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3night--セフレ

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「はあ……」

 季節は少し進み、ため息がすっかり白くなっていた。

 白く濁って理一郎の体から出てきた気体が、透明になって外の空気と混じるのをぼんやりと見上げていると、いつの間にやら鉄が横に立っていた。図体も態度もデカいが、足音は小さい男だ。忍者かよ。

「どうしたんすか?通行人ばっかり見て」

「なんでもねーって」

「外で声かけたら駄目っすからね」

「それはオレが教えたんだろうが。やるわけねーだろ」

 ポケットから取り出したスマートフォンを慌てて起動すると、暇つぶしに入れていたアプリゲームをタップした。

 呑気な起動音声が流れる。

「――佐々木サン、こないっすねぇ」

 僅かに鉄の眉が寄ったのだが、元々強面なので周りには分からない。

「っ!べ、別に探してなんか……っ」

「ふーん……」

 起動したアプリは音ゲーらしい。タップしているがズレまくっているのが見える。

「あんな事しといて、中々顔は見せ辛いですよねえ」

「お前のせいだろうが!」

 あれから二週間も経つのに、佐々木は顔を見せていなかった。ワイシャツは改めてクリーニングに出し、綺麗にパッケージングしてある。

 いつ取りに来ても良いようにと店に置いてはあるが、果たして渡せるチャンスはあるのだろうか。

「……佐々木さんで抜いたんスか?」

「ば、ばっかお前……何言って……っ!」

「耳赤いっすよ。理一郎さんのえっちー」

「鉄!!!」

「一人でやるなら俺とやりましょうよ」

「だからやらねぇって!」

 周りに不穏な空気を感じさせないよう、言葉は荒いが顔は営業スマイルのまま繰り広げられる二人のやり取りに割って入るように、入り口からひょっこりおじさんが顔を出した。

「あのぉ……」

「はーい!ほら、鉄いけ!」

「はいはい……ったく、俺で良いじゃん……」

「何か言ったか?」

「なーんにも言ってませんよ。接客行ってきます」

 おじさんを接客し始めた鉄を横目に、その奥を歩く雑踏を見る事が辞められない。

 目を瞑ると、あの時見た佐々木の上半身が浮かび、耳を塞げば褒めてくれた言葉が蘇ってきた。

 かあっと顔が赤くなっていく。

 だって、仕方ないじゃないか。始めは見た目とか空気感じが良いなと思った。なのに中身も理一郎の好みだったのだから。思い出しオナニーを何度かしてしまったのは事実だけれど、誰にも迷惑かけてないんだし許されたいところだ。

 思えば、密室(鍵かかってないけど)で二人きりってあれはチャンスだったんじゃなかろうか。手やスマタなんかじゃなく、それ以上を……いやいや、佐々木サンが男もいけると決まったわけじゃないし。でもしっかり下半身は反応してたし……いやいや、いやいや、自分に都合よく考えるんじゃないリイチロー。理一郎の理は理性の理!

 等と脳内を騒がしくさせ、ため息をついた時だった。
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