楽に生きたい平民なのに一癖ある伯爵どころかその他大勢にも気に入られてしまい困っています

花田トギ

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ラスール邸での生活

働き出したアデリア

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「どうしてこんなに忙しいの!?」
 洗濯婦からラスール伯爵用のシャツを受け取って、やっと自室に座ったアデリアが嘆くのも無理は無かった。屋敷に来て三日を過ぎたが、日々が忙しすぎる。朝はラスール伯爵を起しに行かなければならないし、伯爵の着る服を選ぶのもアデリアの仕事だ。その合間にスチュアートによる指導も入るし、細々とした仕事をこなさなければならない。
 まあ伯爵に呼ばれるとはいっても、今のところアフタヌーンティを共に過ごす事しかしていなかったのだが。
 アフタヌーンティは幸せの時間だ。紅茶は美味しいし、お砂糖は甘い。美味しいお菓子は余った分包んでくれる。金食器ばかりの食卓は最初こそ目がチカチカしたが、そんなものはすぐに慣れた。
 とは言っても、それでも今までほぼニートだったアデリアからすると仕事量が多すぎるのだ。それに、メイドの仕事の範疇を超えている気がする。
 全く楽ではない。予想より忙しい。後悔しかないし、今すぐにでも辞めてしまいたいのだが、その度に家族の顔が過った。そして何より、試用期間の一週間が経たないと給金が出ないと言われているのである。
「それは人手不足だからです」
「い、いつの間に!?というかノックしました?!」
 いつの間にか室内にいたスチュアートの姿に、腰が抜けそうになった。足音がしないのだ、この男は。
「ノック?必要ですか?」
「女の子の部屋にノック無しは失礼じゃないですか?!」
「――そう言われればそうですね」
「そうなんです!それで、人手不足なら雇えばいいじゃないですか?」
 至極もっともなアデリアの意見に、珍しくスチュアートが困った顔をした。線の細い優男が眉を寄せると、とても重大な事のような気がしてくる。
「そうもいかないんですよ。アデリアにも直にわかると思います。多分、そろそろなので」
「そろそろ?」
「周期的には、今夜辺り」
「何がですか?」
「それは、まあ、お楽しみと言う事で……。さ、そんな事よりも、私は仕事があるから呼びに来たんですよ」
 ふわっとした事しか言わないスチュアートに苛立ちが募るが、それをさらりと交わされてしまった。
「げ」
「その言葉遣いは頂けませんねアデリア」
「申し訳ありません」
 ぺこりと頭を下げると、スチュアートは満足そうに微笑んだ。
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