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鬼頭先生まで……?!

紀藤さんは左利き

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「――ああ、でも片づけないと駄目だよね。片づけ終わったら連絡してくれる?近くのホテル取っておくから。金額もその時書いて」
 そう言って紀藤さんは、スマートに紙を千切り、テーブルの中央に置いた。
「え……ええ!?」
 数秒後、俺は狼狽して立ち上がった。しかし、すでに紀藤さんの姿はたくさんの参加者に埋もれてしまっている。
 立ったまま、しばらく呆然としていると肩を叩かれた。
「……どうするの?」
 穂高くんが、顔を真っ赤にして立っていた。彼は色白だから赤くなるとすぐに分かる。
「どうするって、そんな上司の前でなんて……」
「だ、だよねー!紀藤さんも最初っから飛ばしすぎだよねー!」
 ばしばしと俺の腕を叩くと、ふーっと息を吐いて心を落ち着けているようだ。
「……でもちょっと勿体ないですよね?」
 玲央さんの発した言葉に俺たちは視線をやった。
「だって、鬼頭なめたろう先生が自分達をモデルに小説書いてくれるかもしれないんでしょう?……それに、間宮さんだって3pが忘れられないんでしょう?」
「な、なななな、なんで?!」
「だって、絵を書くために小説読みましたもん。アレ、あの時の三人から着想得たでしょう?NTRもBSSも入ってたし」
「ぐ、ぐぅぅぅ」
 さっきより顔を真っ赤にして、穂高くんは黙り込んでしまった。
「渚さんはどう思ってます?」
「え?!そ、それは……驚いているというか……何も考えられないというか……」
「ふぅん?……じゃあ、とりあえず片づける間に考えましょう。自分は渚さんに従うんで」
「従うってそんな……玲央さんはどう思ってるんですか?」
「だから、渚さんの事が好きって思ってますって」
「――?!ち、ちがっ、今そんな事聞いてないです!」
「それ以外無いですよ、自分には」
 少し拗ねたようにそう言って、玲央さんは俺の肩を抱いた。それを見た穂高くんが慌てて腕を絡ませてきた。
「お前は……!ちょっと気を抜くとすぐに渚くんを口説くんだから!」
「そりゃそうでしょう。好きなんだし」
「オレだって好きなの!オレのが先!」
「鬼頭さん曰く、鬼頭さんのが先に渚さんに目をつけてたらしいですけど?」
「ぜったいオレのが先!!!鬼頭さん子供いるんだし!」
 穂高くんの言葉にハッとなった。そうだ、紀藤さんは結婚していて、子供までいる。育休まで取ったんだから。
 手帳にペンを走らせる左手に、指輪が光っていた事を思い出しながら俺たちはスペースへと戻っていった。
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