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静かな家
本棚
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眩しさを感じてタシュは目を開けた。瞼の上に朝日が当たっていたらしい。ゆっくりと体を起す。
籐で編まれたベッドの上に寝かされていたようだ。久しぶりの整った環境での睡眠は、スッキリとした目覚めをプレゼントしてくれた。
ん-っと伸びをして周りを見回すと、扉を塞ぐように置かれた椅子にスドゥルが座ったまま眠っていた。心配でついていたのだろうが、扉を塞ぐその姿を見るに、体調を心配というよりも、ウユチュへ害をなさないか心配したのだろうと推測出来た。
昨日ウユチュと話した部屋よりかなり小さなこの部屋の壁には、一面に本が並べられている。目にしたことの無い蔵書の数々に、一冊手に取ってみようかとベッドから足を降ろした。
「目覚めたのか」
目をやると、スドゥルが寝起きとは思えない程しっかりと目を開きこちらを見ていた。
「すまない、起したか」
「体はどうだ」
「え?何?昨日はあんな態度だったのに、倒れたからって心配してくれんの?」
わざと乙女のような言い回しをして見るが、スドゥルの目は冷たいままだった。地元ではウケるのに。
「ウユチュ様が心配なさっていたから聞いたまでだ。その様子だと心配は無いようだな」
ため息を吐きながらの呆れた言葉だったが、同時に少し温かいものも感じた。ウユチュの言う通り彼も優しい人間なのだろう。あくまでウユチュの敵だとみなされない限りな気がするけれど。
「何を笑っている?」
「い、いや……えーっと」
スドゥルの優しさが垣間見え、思わず顔がにやけてしまったのを指摘され、話題を逸らそうとして本棚を指さした。
「意外と甘党なのかなって思ってさ。ほら【養蜂と蜂蜜 】【蜂蜜の秘密】【蜂と蜂蜜について】ってめっちゃ蜂蜜好きだろ?」
ウユチュはほぼ寝たきりだと言っていた。とするとこの荷物で溢れた部屋はスドゥルのものだろう。つまり、ここに並べられた本も彼のものである可能性が高いという訳だ。
「……お前はどうだ?蜂蜜好きか?」
「それはお前、愚問ってやつだぜ?蜂蜜嫌いなやついるか?」
タシュが呆れながらそう言ったのは、タシュの国にとって蜂蜜はとても高価なものだったからだ。行商が蜂蜜を売りに来るととても高価なのにいつもすぐに完売していたのをよく覚えているし、父親がなんとか養蜂を成功させようと勉強に励んでいた姿も見ていた。タシュが覚えている限り、成功した様子は無かったけれど。
「そこに座って待っていろ」
「え?ちょっ――」
返事をまたず、部屋を出ていったスドゥルの分、部屋がよく見渡せる。
座って待っていろと言われて、素直に待つ奴がいるだろうか?いや、そんな勿体ない。
部屋を再度見渡すと、作業机としているのだろう木製のテーブルの上に、小刀と無数の木くずが散らばっていた。その横には、木で掘られた動物や虫の模型が置かれている。
一つ手に取って見ると、なかなかの出来だ。これは子供にも受けがよさそうだし、勉強にもなりそうだから、金持ちの親が購入しそうな代物だ。物品を見るとつい売値を気にしてしまうのは、父親に教育されたからだ。
不愛想な男が黙々と木工細工に興じる姿を想像すると少し可笑しかった。それも、こんなに可愛いらしい生き物も掘っているだなんて。
籐で編まれたベッドの上に寝かされていたようだ。久しぶりの整った環境での睡眠は、スッキリとした目覚めをプレゼントしてくれた。
ん-っと伸びをして周りを見回すと、扉を塞ぐように置かれた椅子にスドゥルが座ったまま眠っていた。心配でついていたのだろうが、扉を塞ぐその姿を見るに、体調を心配というよりも、ウユチュへ害をなさないか心配したのだろうと推測出来た。
昨日ウユチュと話した部屋よりかなり小さなこの部屋の壁には、一面に本が並べられている。目にしたことの無い蔵書の数々に、一冊手に取ってみようかとベッドから足を降ろした。
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「すまない、起したか」
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わざと乙女のような言い回しをして見るが、スドゥルの目は冷たいままだった。地元ではウケるのに。
「ウユチュ様が心配なさっていたから聞いたまでだ。その様子だと心配は無いようだな」
ため息を吐きながらの呆れた言葉だったが、同時に少し温かいものも感じた。ウユチュの言う通り彼も優しい人間なのだろう。あくまでウユチュの敵だとみなされない限りな気がするけれど。
「何を笑っている?」
「い、いや……えーっと」
スドゥルの優しさが垣間見え、思わず顔がにやけてしまったのを指摘され、話題を逸らそうとして本棚を指さした。
「意外と甘党なのかなって思ってさ。ほら【養蜂と蜂蜜 】【蜂蜜の秘密】【蜂と蜂蜜について】ってめっちゃ蜂蜜好きだろ?」
ウユチュはほぼ寝たきりだと言っていた。とするとこの荷物で溢れた部屋はスドゥルのものだろう。つまり、ここに並べられた本も彼のものである可能性が高いという訳だ。
「……お前はどうだ?蜂蜜好きか?」
「それはお前、愚問ってやつだぜ?蜂蜜嫌いなやついるか?」
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「そこに座って待っていろ」
「え?ちょっ――」
返事をまたず、部屋を出ていったスドゥルの分、部屋がよく見渡せる。
座って待っていろと言われて、素直に待つ奴がいるだろうか?いや、そんな勿体ない。
部屋を再度見渡すと、作業机としているのだろう木製のテーブルの上に、小刀と無数の木くずが散らばっていた。その横には、木で掘られた動物や虫の模型が置かれている。
一つ手に取って見ると、なかなかの出来だ。これは子供にも受けがよさそうだし、勉強にもなりそうだから、金持ちの親が購入しそうな代物だ。物品を見るとつい売値を気にしてしまうのは、父親に教育されたからだ。
不愛想な男が黙々と木工細工に興じる姿を想像すると少し可笑しかった。それも、こんなに可愛いらしい生き物も掘っているだなんて。
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