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本名は楢本渚2
しおりを挟む「ちょっとそれ……大丈夫?」
同期の一人が、心配そうに俺のスマホを覗き込んだ。
ランチを終え、食後のコーヒーを頂いている時にそろそろ良いだろうとスマートフォンの充電を入れたのだけれど……。入れた時から通知が止まらない。
「何かバズってるの?」
「あれ、楢本くんってSNSやってないって言ってなかった?」
「でもその通知のやつってTwitterよね?」
リアルで人と繋がる事が怖くてやっていないで通していたのだけれど、通知の表示を見られてまで隠し通せる気がしなかった。
「えっと……リアルの人と繋がるのはやってないんだけど、趣味の人とつながるやつはやっていて……」
「えー?趣味って何?」
「えっと、それは……」
「こらこら、いきなり距離感詰めたら楢本くん怖がるだろ?」
「そっか、ごめんごめん。また良かったら教えてね。通知確認したいんじゃない?」
「それはお前だろインスタインスタっていつも言ってるし」
「もう!いいじゃん!時代はSNSなの!ね?楢本くんトイレで確認しといでよ!見られたくないんでしょ?」
「ご、ごめん、ありがとう」
同期二人を席に残し、俺はトイレへと急いだ。
「ええ?!えええええええええ?!」
手洗い場の前でTwitterを確認する。引用リツイート件数が千を越えている。それだけでも驚きなのに、その理由が、その理由が……!
「……Leo先生?!なんで?!え?!ど、どういう事!?」
引用リツイートされているのは神絵師のLeo先生から俺へのリプだ。初めましての言葉に画像が添付してある。
外でうっかいエロ絵を開かないように、画像は全てセンシティブになるように俺は設定していた。
Leo先生とは、俺が好きな絵師様の一人である。男の体はエロく、女の体もエロく描写する素晴らしい描写力で、時にBL小説の挿絵、時に女性向け小説の挿絵、時に男性向け小説の挿絵まで手がける多彩な方だ。もちろんフォロワー数もとても多い。
「お、落ち着け俺……」
俺は画像を表示するボタンを、震える指で押した。
「――ぐふ!?」
爆発した。
いや、脳みそが、感情が、吹っ飛んだ。語彙力なんて無い。
そこには、俺が昨晩書き上げた受けと攻めが微笑む絵が、見事な画力で描かれていた。
致死量の興奮に、思わずトイレに倒れそうになる。
「楢本くん?大丈夫……?って顔色悪いよ?!」
「だ、大丈夫……」
「大丈夫って感じじゃないし?!上司には言っておくから早退しなよ!」
「そ、そんな……」
「それかオレが家まで送ろうか?」
「そこまでしてもらうのは悪いので……」
「じゃあタクシーだけ呼ぶね!?」
俺の戻りが遅いからとトイレまで迎えに来てくれた同期に担がれて、俺はタクシーに乗った。タクシー代を握らされ、ランチは奢ってもらったようだ。
あとで同期にお礼を言わなければと思いながら、俺は高鳴る鼓動を抑える事が出来ずタクシーの中で悶えていた。
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