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マホ先生が登場
マホ先生の正体
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夢のような土日を過ごした俺は、多幸感に溢れた月曜日を迎えていた。
二夜続けて、ふかふかの大きなベッドで人と眠った身に、自宅である極小アパートの狭い敷布団は骨身にしみた。しかし、思い返すだけでニヤニヤしてしまう記憶があるというのはこんなにも幸せな事なのだろうか。
玲央さんが言ったようにあの一連の出来事を小説にしてしまいたくて堪らない。たまらないが社会人でもある俺は、今日も真面目に出社して働いていた。
「楢本くん、今日もランチ一緒にどう?」
昼休憩に入った途端、話しかけてきてくれたのは金曜日にランチを奢ってくれた同僚・間宮くんだった。
「あ……!ごめん俺先週のお金……!」
「いーっていーって!それより体調どう?」
慌てて財布を取ろうとした俺を制止して、間宮くんは心配そうに見つめてきた。高そうなオシャレ眼鏡の奥の瞳の色素が薄いことに初めて気づいたのは、彼の顔を至近距離でちゃんと見たのが今日初めてだったからだろう。前までは同期の顔すら見る事を憚られたが、一つ経験値があがった俺は、彼の顔を見る事が出来るようになったらしい。
「……綺麗な目だね」
「え?」
「わっ、ご、ごめん……!間宮くんの目が綺麗だなって……」
陰の者がそんな事を言ってもキモイだけなのに、間宮くんは明るく笑ってくれた。俺がこの眼鏡をしても、ただのオタク眼鏡になるだけだろうに。
見るからに陽な間宮くんがかけるとオシャレなアイテムに早変わりなんだから、本当に陰に厳しい世の中だ。
「オレ祖父が北欧出身なんだよね。だから目とか髪の色素薄くて、眼鏡で隠してんの。これ度なし」
間宮くんは軽やかに笑ったが、彼の柔らかい箇所をつついてしまったのかと、呑気な思考の自身を責め、焦った。
「そ、そうなの?!そんな……間宮くんは陽の者で、友達も多くて……」
「陽とか分かんないけど、友達は多い方がいいでしょ?オレ、楢本くんとももっと仲良くなりたいな。……同期だし」
間宮穂高はオレと同じ新入社員だ。入社当時からコミュ力を発揮し、チームのムードメーカーになった。細身で愛くるしい笑顔な彼は、女子社員からも可愛いと評判だ。何故そんな事を知っているかというと、間宮くん狙いの女子達が俺に情報を聞いてくるから。間宮くんは仕事関係以外では職場の女性とは食事に行かないというポリシーがあるらしく、ランチに誘われる俺から情報を聞き出そうと躍起になる女子社員が数名存在するのである。
そんな社内の人気者に、仲良くなりたいなんて可愛く言われてしまったら、頷く以外の選択肢があるだろうか。いや、ない。
「お、俺年上だけど、いいのかな」
「何言ってんの!――なんとなく、楢本くんとは気が合う予感がしてるんだよね。ランチどう?」
「そう言って貰えて嬉しいな。でも、俺今日はお弁当があるんだ」
「そっか残念!じゃあ、今度飲みに行かない?」
「うん!」
残念そうに俯いた間宮くんに申し訳なくて、俺は力強く頷いた。
そうして、持って来たオシャレなペーパーバックから具がたっぷりの手作りサンドウィッチを取り出した。正確にはバインミーとか言う聞きなれない名前がついているらしいこのオシャレサンドウィッチは、昨晩帰宅する時、玲央さんが夜食にと持たせてくれたものだ。アフターフォローまでばっちりな玲央さんに、既にメロメロになっている自覚はあった。
朝は米派だが、夜食はパン派と言っていた玲央さんは、5日分くらいのサンドウィッチを作り置きしているらしい。神絵師らしく、色彩感覚に優れている玲央先生が作ったサンドウィッチはオシャレなカフェでテイクアウトしたような映えるサンドウィッチだ。
いつもとは違う、オシャレな昼食にかぶり付くのがおかしいのか、間宮くんはちらちらと俺を見ながらランチへと出かけていったのが見えた。
二夜続けて、ふかふかの大きなベッドで人と眠った身に、自宅である極小アパートの狭い敷布団は骨身にしみた。しかし、思い返すだけでニヤニヤしてしまう記憶があるというのはこんなにも幸せな事なのだろうか。
玲央さんが言ったようにあの一連の出来事を小説にしてしまいたくて堪らない。たまらないが社会人でもある俺は、今日も真面目に出社して働いていた。
「楢本くん、今日もランチ一緒にどう?」
昼休憩に入った途端、話しかけてきてくれたのは金曜日にランチを奢ってくれた同僚・間宮くんだった。
「あ……!ごめん俺先週のお金……!」
「いーっていーって!それより体調どう?」
慌てて財布を取ろうとした俺を制止して、間宮くんは心配そうに見つめてきた。高そうなオシャレ眼鏡の奥の瞳の色素が薄いことに初めて気づいたのは、彼の顔を至近距離でちゃんと見たのが今日初めてだったからだろう。前までは同期の顔すら見る事を憚られたが、一つ経験値があがった俺は、彼の顔を見る事が出来るようになったらしい。
「……綺麗な目だね」
「え?」
「わっ、ご、ごめん……!間宮くんの目が綺麗だなって……」
陰の者がそんな事を言ってもキモイだけなのに、間宮くんは明るく笑ってくれた。俺がこの眼鏡をしても、ただのオタク眼鏡になるだけだろうに。
見るからに陽な間宮くんがかけるとオシャレなアイテムに早変わりなんだから、本当に陰に厳しい世の中だ。
「オレ祖父が北欧出身なんだよね。だから目とか髪の色素薄くて、眼鏡で隠してんの。これ度なし」
間宮くんは軽やかに笑ったが、彼の柔らかい箇所をつついてしまったのかと、呑気な思考の自身を責め、焦った。
「そ、そうなの?!そんな……間宮くんは陽の者で、友達も多くて……」
「陽とか分かんないけど、友達は多い方がいいでしょ?オレ、楢本くんとももっと仲良くなりたいな。……同期だし」
間宮穂高はオレと同じ新入社員だ。入社当時からコミュ力を発揮し、チームのムードメーカーになった。細身で愛くるしい笑顔な彼は、女子社員からも可愛いと評判だ。何故そんな事を知っているかというと、間宮くん狙いの女子達が俺に情報を聞いてくるから。間宮くんは仕事関係以外では職場の女性とは食事に行かないというポリシーがあるらしく、ランチに誘われる俺から情報を聞き出そうと躍起になる女子社員が数名存在するのである。
そんな社内の人気者に、仲良くなりたいなんて可愛く言われてしまったら、頷く以外の選択肢があるだろうか。いや、ない。
「お、俺年上だけど、いいのかな」
「何言ってんの!――なんとなく、楢本くんとは気が合う予感がしてるんだよね。ランチどう?」
「そう言って貰えて嬉しいな。でも、俺今日はお弁当があるんだ」
「そっか残念!じゃあ、今度飲みに行かない?」
「うん!」
残念そうに俯いた間宮くんに申し訳なくて、俺は力強く頷いた。
そうして、持って来たオシャレなペーパーバックから具がたっぷりの手作りサンドウィッチを取り出した。正確にはバインミーとか言う聞きなれない名前がついているらしいこのオシャレサンドウィッチは、昨晩帰宅する時、玲央さんが夜食にと持たせてくれたものだ。アフターフォローまでばっちりな玲央さんに、既にメロメロになっている自覚はあった。
朝は米派だが、夜食はパン派と言っていた玲央さんは、5日分くらいのサンドウィッチを作り置きしているらしい。神絵師らしく、色彩感覚に優れている玲央先生が作ったサンドウィッチはオシャレなカフェでテイクアウトしたような映えるサンドウィッチだ。
いつもとは違う、オシャレな昼食にかぶり付くのがおかしいのか、間宮くんはちらちらと俺を見ながらランチへと出かけていったのが見えた。
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