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鬼頭先生まで……?!
左手薬指の指輪
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「え?俺の話読んでくれたんですか?!」
「読んだよー。いい作品だった。作品の感想ももっと伝えていい?」
「もちろんです!俺も紀藤さんに直接感想を言えるだなんて幸せ過ぎます!」
紀藤さんとのトークはかなり盛り上がった。信頼する上司でもある紀藤さんが、憧れの小説家だったのだから仕方がない。その憧れの人が自作品を読んでくれて、さらに口頭で感想までくれるなんて……!
テンションの上がった俺は、いつの間にかホテルの部屋の前に立っている事に、ドアの鍵が開く音を聞いて気が付いた。
「え……っ?」
「どうしたの?とりあえず入って」
「は、はあ……?」
これで良いのだろうか。エスコートされるがまま、広めの部屋に入ると目に飛び込んできたのはダブルベッドだ。
「……あれ?ダブル……」
「エロい事するんだからダブルで合ってるよね」
「え?…えっ?あ、お、俺……!」
感想を伝えたり伝えられたりの夢心地空間のおかげで、すっかり大事なことを言い忘れていた。どうしよう!
「何か言いたい事あるのかな?なんでも言って良いんだよ――ごめんね、急だったからこんな部屋で。せっかくなら豪奢な部屋にしたかったんだけど……」
「い、いや、あの……っ、俺そういうのは――」
「大丈夫、いきなり始めたりしないし……あ、間宮くんに場所送っとかなきゃ」
スマートフォンを手早く操作するとフロントにも連絡を入れた。スムーズな行いに、慣れを感じる。
「ちょっとお腹も空いたよね」
ウインクと共に軽食のルームサービスまで頼んでくれた。――これはモテる。
見ていると刺激されるのは創作意欲だ。イケオジをメインに書いた事はないが、それは身近にイケオジがいなかったからだ。
今なら目の前にいるし、何より職場での振る舞いもよく知っている。よし、次作はイケオジを主役にしちゃおう!
「紀藤さんって、あの新作俺をモデルにしてくれたんですよね?」
「うん、そうだけど?」
「じゃあ、俺も紀藤さんをモデルに小説書いても良いですか?」
「ええ?!」
紀藤さんが目を大きく見開いた。どうやら驚かせたようだ。上司が驚く姿は貴重である。
「い、良いの?私なんかがモデルで……」
「いやいや、仕事が出来て、しかも兼業で書く小説も一級品、ご本人もイケメンでって……創作じゃないとなかなかいないレベルだと思いますよ」
「嬉しいなぁ……」
柔らかな雰囲気になった紀藤さんが少しもじもじしている。喜んでもらえるなら、なおの事書く意欲が沸いてくる。
「じゃあ、少しインタビューしても良いですか?」
「ふふ、それすごく楽しそう。二人が来るまで時間あるし、良いよ」
紀藤さんにソファへの着席を促されて、腰を置く。その横に足を組んだ紀藤さんが座って来た。鼻筋が通った横顔が良く見える。
「やったぁ!じゃあ、えっと……お休みは何してるんですか?」
「そうだね、色々だけど……。あ、この前有給取ったのは原稿に追われたからだよ」
「ええ?!そうなんですか?」
「うん。いやぁ、筆が乗っちゃってね」
恥ずかしそうに肩を寄せる。紀藤さんの肩は、細いのに男性的だ。横に座ったことで、ふんわりと香水が香って来た。
「あとは子供と遊んだりかな」
ちらりと視線が指輪へと向かう。そうだ、彼はパートナーがいて、子供までいるんだった。誰かのパパの目の前で、不埒な事なんてしても良いのだろうか。
いや、浮気するわけじゃあないし……。
「読んだよー。いい作品だった。作品の感想ももっと伝えていい?」
「もちろんです!俺も紀藤さんに直接感想を言えるだなんて幸せ過ぎます!」
紀藤さんとのトークはかなり盛り上がった。信頼する上司でもある紀藤さんが、憧れの小説家だったのだから仕方がない。その憧れの人が自作品を読んでくれて、さらに口頭で感想までくれるなんて……!
テンションの上がった俺は、いつの間にかホテルの部屋の前に立っている事に、ドアの鍵が開く音を聞いて気が付いた。
「え……っ?」
「どうしたの?とりあえず入って」
「は、はあ……?」
これで良いのだろうか。エスコートされるがまま、広めの部屋に入ると目に飛び込んできたのはダブルベッドだ。
「……あれ?ダブル……」
「エロい事するんだからダブルで合ってるよね」
「え?…えっ?あ、お、俺……!」
感想を伝えたり伝えられたりの夢心地空間のおかげで、すっかり大事なことを言い忘れていた。どうしよう!
「何か言いたい事あるのかな?なんでも言って良いんだよ――ごめんね、急だったからこんな部屋で。せっかくなら豪奢な部屋にしたかったんだけど……」
「い、いや、あの……っ、俺そういうのは――」
「大丈夫、いきなり始めたりしないし……あ、間宮くんに場所送っとかなきゃ」
スマートフォンを手早く操作するとフロントにも連絡を入れた。スムーズな行いに、慣れを感じる。
「ちょっとお腹も空いたよね」
ウインクと共に軽食のルームサービスまで頼んでくれた。――これはモテる。
見ていると刺激されるのは創作意欲だ。イケオジをメインに書いた事はないが、それは身近にイケオジがいなかったからだ。
今なら目の前にいるし、何より職場での振る舞いもよく知っている。よし、次作はイケオジを主役にしちゃおう!
「紀藤さんって、あの新作俺をモデルにしてくれたんですよね?」
「うん、そうだけど?」
「じゃあ、俺も紀藤さんをモデルに小説書いても良いですか?」
「ええ?!」
紀藤さんが目を大きく見開いた。どうやら驚かせたようだ。上司が驚く姿は貴重である。
「い、良いの?私なんかがモデルで……」
「いやいや、仕事が出来て、しかも兼業で書く小説も一級品、ご本人もイケメンでって……創作じゃないとなかなかいないレベルだと思いますよ」
「嬉しいなぁ……」
柔らかな雰囲気になった紀藤さんが少しもじもじしている。喜んでもらえるなら、なおの事書く意欲が沸いてくる。
「じゃあ、少しインタビューしても良いですか?」
「ふふ、それすごく楽しそう。二人が来るまで時間あるし、良いよ」
紀藤さんにソファへの着席を促されて、腰を置く。その横に足を組んだ紀藤さんが座って来た。鼻筋が通った横顔が良く見える。
「やったぁ!じゃあ、えっと……お休みは何してるんですか?」
「そうだね、色々だけど……。あ、この前有給取ったのは原稿に追われたからだよ」
「ええ?!そうなんですか?」
「うん。いやぁ、筆が乗っちゃってね」
恥ずかしそうに肩を寄せる。紀藤さんの肩は、細いのに男性的だ。横に座ったことで、ふんわりと香水が香って来た。
「あとは子供と遊んだりかな」
ちらりと視線が指輪へと向かう。そうだ、彼はパートナーがいて、子供までいるんだった。誰かのパパの目の前で、不埒な事なんてしても良いのだろうか。
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