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三日間の休暇

彼と馬車に乗って

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「で、どうしてスチュアートさんも乗ってるの?」
 揺れる馬車の中、アデリアは怪訝に眉を潜めた。

 今日から3日間の休暇を得たアデリアは、意気揚々と家に帰ろうとしていた。初めて得た給金を家族に自慢するためだ。
 母からは見直されるだろうし、妹と弟からは羨望の眼差しで見られるに決まっている。
 そのためにザックスに送り迎えを頼もうとしていたのだけれど、それは叶わなかった。
 仕方なく、徒歩か流しの馬にでも乗せてもらおうかと屋敷を出たところに立っていたのがスチュアートだ。その後ろには立派な御者付きの馬車が準備されていた。平民街までなら送って貰っても言い訳が立つだろうと、好意に甘えたアデリアが乗り込むと、当然のようにスチュアートも乗り込んできた。

「一応上司ですし、ご家族にご挨拶くらいしても良いかと思いまして」
「家まで来るんですか?!」
「はいもちろん」
 トレードマークのモノクルがキラリと光って、アデリアは嫌な予感しかしない。
「あの、えーっと……」
 スチュアートが家まで来ると、身分を偽っていた事がバレてしまうでは無いか。
「ラスール伯爵は良いと?スチュアートさんも私も屋敷から離れたら、業務は?」
「伯爵からの指令です。多分、貴方が秘密を漏らさないか私に監視させたいのだと思います」
 ピシャリと言われて心が折れそうになる。しかしスチュアートを同行させるわけにはいかない。
「急にスチュアートさんが来たらみんなビックリすると思うんですが……」
「そうですか?では先に早馬で私も行くことを知らせましょう」
「?!い、いえいえ!そこまでしなくても!」
 そんな事をされては余計に話が拗れる予感しかない。アデリアは必死で止めた。
「いいのですか?ーー馬車でどれくらいでしょうか?」
「ええっとぉ……あ、あの!家族にお土産を購入したいのでお店に寄りたいのですが……」
「そうですね、それは良いです。一応私も菓子を持参しましたが、ご家族の好みを熟知したアデリア自身が選ぶのも良いでしょう」
「じゃあ、あの、平民街に行ってみたいお店があるので寄っても?」
 平民街と聞いて僅かにスチュアートの眉が寄った気がしたが、すぐに彼は柔らかな笑顔を浮かべた。
「……良いですよ」
「ーーよし!」
 平民街で降りてしまえばこちらのもの。あの辺はアデリアとザックスで走り回った場所。スチュアートをまいてしまえば良い。
 アデリアの思いつきの計画を脳内で練り始めた。
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