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絶対この人は私の運命の相手なの
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私の名前はミリイ。
城下町の小さな食堂を経営しているパパとママの一人娘。
貧乏暇なしって言うじゃない?
パパもママも朝の仕込みから夜遅くまで、毎日毎日働き詰めで、私もよく手伝わされてるの。
って言っても調理を手伝うわけじゃないのよ。
私がやるのは配膳だけ。
それには理由があって、うちは小さいお店だけどそれなりに味は美味しいって評判で、時々お忍びで貴族の人が来るの。
格好は平民っぽくしてるけど、すぐにわかっちゃうのよね。
いくらそれっぽくしたところで、履いてる靴も着ている服も、やっぱり平民のそれとは段違いで良い物なんだから。
それで、そういう人はチップをはずんでくれるから、私はそれを自分のお小遣いにするってわけ。
パパもママも、チップは私のものにして良いって言ってくれたしね。
そんなある日、私は自分の運命の人をみつけちゃったのよ。
彼の名前はマックス・セプター。
セプター侯爵家の次男で、とにかく格好いいの。
黒に近い濃紺の髪に、琥珀の瞳。
私より2つ年上の18歳で、近衛騎士なんだって。
騎士の種類とかよくわかんないけど、流石騎士様。
筋肉で引き締まった身体が、だぼっとした平民服を着ててもうっすらわかっちゃうのよねー。
自分で言うのもなんだけど、私も私でかなり可愛いの。
ふわふわなハニーピンクの髪に、デマントイドガーネットの瞳。
華奢で小柄だけど、胸は現在進行形で発達中。
同い年の女の子の中では群を抜いて大きい方かな。
彼も彼で私を一目見て運命を感じてくれたみたい。
目が合った瞬間に時が止まった······っていうのかな?
とにかく世界に2人きりになったみたいな、そんな感覚になったの。
私はこの人に出会うために生まれてきたんだなって、純粋にそう思えたわ。
でも、運命って残酷なのよね。
彼は貴族。
しかもかなり立派なお家柄の生まれらしくて、片や私はただの平民。
どんなに愛し合っても、貴族と平民って結婚できないんだって。
私はそんなことも知らなかったよ。
しかも、しかも、彼には婚約者がいるって。
こんなに愛し合ってるのに、私たち結婚出来ないの?
出会った瞬間に恋におちた私たちはすぐに恋人になって、デートもキスもいっぱいしたのに、それでも駄目なの?
どうにかマックスと添い遂げられないかって、いろんな人に話を聞いたけど、マックスが平民になるしか私と結ばれる道はないって、皆口を揃えて言うの。
しかもそうなった時は、私もマックスも、相手の婚約者さんに多額の慰謝料を払う必要があるって。
そんなの払えるわけないのに。
それにしても不思議なのよね。
マックスとは本当に頻繁にデートしてるけど、婚約者さんは何にも思わないのかな。
貴族は浮気に寛容だっていうのも友達から教えてもらったから、そういうことなのかな。
私なら耐えられないけどな。
そう思って、ある日マックスに聞いてみたの。
「ねえマックス。私とばかり会ってるけど、婚約者さんとは会わなくて良いの?」
「ああ。会わないと言うか、会えないからな」
「?それってどういうこと?」
マックスの話によると、婚約者さんは事情があって遠く離れた場所にいるらしくて、私と付き合う前から会えてないらしいの。
だから勿論、私の存在にも気付いてないんだって。
それを聞いて、私はもう歯止めが効かなくなっちゃったの。
だって、名ばかりの婚約者さんなんていないのも一緒じゃない?
実際いないんだし。
だからどうにかしてマックスと婚約者さんを別れさせて、私と結婚してくれる道はないかって、それはもう一生分くらい頭を使って考えたわ。
それでハッと気付いたの。
今までいろんな人に相談にのってもらったのも良かったわ。
こんな簡単なことに気付かなかったなんて、本当に私もバカよね。
私とマックスが結婚するにはマックスが平民にならないといけない。
その時は私もマックスも慰謝料を払わないといけない。
貴族は浮気に寛容
そして婚約者は遠い場所にいる
ってことは、このままで良いのよ。
へたに結婚しようと考えるから難しくなるだけで、恋人のまま······つまり、愛人ってことかな?
そのままでいれば良い。
婚約者さんとマックスを共有するのは嫌だけど、マックスが愛してるのは私だし、実際婚約者さんはいないも同然。
いつか結婚したとしても、そのまま遠い場所にいてくれれば問題なし。
私がマックスの子供も産むから、婚約者さんは婚約者さんで好きな人の子供産めば良いんじゃない?
マックスのこと、何とも思ってないから会わなくても平気なんだろうし。
そう考えたら、結婚までは純潔を守りたいって思ってたけど、そういうのももう良いかなって、勇気を出して一線も越えちゃった。
そこからはもうお互いに求め合う日々。
私はパパとママに手紙だけ残して生まれ育った家を後に、マックスの家に転がり込んだの。
家って言うよりはお屋敷。
マックスの生家は領地にあるらしくて、王都にも立派なタウンハウスがあるみたいなんだけど、マックスのご両親がいつか結婚する婚約者さんとマックスの為の家を建ててくれたんだって。
「小さい家だがくつろいでくれ」
って言われたけど、十分大きいよ。
しかもお手伝いさんまでいる。
「マックスって、本当に貴族なんだね。うちの家なんてこの玄関より小さいよ」
「はは。そうか?まあ、気に入ってくれたなら良かった。部屋は······どうするかな」
「お部屋はマックスと一緒で良いよ。マックスのいるところが私のいるところなんだから」
「いや、だが······。······それなら、俺の隣の部屋で良いか?」
「うん。それならいつでも会えるもんね」
ウキウキしながらそんな話をしていると、一番年上っぽいおばさんのお手伝いさんが急に話しかけてきた。
「マックス様。マックス様のお隣はミューゼ様のお部屋でございます。お客様には客間をご用意させていただきますのでそちらに」
「いや、良いんだ。どうせミューゼはここには来れないだろう?ミューゼと結婚して、実際彼女と一緒に住むようになるまではミリイに使ってもらう」
「ですが既にミューゼ様の家具も宝飾品もお召し物も運びいれております。ミューゼ様がお知りになったら」
「え、ちょっと待って。そこって婚約者さんの部屋なの?」
私はたまらず口をはさんだ。
「ああ。だが気にするな。自由に使って良い。後でミューゼが何か言ってきたら気に入る物を買い直せばいいんだ」
「マックス様!!」
おばさんが声を荒げると、マックスは冷たい視線を送る。
「どうせミューゼが来ることはない」
「え、待って待って。それは私も嫌だよ。マックスったら女心わかってないなぁ。どうせ買いかえる必要があるなら、私好みの新しいのを買ってほしいな」
「それもそうか。なら、ミリイは一先ず今日からしばらく俺の部屋に居てくれ。その間にミューゼの荷物を客間に移し、ミリイの好きな家具を新しく揃えよう」
「やったー。マックス嬉しい!!ありがとう!!大好き!!」
私は嬉しくて人目も気にせずマックスに抱きついちゃった。
おばさんや他のお手伝いさんがどんな表情をしているか、気付きもしなかった。
城下町の小さな食堂を経営しているパパとママの一人娘。
貧乏暇なしって言うじゃない?
パパもママも朝の仕込みから夜遅くまで、毎日毎日働き詰めで、私もよく手伝わされてるの。
って言っても調理を手伝うわけじゃないのよ。
私がやるのは配膳だけ。
それには理由があって、うちは小さいお店だけどそれなりに味は美味しいって評判で、時々お忍びで貴族の人が来るの。
格好は平民っぽくしてるけど、すぐにわかっちゃうのよね。
いくらそれっぽくしたところで、履いてる靴も着ている服も、やっぱり平民のそれとは段違いで良い物なんだから。
それで、そういう人はチップをはずんでくれるから、私はそれを自分のお小遣いにするってわけ。
パパもママも、チップは私のものにして良いって言ってくれたしね。
そんなある日、私は自分の運命の人をみつけちゃったのよ。
彼の名前はマックス・セプター。
セプター侯爵家の次男で、とにかく格好いいの。
黒に近い濃紺の髪に、琥珀の瞳。
私より2つ年上の18歳で、近衛騎士なんだって。
騎士の種類とかよくわかんないけど、流石騎士様。
筋肉で引き締まった身体が、だぼっとした平民服を着ててもうっすらわかっちゃうのよねー。
自分で言うのもなんだけど、私も私でかなり可愛いの。
ふわふわなハニーピンクの髪に、デマントイドガーネットの瞳。
華奢で小柄だけど、胸は現在進行形で発達中。
同い年の女の子の中では群を抜いて大きい方かな。
彼も彼で私を一目見て運命を感じてくれたみたい。
目が合った瞬間に時が止まった······っていうのかな?
とにかく世界に2人きりになったみたいな、そんな感覚になったの。
私はこの人に出会うために生まれてきたんだなって、純粋にそう思えたわ。
でも、運命って残酷なのよね。
彼は貴族。
しかもかなり立派なお家柄の生まれらしくて、片や私はただの平民。
どんなに愛し合っても、貴族と平民って結婚できないんだって。
私はそんなことも知らなかったよ。
しかも、しかも、彼には婚約者がいるって。
こんなに愛し合ってるのに、私たち結婚出来ないの?
出会った瞬間に恋におちた私たちはすぐに恋人になって、デートもキスもいっぱいしたのに、それでも駄目なの?
どうにかマックスと添い遂げられないかって、いろんな人に話を聞いたけど、マックスが平民になるしか私と結ばれる道はないって、皆口を揃えて言うの。
しかもそうなった時は、私もマックスも、相手の婚約者さんに多額の慰謝料を払う必要があるって。
そんなの払えるわけないのに。
それにしても不思議なのよね。
マックスとは本当に頻繁にデートしてるけど、婚約者さんは何にも思わないのかな。
貴族は浮気に寛容だっていうのも友達から教えてもらったから、そういうことなのかな。
私なら耐えられないけどな。
そう思って、ある日マックスに聞いてみたの。
「ねえマックス。私とばかり会ってるけど、婚約者さんとは会わなくて良いの?」
「ああ。会わないと言うか、会えないからな」
「?それってどういうこと?」
マックスの話によると、婚約者さんは事情があって遠く離れた場所にいるらしくて、私と付き合う前から会えてないらしいの。
だから勿論、私の存在にも気付いてないんだって。
それを聞いて、私はもう歯止めが効かなくなっちゃったの。
だって、名ばかりの婚約者さんなんていないのも一緒じゃない?
実際いないんだし。
だからどうにかしてマックスと婚約者さんを別れさせて、私と結婚してくれる道はないかって、それはもう一生分くらい頭を使って考えたわ。
それでハッと気付いたの。
今までいろんな人に相談にのってもらったのも良かったわ。
こんな簡単なことに気付かなかったなんて、本当に私もバカよね。
私とマックスが結婚するにはマックスが平民にならないといけない。
その時は私もマックスも慰謝料を払わないといけない。
貴族は浮気に寛容
そして婚約者は遠い場所にいる
ってことは、このままで良いのよ。
へたに結婚しようと考えるから難しくなるだけで、恋人のまま······つまり、愛人ってことかな?
そのままでいれば良い。
婚約者さんとマックスを共有するのは嫌だけど、マックスが愛してるのは私だし、実際婚約者さんはいないも同然。
いつか結婚したとしても、そのまま遠い場所にいてくれれば問題なし。
私がマックスの子供も産むから、婚約者さんは婚約者さんで好きな人の子供産めば良いんじゃない?
マックスのこと、何とも思ってないから会わなくても平気なんだろうし。
そう考えたら、結婚までは純潔を守りたいって思ってたけど、そういうのももう良いかなって、勇気を出して一線も越えちゃった。
そこからはもうお互いに求め合う日々。
私はパパとママに手紙だけ残して生まれ育った家を後に、マックスの家に転がり込んだの。
家って言うよりはお屋敷。
マックスの生家は領地にあるらしくて、王都にも立派なタウンハウスがあるみたいなんだけど、マックスのご両親がいつか結婚する婚約者さんとマックスの為の家を建ててくれたんだって。
「小さい家だがくつろいでくれ」
って言われたけど、十分大きいよ。
しかもお手伝いさんまでいる。
「マックスって、本当に貴族なんだね。うちの家なんてこの玄関より小さいよ」
「はは。そうか?まあ、気に入ってくれたなら良かった。部屋は······どうするかな」
「お部屋はマックスと一緒で良いよ。マックスのいるところが私のいるところなんだから」
「いや、だが······。······それなら、俺の隣の部屋で良いか?」
「うん。それならいつでも会えるもんね」
ウキウキしながらそんな話をしていると、一番年上っぽいおばさんのお手伝いさんが急に話しかけてきた。
「マックス様。マックス様のお隣はミューゼ様のお部屋でございます。お客様には客間をご用意させていただきますのでそちらに」
「いや、良いんだ。どうせミューゼはここには来れないだろう?ミューゼと結婚して、実際彼女と一緒に住むようになるまではミリイに使ってもらう」
「ですが既にミューゼ様の家具も宝飾品もお召し物も運びいれております。ミューゼ様がお知りになったら」
「え、ちょっと待って。そこって婚約者さんの部屋なの?」
私はたまらず口をはさんだ。
「ああ。だが気にするな。自由に使って良い。後でミューゼが何か言ってきたら気に入る物を買い直せばいいんだ」
「マックス様!!」
おばさんが声を荒げると、マックスは冷たい視線を送る。
「どうせミューゼが来ることはない」
「え、待って待って。それは私も嫌だよ。マックスったら女心わかってないなぁ。どうせ買いかえる必要があるなら、私好みの新しいのを買ってほしいな」
「それもそうか。なら、ミリイは一先ず今日からしばらく俺の部屋に居てくれ。その間にミューゼの荷物を客間に移し、ミリイの好きな家具を新しく揃えよう」
「やったー。マックス嬉しい!!ありがとう!!大好き!!」
私は嬉しくて人目も気にせずマックスに抱きついちゃった。
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