彼が幸せになるまで

花田トギ

文字の大きさ
上 下
27 / 43
二人の距離

ディナーの終わり

しおりを挟む
 楽しいディナーの時間も終わりに近づく。デザートに出てきたプリンアラモードを食べた蒼汰もご満悦だ。楽しそうに、月の出る夜道をスキップでもしそうに歩く蒼汰を、侑吾と近藤は後ろから見守った。
――まるで、本当の家族みたいだ。
「家族ってこんな感じかな?」
 侑吾の頭に浮かんだのと、同じ言葉が近藤から発せられて、思わず足を止めた。
「え?」
「あ、あぁすみません急に変な事言っちゃって。……ううん、変な事じゃないですよね、俺、あの、俺――!」
 手を掴まれた。大きな近藤の手に、侑吾の細い指が包まれる。
「俺、色々考えたんです。頼りないかもしれないけど、俺、もっと寺内さんを知りたいんです」
「あ、あの、手、手が……」
 ここは一応往来だ。侑吾たち以外にも人は歩いている。人の視線が気になって、戸惑う侑吾を勇気づけるように、握りしめる手に力が込められた。
「俺、寺内さんが好きです」
「――!あの、それは、その……」
 明るく、元気な瞳が今は不安そうに侑吾を見つめている。不安の奥に、確かな熱を感じて、手を介して侑吾の体に流れ込んでくる。
「嬉しいんです。嬉しいんですけど……俺……」
 近藤の言葉が嬉しくて、顔がにやけそうになるのがバレたくなくて、俯いた。
 嬉しいけれど、断らなければならない。
 侑吾はそう思っていた。
 自分のような人間は彼には相応しくない。近藤は良い父親になりそうに見えたのだから。きっと自分の子供を大切に出来る男だ。
 それを伝えたいのに、酔っぱらった頭ではどう伝えれば良いのか頭が上手く回らない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

病み男子

迷空哀路
BL
〈病み男子〉 無気力系主人公『光太郎』と、4つのタイプの病み男子達の日常 病み男子No.1 社会を恨み、自分も恨む。唯一心の支えは主人公だが、簡単に素直にもなれない。誰よりも寂しがり。 病み男子No.2 可愛いものとキラキラしたものしか目に入らない。溺れたら一直線で、死ぬまで溺れ続ける。邪魔するものは許せない。 病み男子No.3 細かい部分まで全て知っていたい。把握することが何よりの幸せ。失敗すると立ち直るまでの時間が長い。周りには気づかれないようにしてきたが、実は不器用な一面もある。 病み男子No.4 神の導きによって主人公へ辿り着いた。神と同等以上の存在である主を世界で一番尊いものとしている。 蔑まれて当然の存在だと自覚しているので、酷い言葉をかけられると安心する。主人公はサディストではないので頭を悩ませることもあるが、そのことには全く気づいていない。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

処理中です...