がなく、まさに収容されているようだ。
体を起こそうにも、上手く体に力が入らない
手術を終えたばかりだからか、とても疲れた俺は睡眠をとることにした。
―翌朝、目が覚めた。
トイレはしっかり個室になっているようだ。
俺は開放感のあるトイレなんて求めていないからな。
小さいが洗面所もついている。
手術をした傷口を見るために、小さい鏡の前で
患者服を脱いだ。
まだ指に力が入らず、すこしだけ手こずった。
鏡の中には、当たり前だが俺の顔が映っていた。
しかし、喉仏の下辺りで横に一周して傷が入っていた。
一体どんな施行したのだろうか?
そのまま目線を下に向けるとそこには自分の知らない体が映っていた。
「……え?」
顔は俺だ。それは確かだ。
だが俺の体は俺のじゃない。
こんなに肉付きも良くなかった。俺の体はもっと細かったはずだ。
しかし目の前には、とても信じ難い現象が起こっている。
も、もしかして、俺の首と他の体を…
「嶺間 怜、外へ出なさい」
「…?あ、はい…」
俺は部屋から出され、看護師に着いていった。
お互い一言も発さずにいた。
廊下を奥に進み続け、やがて広い研究室の様な場所に着いた。
研究室は至る所の壁がガラスになっており、外からも観察出来るような部屋であった。
中には注射器などの様々な器具が置かれていたりしていた。
そこには10人ほど、俺と同じ患者服を着た者がいた。
俺はそのまま研究室に入れられ、説明を聞かされた。
「うむ、第一層のアノマリーはこれで全てかの?」
前に立つ白髪の白衣を着たおじさんが看護師に聞いた。
「ええ、そうです」
「では、軽く説明を始める。なんせ昨日来たばかりの者がいるからな」
昨日来たのは俺だ。
つまり他の人達は前から居たのか?
そして"アノマリー"とはなんだ。
患者はここに居るので全てではないのか?
今分かるのは、自宅に帰れなそうであることぐらいだ。
「まず、アノマリーとは変異者の事を指す。つまり君たちだ」
俺たちが異常者だと?なんの冗談だ。
俺はただ、手術を受けただけだが?
「異常者と言っても、君たちは首を傾げるだろう」
ああ、全くそうだ。
俺に異常な事なんてない。
「しかし、手術を受けた君たちは、何らかの能力が使えるはずだ」
能力だと?何を言っているんだ、このおじさんは。
俺は怪しい宗教団体にでも捕まったのか?
「では早速、検査を始めようか」
指示を出され、看護師たちは道具を準備し始めた。
「では、まずは同期率の検査です」
同期率?もはや俺にはこいつらの言っていることが全く理解出来ない。
文句を言いながらも俺はされるがままに、
頭に謎の機械を取り付けられた。
「他は検査済みなので、14番だけです」
俺は暫く椅子に座っていると、モニターにパーセンテージが映し出された。
「嶺間 怜、同期率…に、216%です」
とても驚いた様子で看護師がおじさんに告げた。
「216だと?何かの間違いだろう。もう1回やり直せ」
もう一度リセットされ、モニターにグラフが映る。
だが先程と同じ、216%だ。
「や、やはり、216%です…」
「歴代最高でも178%だぞ?!そんなことありえるのか?!」
目を剥き、おじさんが叫ぶ。
「だが、機械が壊れているのやもしれんな。また後日調整した後、やり直そう」
「了解しました」
すぐに落ち着いた。情緒がどうかしているのか?
「次は能力検査だ。これは全員やりなさい」
他の人達も動きだし、隣の部屋へ移動した。
「嶺間くんは最後にやりなさい。⋯⋯君にはとても期待しているよ」
ただの17歳に何を期待しているのだろうか。
そんなことよりも、果たして俺に能力なんてものがあるのか?
実に信じ難いが、とりあえず他の人を見てみよう。
検査する人以外は別室で、ガラス越しで見えるのだ。
「1番、能力検査開始」
短髪の細い男の人が、的に手をかざした。
途端、体中から電気を放出し始め、手のひらに炎が出てきた。
大きさは1mほどで、それを的に投げた。
当たった的は燃え尽き、それを見た患者たちは感嘆の息を吐いていた。
「1番、推定Cランク」
その調子で検査は続いた。
炎とは対極に氷を出したり、音を発したり、水を生み出したりなど、さまざまだ。
中でも俺が1番驚いたのは、突然空中から何本も金属製の剣を錬成し、投げつける能力だ。
実に派手で、危なそうな能力だ。
この中では唯一の推定Bランクだそうだ。
ここで分かったのが能力が強い程、体から発する電気も強い事だ。
最後はいよいよ俺の番だ。
一体俺には、どんな能力があるのだろうか。
物語でしか見た事の無い、夢にまで見た体験だ。
仕組みは分からないがとても興奮している。
「では14番、能力検査開始」
だが能力を使おうにも、使い方が分からない。
あたふたしていると、スピーカーから声が聞こえてきた。
「目を瞑り、脳を意識するんだ。きっと脳みそが能力を教えてくれるはずだ」
脳、だと…?
俺は言われるがままに、目を瞑った。
(⋯教えろ。俺の能力を。)
能力はなんだと何度も頭の中で唱える。
それは、耳馴染む声で囁かれた。
『⋯――――。』
誰の声だかは分からない。だが、とても聞き慣れている。
脳が教えてくれた、俺の能力。
それは、言葉には出来ないがどう使えば良いかは理解できる。
「ふむ、分かったようだな。ならば置いてある道具を使ってもよい。発動したみまえ」
俺は置いてあったペンを持ち、的に構えた。
やはり俺の体中からも電気を発した。
今までの人とは比べ物にならないほどに。
部屋の中にはとてつもない電気が放出されていた。
死んだことになっていると?俺はここにいるぞ。
「ではこれにて失礼します。施設の規律などはまた
後日説明します。取り敢えず今日のところは休養をとって下さい」
白いナース服に身を包んだ看護師はそう言い捨て、重そうなドアを閉めて去った。
おかしい。何かがおかしいぞ。
普通はこのまま少し賑やかな病室に連れられ、暖かい布団に横になる筈だ。
だがこの辺りは人の気配がなく、まさに収容されているようだ。
体を起こそうにも、上手く体に力が入らない
手術を終えたばかりだからか、とても疲れた俺は睡眠をとることにした。
―翌朝、目が覚めた。
トイレはしっかり個室になっているようだ。
俺は開放感のあるトイレなんて求めていないからな。
小さいが洗面所もついている。
手術をした傷口を見るために、小さい鏡の前で
患者服を脱いだ。
まだ指に力が入らず、すこしだけ手こずった。
鏡の中には、当たり前だが俺の顔が映っていた。
しかし、喉仏の下辺りで横に一周して傷が入っていた。
一体どんな施行したのだろうか?
そのまま目線を下に向けるとそこには自分の知らない体が映っていた。
「……え?」
顔は俺だ。それは確かだ。
だが俺の体は俺のじゃない。
こんなに肉付きも良くなかった。俺の体はもっと細かったはずだ。
しかし目の前には、とても信じ難い現象が起こっている。
も、もしかして、俺の首と他の体を…
「嶺間 怜、外へ出なさい」
「…?あ、はい…」
俺は部屋から出され、看護師に着いていった。
お互い一言も発さずにいた。
廊下を奥に進み続け、やがて広い研究室の様な場所に着いた。
研究室は至る所の壁がガラスになっており、外からも観察出来るような部屋であった。
中には注射器などの様々な器具が置かれていたりしていた。
そこには10人ほど、俺と同じ患者服を着た者がいた。
俺はそのまま研究室に入れられ、説明を聞かされた。
「うむ、第一層のアノマリーはこれで全てかの?」
前に立つ白髪の白衣を着たおじさんが看護師に聞いた。
「ええ、そうです」
「では、軽く説明を始める。なんせ昨日来たばかりの者がいるからな」
昨日来たのは俺だ。
つまり他の人達は前から居たのか?
そして"アノマリー"とはなんだ。
患者はここに居るので全てではないのか?
今分かるのは、自宅に帰れなそうであることぐらいだ。
「まず、アノマリーとは変異者の事を指す。つまり君たちだ」
俺たちが異常者だと?なんの冗談だ。
俺はただ、手術を受けただけだが?
「異常者と言っても、君たちは首を傾げるだろう」
ああ、全くそうだ。
俺に異常な事なんてない。
「しかし、手術を受けた君たちは、何らかの能力が使えるはずだ」
能力だと?何を言っているんだ、このおじさんは。
俺は怪しい宗教団体にでも捕まったのか?
「では早速、検査を始めようか」
指示を出され、看護師たちは道具を準備し始めた。
「では、まずは同期率の検査です」
同期率?もはや俺にはこいつらの言っていることが全く理解出来ない。
文句を言いながらも俺はされるがままに、
頭に謎の機械を取り付けられた。
「他は検査済みなので、14番だけです」
俺は暫く椅子に座っていると、モニターにパーセンテージが映し出された。
「嶺間 怜、同期率…に、216%です」
とても驚いた様子で看護師がおじさんに告げた。
「216だと?何かの間違いだろう。もう1回やり直せ」
もう一度リセットされ、モニターにグラフが映る。
だが先程と同じ、216%だ。
「や、やはり、216%です…」
「歴代最高でも178%だぞ?!そんなことありえるのか?!」
目を剥き、おじさんが叫ぶ。
「だが、機械が壊れているのやもしれんな。また後日調整した後、やり直そう」
「了解しました」
すぐに落ち着いた。情緒がどうかしているのか?
「次は能力検査だ。これは全員やりなさい」
他の人達も動きだし、隣の部屋へ移動した。
「嶺間くんは最後にやりなさい。⋯⋯君にはとても期待しているよ」
ただの17歳に何を期待しているのだろうか。
そんなことよりも、果たして俺に能力なんてものがあるのか?
実に信じ難いが、とりあえず他の人を見てみよう。
検査する人以外は別室で、ガラス越しで見えるのだ。
「1番、能力検査開始」
短髪の細い男の人が、的に手をかざした。
途端、体中から電気を放出し始め、手のひらに炎が出てきた。
大きさは1mほどで、それを的に投げた。
当たった的は燃え尽き、それを見た患者たちは感嘆の息を吐いていた。
「1番、推定Cランク」
その調子で検査は続いた。
炎とは対極に氷を出したり、音を発したり、水を生み出したりなど、さまざまだ。
中でも俺が1番驚いたのは、突然空中から何本も金属製の剣を錬成し、投げつける能力だ。
実に派手で、危なそうな能力だ。
この中では唯一の推定Bランクだそうだ。
ここで分かったのが能力が強い程、体から発する電気も強い事だ。
最後はいよいよ俺の番だ。
一体俺には、どんな能力があるのだろうか。
物語でしか見た事の無い、夢にまで見た体験だ。
仕組みは分からないがとても興奮している。
「では14番、能力検査開始」
だが能力を使おうにも、使い方が分からない。
あたふたしていると、スピーカーから声が聞こえてきた。
「目を瞑り、脳を意識するんだ。きっと脳みそが能力を教えてくれるはずだ」
脳、だと…?
俺は言われるがままに、目を瞑った。
(⋯教えろ。俺の能力を。)
能力はなんだと何度も頭の中で唱える。
それは、耳馴染む声で囁かれた。
『⋯――――。』
誰の声だかは分からない。だが、とても聞き慣れている。
脳が教えてくれた、俺の能力。
それは、言葉には出来ないがどう使えば良いかは理解できる。
「ふむ、分かったようだな。ならば置いてある道具を使ってもよい。発動したみまえ」
俺は置いてあったペンを持ち、的に構えた。
やはり俺の体中からも電気を発した。
今までの人とは比べ物にならないほどに。
部屋の中にはとてつもない電気が放出されていた。
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