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サプライズプレゼントだと思ったの

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その夜、私は早くマックスに宝石のことを訊きたくてソワソワしながら待ってたのに、そんな日に限ってマックスはいつまで経っても帰って来なかった。

仕方なく先に夕食を済ませて湯浴みも済ませて、それでも寝ずに待ってたの。

結局マックスが帰って来たのは深夜って言うか、もう朝って言ってもおかしくない午前4時。

こんな時間まで何してたの?

って、詰め寄ろうとしたけど、あまりに疲れてる様子のマックスに何も言えずにいたら、とんでもないこと言われて宝石のことなんかすっかり頭から抜けちゃった。

「またすぐ出なくてはならない。おそらく帰りは1ヶ月以上先になる」

「ええっ!?何で!?」

「今、城に隣国の第五王子殿下がいらしているだろう?」

「え?そうなの?知らないよ」

「······まあ良い。とにかくその王子殿下が昼間、視察先で暴漢に襲われたんだ。勿論未然に防げたが、酷くショックを受けておられて急遽御帰国なさることになったんだ」

「へーぇ。そうなんだ」

「ああ。それでその護衛に俺も選ばれた。出立の準備をする為に帰ってきただけだから、すぐに城に戻らないと。ロッテ。急ぎ食事と風呂の準備を。クリス。急ぎ荷の準備を」

てきぱきと使用人達に指示を出すマックス。

「カミュ。俺が留守の間のことで話しておきたいことがある。着いてこい」

私はただ呆然とその様子を見てるだけで、気付けばマックスは私との別れもそこそこにお城にとんぼ返りしちゃった。

あまりに突然のことだったから何も考えられなくて、ただただぼんやりしてたらそんな私にティアが声をかけてきたの。

「とりあえず寝たら?ああ、その前に朝食も食べとく?もうすっかり日ものぼってるわ」

「······うん、軽く食べて寝るよ。ティアも一緒に食べよ?」

そうして私は簡単な朝食を済ませて、少しだけ眠ることにしたの。





少しだけ、なんて言いながらしっかり8時間以上眠った私は、起きた瞬間に宝石のことを思い出した。

あーっ!
もうっ!!
何で訊かなかったのよー!!
私のバカバカバカバカ!!

ってね、自分を責めたところでマックスは暫く帰ってこないし、どうしようもないのよね。

そこで私はふと思ったの。

ティアを含めて使用人は基本的に私が呼ぶまで来ない。

今日は夫婦の寝室じゃなくて、自分の部屋······ティアに言わせれば婚約者さんの部屋らしいけど、で寝たのよね。

チラ、とクローゼットの方へ視線を向ける。

ううん、駄目よ。
ティアにも駄目って言われたし。
マックスにも訊けてないし。

でも、だけど······

バレなければ問題ないわよ、ね?

私は廊下に面したドアに耳をあて、人の気配がないことを確認してからクローゼットに向かう。

一番奥の壁をゆっくり横にスライドさせれば、昨日とまったく同じようにキラキラ輝く宝石たちが私を出迎えてくれた。

本当にキレイ······

そーっと棚の扉を開ければ、私と宝石の間に遮る物はない。

ゆっくり手を伸ばして、一番目立っていたネックレスを手に取った。

「······重······」

鶏の卵より断然重いそれは、マックスの瞳の色を意識してるのかしら。

チェーンの部分にも小粒のダイヤと大粒の琥珀が散りばめられてて、トップには大きなイエローダイヤモンド。
留め具にもご丁寧に小さな石が2つ、埋め込まれてる。

しかも、それが······

1つは琥珀。
うん、それはわかるの。
でも、もう1つが、私の瞳の色、デマントイドガーネット。

えっ!
これって······

なんとなくその留め具の裏を見れば、MtoMの文字。

これって、マックスからミリイへ······ってこと······だよね?

そう、だよね?

······そうなの。
この時の私の記憶に、婚約者さんの名前なんてあるはずがなかったの。
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