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極彩色
母ウユチュ
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「私の事なんて切り捨ててくれて構わないのに」
ウユチュが頬を膨らませ、拗ねるような顔をしているのが、背中から伝わってくる。
「何を言うんですか!」
「さっき、タシュには目印の木の場所も教えたし、もう私が居なくても逃げられるはずよ?」
「皆で逃げる為の策だと、先程納得してくれたんじゃないんですか?」
「あの時はタシュとトゥフタが必死だったから……したけれど……そもそも私が悪いのだから……」
「もう、黙ってください!背負いながら走ってるので、息が続きません!」
肩を激しく上下させるスドゥルに、申し訳なさそうにウユチュはしがみ付く。
機動力に欠けるスドゥルとウユチュを先に逃がし、後から三人が合流する。大まかに言うとそういう計画だったが、急に決めた計画故、ウユチュは不満そうだった。
「ごめんなさいね、スドゥル。こんな事までさせてしまって」
「まだそんな事を言うんですか?」
「だって……私の願いばかりよ」
後ろ向きな発言に、スドゥルは歩くスピードを緩め、一つ大きく息を吸った。
「ウユチュ様が語ってくださった、父の国の話、外の話……それに憧れを持たなかったというのは嘘になります。ウユチュ様の願いは、私の願いでもあるのです」
「でも……私はスドゥルにしてもらってばかりだから……」
「……では、一つ願いを口にしてもよろしいでしょうか?」
「なあに?私に出来ることならなんでも!」
申し訳なさそうにしか話さなかったウユチュの声のトーンが上がっている。
「ウユチュ様、外に出られたら……この国の外に出たら、あなたと母と……また呼びたいのです」
肩越しに見えるスドゥルの頬が赤らんでいるように見えた。小さいころ、ウユチュに抱っこをねだったのと変わらない頬だ。
「ええ、もちろん。もちろんよ、昔のようにそう呼んで頂戴。私の可愛いスドゥル」
「……もうしばらくです、ウユチュ様」
「ええ、そうね、もうすぐだわ……あの大きな木が目印よ!私、早く外に出たいわ。あなたと外に出たい」
「もちろんです!しっかり、掴まっていて下さい」
ウユチュはスドゥルの首に回した腕に、一層力を込めた。その様子は愛おしそうに我が子を抱きしめる母の姿、そのものだった。
スドゥルは背中に感じる重さが愛おしかった。同時に、その軽さに胸が苦しくなる。もっと早く国を出る決心をしていたなら、ウユチュは元気なまま父の故郷を訪れる事が出来たかもしれないのに。
徐々に近づくのは母の寿命だ。日に日に弱っていく姿を見るのは辛かった。このまま朽ちていくのを見るだけかと思っていた。そんな時に出会ったのがタシュだ。
彼はスドゥルにキッカケを示してくれた。彼に出会わなければ、外に出る覚悟は出来なかったろう。
無事に三人が合流する事を願いながら、スドゥルは足を早めた。
ウユチュが頬を膨らませ、拗ねるような顔をしているのが、背中から伝わってくる。
「何を言うんですか!」
「さっき、タシュには目印の木の場所も教えたし、もう私が居なくても逃げられるはずよ?」
「皆で逃げる為の策だと、先程納得してくれたんじゃないんですか?」
「あの時はタシュとトゥフタが必死だったから……したけれど……そもそも私が悪いのだから……」
「もう、黙ってください!背負いながら走ってるので、息が続きません!」
肩を激しく上下させるスドゥルに、申し訳なさそうにウユチュはしがみ付く。
機動力に欠けるスドゥルとウユチュを先に逃がし、後から三人が合流する。大まかに言うとそういう計画だったが、急に決めた計画故、ウユチュは不満そうだった。
「ごめんなさいね、スドゥル。こんな事までさせてしまって」
「まだそんな事を言うんですか?」
「だって……私の願いばかりよ」
後ろ向きな発言に、スドゥルは歩くスピードを緩め、一つ大きく息を吸った。
「ウユチュ様が語ってくださった、父の国の話、外の話……それに憧れを持たなかったというのは嘘になります。ウユチュ様の願いは、私の願いでもあるのです」
「でも……私はスドゥルにしてもらってばかりだから……」
「……では、一つ願いを口にしてもよろしいでしょうか?」
「なあに?私に出来ることならなんでも!」
申し訳なさそうにしか話さなかったウユチュの声のトーンが上がっている。
「ウユチュ様、外に出られたら……この国の外に出たら、あなたと母と……また呼びたいのです」
肩越しに見えるスドゥルの頬が赤らんでいるように見えた。小さいころ、ウユチュに抱っこをねだったのと変わらない頬だ。
「ええ、もちろん。もちろんよ、昔のようにそう呼んで頂戴。私の可愛いスドゥル」
「……もうしばらくです、ウユチュ様」
「ええ、そうね、もうすぐだわ……あの大きな木が目印よ!私、早く外に出たいわ。あなたと外に出たい」
「もちろんです!しっかり、掴まっていて下さい」
ウユチュはスドゥルの首に回した腕に、一層力を込めた。その様子は愛おしそうに我が子を抱きしめる母の姿、そのものだった。
スドゥルは背中に感じる重さが愛おしかった。同時に、その軽さに胸が苦しくなる。もっと早く国を出る決心をしていたなら、ウユチュは元気なまま父の故郷を訪れる事が出来たかもしれないのに。
徐々に近づくのは母の寿命だ。日に日に弱っていく姿を見るのは辛かった。このまま朽ちていくのを見るだけかと思っていた。そんな時に出会ったのがタシュだ。
彼はスドゥルにキッカケを示してくれた。彼に出会わなければ、外に出る覚悟は出来なかったろう。
無事に三人が合流する事を願いながら、スドゥルは足を早めた。
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