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星になりたい男
星野さんはアヤさんに会いたい。
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事件の後から、アヤと慧斗の距離はぐっと縮まった。今では普段の何気ない事――今夜は星が綺麗だとか、この前食べた料理が美味しかっただとか――を報告しあう程の仲になっていた。ここは畳みかけて、もっと親密になろう。あわよくば客という立場からの脱却を狙ってた慧斗だったが、タイミングの悪いことに仕事が忙しすぎた。
初めての会社経営、自社の広告塔、広告を兼ねた車いすバスケへの参入は全て刺激的で楽しかったが、いかんせんアヤと会う時間が中々取れないでいた。
どんなに忙しくても、アヤとの時間を作ろうとしていたが、車いすバスケ界が大きく動く出来事が起こったらしく、慧斗もその対応に追われていた。
アヤと最後に会ったのは二週間も前の事だ。
やっと休暇が取れると、慧斗はため息交じりにパソコンを閉じた。発信履歴から番号を探し、アヤの携帯に電話を掛ける。たわいないお喋りすら出来ずに過ごした二週間は、禁欲に近い生活だった。アヤとまた会えるかと思うと、それだけで血液が下腹部に集まっていきそうだ。
しかし、残念ながらアヤは電話に出る事なく、留守番電話に繋がってしまった。
電話に出られないという事は、他の男の接客をしている可能性が高いと言う事。苛立ちを小さい舌打ちで吐き出すと、冷静を装って呼びたい日程を留守電に入れた。
電話を切ると、キッチンへ移動し、アヤが気に入っているコーヒーメーカーのスイッチを押した。起動音の後、カップの中に黒い液体が滴っていくのを見て、どうしてか胸騒ぎがしてくる。
黒い液体を出し切ると、その上にフォームミルクが乗っかってくる。ふわふわとしたミルクを見ると、先程の不安感が少し緩和されるような気がした。
焦ったところでアヤには会えない。留守電に残してあるのだから、用事が終わればつものように折り返してくれるだろう。そうして、電話口でも微笑んでいるのが分かる口調でこう言ってくれる筈だ。
『お電話ありがとうございます。じゃあいつもの言いますから聞いてくださいね。当店は身体に障害のある方専用のデリヘルとなっております。差し支えなけらばスムーズなプレイの為にお客様の障害をお知らせ頂ければと思います。また、可能な限り希望に沿ったプレイを致しますので、そちらも一緒にお知らせ願います。……どうです?今日もスムーズに言えたでしょ?』
ってね。
初めての会社経営、自社の広告塔、広告を兼ねた車いすバスケへの参入は全て刺激的で楽しかったが、いかんせんアヤと会う時間が中々取れないでいた。
どんなに忙しくても、アヤとの時間を作ろうとしていたが、車いすバスケ界が大きく動く出来事が起こったらしく、慧斗もその対応に追われていた。
アヤと最後に会ったのは二週間も前の事だ。
やっと休暇が取れると、慧斗はため息交じりにパソコンを閉じた。発信履歴から番号を探し、アヤの携帯に電話を掛ける。たわいないお喋りすら出来ずに過ごした二週間は、禁欲に近い生活だった。アヤとまた会えるかと思うと、それだけで血液が下腹部に集まっていきそうだ。
しかし、残念ながらアヤは電話に出る事なく、留守番電話に繋がってしまった。
電話に出られないという事は、他の男の接客をしている可能性が高いと言う事。苛立ちを小さい舌打ちで吐き出すと、冷静を装って呼びたい日程を留守電に入れた。
電話を切ると、キッチンへ移動し、アヤが気に入っているコーヒーメーカーのスイッチを押した。起動音の後、カップの中に黒い液体が滴っていくのを見て、どうしてか胸騒ぎがしてくる。
黒い液体を出し切ると、その上にフォームミルクが乗っかってくる。ふわふわとしたミルクを見ると、先程の不安感が少し緩和されるような気がした。
焦ったところでアヤには会えない。留守電に残してあるのだから、用事が終わればつものように折り返してくれるだろう。そうして、電話口でも微笑んでいるのが分かる口調でこう言ってくれる筈だ。
『お電話ありがとうございます。じゃあいつもの言いますから聞いてくださいね。当店は身体に障害のある方専用のデリヘルとなっております。差し支えなけらばスムーズなプレイの為にお客様の障害をお知らせ頂ければと思います。また、可能な限り希望に沿ったプレイを致しますので、そちらも一緒にお知らせ願います。……どうです?今日もスムーズに言えたでしょ?』
ってね。
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