平凡な佐々木さんと風俗案内所の理一郎さん

3night－－セフレ

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……



「何回してたんすか？」

　鉄がキレ気味に言ったのも無理はない。風呂で体を流しては盛り、また洗っては盛りを繰り返した二人の肌は、しっとりなめらか湯上り肌になっていたのだから。

「悪い悪い鉄！肉奢っちゃるから」

「すすすみません、鉄さん遅くなりまして」

　恐縮する佐々木に、ケラケラと笑顔の理一郎。二人を見て、鉄は何かに気が付いた。

「あ、そういえば緒方どうなった？」

「まあ大丈夫です。理一郎さんが気にする事は何もないです。あと、お楽しみ中に山田さんとこと倉持さんとこから電話ありました。折り返してほしいそうです」

「ああ、アレの件だな。ありがと！ちょっと事務所で電話してくるわ」

　カンカンと金属製の階段を軽快に鳴らし、理一郎を二階へ向かわすと、鉄は佐々木の方を向きなおした。

「佐々木さん、ちょっと良いですか？」

「なんでしょうか……？」

「確認なんですが、やったんですよね？」

「やっ……りましたすみません」

　真っ赤になって俯く佐々木に、鉄は先程から気になっていたことを訊ねた。

「佐々木さん、理一郎さんに惚れてますよね？」

「わ、わかりますか？」

「はい。俺も理一郎さんに惚れてるんで」

「ああ……」　

「そんな申し訳なさそうな顔しないでください。でも、あの感じだとお二人まだ付き合ってませんよね？どういう事です？」

「えっとぉ……」

　眼光鋭く睨まれて若干委縮しつつも、告白しようと好意を伝えようとしたが、なぜかセフレとして処理されてしまった事を伝えてみると、鉄は小さく吹き出した。

「なんでなんすか」

　初めて見る、本心からの笑顔を浮かべる鉄を可愛らしく思った。そういえば鉄はいくつなんだろう。

「なんでなんですかね。それが分かれば苦労はしないんですけど」

「ちょっと改めた場面でもっかい言えばいいんじゃないすか？やっちゃう前に」

「そうですよね。頑張ってみます。……でも、鉄さんは良いんですか？」

「何がです？」

「鉄さんは理一郎さんが好きなんですよね？」

「ええ。そうです。17からだからもう三年片思い中ですよ」

「17から三年？！え、待ってください鉄さんおいくつですか？」

　単純な足し算なのに、目の前の貫禄ある男と結びつかなさ過ぎて計算ができない。

「この前二十歳になりました。やっと理一郎さんに酒飲ませてお持ち帰りできると思ったのに」

　ぎろりと睨まれる。

「いや、泥酔した相手にってそれ犯罪じゃあ」

「佐々木さんもそういうの煩いタイプすか？理一郎さんも『酒は二十歳になってから』だの『未成年との淫行はしない』だのめんどくさいんですよね」

「見た目はチャラいのに意外としっかりしてるもんね、理一郎さん」

「……あの髪の色、なんで染めてるか知ってます？」

「理一郎さんの明るい髪？カッコイイからじゃないんですか？」

　佐々木の回答に、勝ち誇ったように鉄は腕を組む。

「黒いままだと幼く見られて舐められるんす。だからちょっとでもいかつく見えるようにスカジャン着て、派手髪にしてるんですよ。余計可愛く見えるっつーのに。……昔は部屋の中ではふわもこなパジャマとか着てましたからあの人」

「ええ？！そ、それはとても可愛いのでは……？！」

「はい、とても可愛かったです」

「な、何故だろう何故か負けた気が……！」

「そういう理一郎さんの過去とかも、佐々木さんよか俺のが知ってるんで。佐々木さんが何度理一郎さんを抱こうが何とも思わないっす。今までだって彼氏何人かいたし、今更一人二人増えた所で何も変わらないっす。ていうか、最後は俺が幸せにするって決めてるんで早く付き合って別れてください」

「言ってる事はカッコ良いのに無茶言われてるよね俺？！」

　佐々木に目線を合わせてにっこり笑顔を向ける鉄は、それ以上何も言う事無く業務に戻っていってしまった。

　理一郎が戻ってくるまで一人で放置されていた佐々木の頭の中は、ふわもこパジャマを着た可愛い理一郎の姿が浮かんでニヤニヤが止まらなかった。

　理一郎の誕生日が来たら、パジャマをプレゼントしようと佐々木は心に決めたのであった。