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花咲き誇る宮

可愛い思い出

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「起きたのか?」
 懐かしくも切ない夢を終え、薄く目を開けたタシュが見たのは、金糸の髪の美しい人だった。
「やっぱり綺麗だな」
「……寝ぼけているのか?ほら、お前も湯に入って来い」
「あ、なんだトゥフタか。……本当に美人だよな」
「……どうした?私を待つ間に過去に抱いた女の夢でも見ていたか?」
「違うよ。子供の頃の可愛い思い出さ」
 布で拭いたものの、起き上がると股間がぺりぺりと薄皮が剥がれるような感覚があった。きちんと清潔にする前にうたた寝してしまったのだからしょうがない。
「お前はたくさんの女を抱いてきたのか?」
「あー……どうだろ。まあ普通よりは多いんじゃないかな。俺わりとモテるし」
「ほう……この国で無くともお前はモテるのか」
 体を起したタシュの横に、トゥフタは腰を下ろした。王様はもう少し、話をすることを御所望のようだ。
「まあトゥフタに言うのは恥ずかしいけど、わりとお金のある家に生まれたしね」
「では婚姻もお前の気持ちで決められないのではないか?」
「そうだね。元々身軽な次男坊なんだけど、最初は事業拡大の為に政略結婚させたかったみたいなんだよね。でも何度見合いしても……彼女以上に美しい人と出会えなかったんだよね」
「政略結婚か……辛いな」
 心なしかトゥフタの声のトーンが落ちる。
「まあそれで、所帯を持たない俺に痺れを切らした両親が、外聞の為にも結婚だけはしてくれって頼んできてさ。それで俺はアクバイ生まれの人となら結婚しても良いって言ったんだよ」
「アクバイ生まれの……?」
「兄貴はそんな御伽噺って笑ったんだけど、結局は何年か旅してれば現実を知って諦めるだろうって送り出してくれたわけ。まあ俺も意地があるから、アクバイから美人連れ帰ったら一生働かなくても兄貴が世話してくれるって言質も取ったんだけどな」
「ようは、この国へは嫁探しに来たのか?」 
 トゥフタの声に珍しく揺らぎが見える。
「そうだ」
 自信満々な答えに、トゥフタは額に手を当てて俯いた。
「どうした?トゥフタ。気分でも悪いのか?」
「そんな事で、あるかもわからぬこの国へ?」
「そんな事って……生涯の伴侶だぞ?一生を左右するじゃないか!」
 心なしかトゥフタの肩が揺れている様子に、タシュは徐々に声が大きくなってしまう。
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