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二人の距離
ディナーの終わり
しおりを挟む 楽しいディナーの時間も終わりに近づく。デザートに出てきたプリンアラモードを食べた蒼汰もご満悦だ。楽しそうに、月の出る夜道をスキップでもしそうに歩く蒼汰を、侑吾と近藤は後ろから見守った。
――まるで、本当の家族みたいだ。
「家族ってこんな感じかな?」
侑吾の頭に浮かんだのと、同じ言葉が近藤から発せられて、思わず足を止めた。
「え?」
「あ、あぁすみません急に変な事言っちゃって。……ううん、変な事じゃないですよね、俺、あの、俺――!」
手を掴まれた。大きな近藤の手に、侑吾の細い指が包まれる。
「俺、色々考えたんです。頼りないかもしれないけど、俺、もっと寺内さんを知りたいんです」
「あ、あの、手、手が……」
ここは一応往来だ。侑吾たち以外にも人は歩いている。人の視線が気になって、戸惑う侑吾を勇気づけるように、握りしめる手に力が込められた。
「俺、寺内さんが好きです」
「――!あの、それは、その……」
明るく、元気な瞳が今は不安そうに侑吾を見つめている。不安の奥に、確かな熱を感じて、手を介して侑吾の体に流れ込んでくる。
「嬉しいんです。嬉しいんですけど……俺……」
近藤の言葉が嬉しくて、顔がにやけそうになるのがバレたくなくて、俯いた。
嬉しいけれど、断らなければならない。
侑吾はそう思っていた。
自分のような人間は彼には相応しくない。近藤は良い父親になりそうに見えたのだから。きっと自分の子供を大切に出来る男だ。
それを伝えたいのに、酔っぱらった頭ではどう伝えれば良いのか頭が上手く回らない。
――まるで、本当の家族みたいだ。
「家族ってこんな感じかな?」
侑吾の頭に浮かんだのと、同じ言葉が近藤から発せられて、思わず足を止めた。
「え?」
「あ、あぁすみません急に変な事言っちゃって。……ううん、変な事じゃないですよね、俺、あの、俺――!」
手を掴まれた。大きな近藤の手に、侑吾の細い指が包まれる。
「俺、色々考えたんです。頼りないかもしれないけど、俺、もっと寺内さんを知りたいんです」
「あ、あの、手、手が……」
ここは一応往来だ。侑吾たち以外にも人は歩いている。人の視線が気になって、戸惑う侑吾を勇気づけるように、握りしめる手に力が込められた。
「俺、寺内さんが好きです」
「――!あの、それは、その……」
明るく、元気な瞳が今は不安そうに侑吾を見つめている。不安の奥に、確かな熱を感じて、手を介して侑吾の体に流れ込んでくる。
「嬉しいんです。嬉しいんですけど……俺……」
近藤の言葉が嬉しくて、顔がにやけそうになるのがバレたくなくて、俯いた。
嬉しいけれど、断らなければならない。
侑吾はそう思っていた。
自分のような人間は彼には相応しくない。近藤は良い父親になりそうに見えたのだから。きっと自分の子供を大切に出来る男だ。
それを伝えたいのに、酔っぱらった頭ではどう伝えれば良いのか頭が上手く回らない。
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