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鬼頭先生まで……?!

職場の上司とランチタイム

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「楢本くんと間宮くん、すっごく仲良くなったね」
 運ばれてきたもり蕎麦を前に頂きますの所作をしながら、言葉の通り嬉しそうに言う。落ち着いた出で立ちのこの人物は、二人の上司である紀藤響介だ。
 穂高くんとはあの出来事から社内でも距離が近くなった。というか、穂高くんが一層俺に構うようになっていた。
 昼休憩になった時、俺にじゃれつく穂高くんを見ていた紀藤さんがランチに誘ってくれた。
 所謂ホワイト企業である弊社でも、男性で育休を取るのは珍しい事らしかったが、育休から復帰してバリバリ働く上司は指導も丁寧で、何より本人が優秀。文句の付け所の無い人で、社内外から羨望の眼差しを受けている。
 かくいう俺自身も、人間として魅力的な人だと尊敬の念を抱いていた。人間関係に難のある俺を気遣って色々と気を回してくれていたのも知っている。だから、ランチに誘われるはとても名誉な事だと感じていた。
「はい!今日はランチ誘ってもらってありがとうございます」
「は、はい……ありがとうございます」
「そういえば、今度の連休って二人はどうするの?」
「えっとイベ――じゃなくって!えっと!!ぶはっ」
 思わずイベントに参加する事を吐露してしまいそうになった俺は、そばつゆに咽た。なさけない俺の背中をさすりながら、間宮穂高が代わりに答えてくれた。上司にオタバレも腐バレもしたくない!
「ちょっと出掛けるんです」
「それって二人で?」
「二人で!」
「ち、違うでしょ?!」
「……もう一人入れて、三人です」
「へえ、三人──仲良しさんで良いねぇ」
 紀藤さんはたまに子供に言い聞かせるような言い方をする。実際に子育てをしているからだろうか。子供やお相手の話は、なんとなく紀藤さんから話される情報でしか得られないが、家族仲は良いみたいだ。仕事も過程も安定しているなんて、素晴らしすぎる。
 結婚して、子供もいる男性。という昔ながらのイメージからは離れた所に、紀藤さんは存在していた。柔らかな口調になのに、上に有無を言わさず自分の主張を通す強さもある。そんな彼に憧れない人間はいないだろう。
「紀藤さんはどこか行くんですか?」
「うん。私もちょっと出掛けようかと思ってるんだ。……もしかしたら会えるかも?」
 悪戯をしかける子供の様に紀藤さんは目を細めたが、楢本渚も間宮穂高も冗談に受け取ったようだ。
「そんなあ!この広い東京でたまたま会うなんて、結構な確立ですよ?」
「そうだよねぇ」
 三人の笑い声が蕎麦屋に響いた。楽しいランチタイムを終えた三人は、午後からの仕事へと戻っていった。
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