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ドレスを作ってもらうの

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「きゃー!ステキ!!こんなに綺麗なドレス初めて見たわ!!」

私は興奮したままドレスを物色していった。

本当にどれも素敵。

繊細な刺繍に美しいレース、生地も滑らかで肌触りは言わずもがな。

キャーキャーはしたなく叫んだり、ほぅ···と感嘆のため息を洩らしたり、とにかく最高。

勿論、マックスと付き合って、彼からお洋服のプレゼントもしてもらったけど、外出着として裕福な平民女性が着てそうな物ばかり。

こんな、貴族女性が夜会で着そうな本格的なドレスが目の前にあって、興奮するなと言うのが無理ってものよね。

「ねえ、マックス!私、これ、着てみたい!ね?良いでしょう?」

「いやそれは──」

「婚約者さんの物だっていうのはわかってるの!でも、これだけあるんだもの。一着くらい着てみても良いでしょう?ね?お願い!」

「いや、そういうことじゃないんだ。彼女とおまえでは身長も体型も違うから、着ても不恰好になるだけだ」

「だって······。婚約者さんは、これからもこういうドレスを着ていろんなパーティーに出るんでしょう?私は今までも、これからも、一生着られないんだもの。私だって一回くらい着てみたいの······」

マックスの胸にすがりついて目を潤ませて見上げる。

マックスは私のこのおねだりに弱いから、きっと叶えてくれるはず······なんだけど、あら?おかしいわね······。

ドレスに夢中でマックスの顔を見てなかったから気付かなかったけど、いつからこんな冷たい目になってたの?

蔑むような冷えた視線が私をとらえてる。

彼のこんな表情、初めて見た。

何で?

私、何かした?

「······マッ···クス?」

恐る恐るもう一回呼び掛けたら、ハッとしたマックスの瞳がやわらいだ。

「······そうだな。それなら、新しい物をプレゼントしよう。······クリス、入れ」

マックスが廊下に面したドアに声をかけると、私の苦手なおばさんが入ってくる。

「ドレスを作ってやりたいからこのドレスを頼んだ店······」

「ベルソワールでございますか?」

「ああ、そうだった。そこのデザイナーを呼んでくれ。後、使用人をすぐにホールに集めておいてくれ」

「かしこまりました」

クリスと呼ばれたおばさんは頭を下げてすぐに出ていく。

私はそのやり取りを見ながら、ただただ興奮してしまった。

このドレスを作った人に1から作ってもらえるの?

私のためだけのドレスを?

数秒置いて全身がふるえてきた。

嬉しすぎて腰がくだけそうになる。

はあはあと呼吸も大きくなったところで、マックスが私の異変に気付いた。

「どうした?」

「······」

「······ミリイ?」

「······マックス······私······」

「ん?」

「嬉しい!!!最高よ!マックス!!!私、本当に幸せだわ!!ありがとうマックス!!!愛してる!!」

私は嬉しすぎてちょっぴり泣きながら、マックスに抱きついて、必死で背伸びしながらマックスにキスをした。

小柄な私にはどんなに背伸びしても彼の口には届かないけど、届く首もとにたくさん、たくさん、キスをした。
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