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2night--ホテヘル
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「はいはい、余計な話をしないの」
「あ、直ったの?やったー!じゃあね、お兄さん。あ、良かったら指名してね」
「こらこら、早くお仕事お仕事」
「はいはーい」
理一郎の顔を見た途端、猫も笑顔になったような気がした。ぴょこんと飛び起きたなのはが佐々木に名刺を一枚手渡して足音軽く部屋を出ていった。
入れ違いに理一郎が腰を降ろした。小柄ななのはに比べると、やはり体積が大きい。
「えーっと、余計な事をゴメンね」
「い、いいえそんな事は……」
真面目な話をされた直後だと言うのに、今気になるのは目の端に移る引きっぱなしの和布団だ。起き抜けの形のまま、かけ布団が乱れている。どうしても、前回あの布団に寝転がった自分が思い出されて勝手に体温が上がってくる。頭もぽうっとして、布団の横にあるティッシュですらものすごくエロく感じてしまう。
正直、期待している自分がいた。
「じゃあ、脱いで」
「ええ?!」
「脱がなきゃ落とせないじゃん?」
「お、おとおと、落とすってそんな……理一郎さんなら脱がなくても落とせるでしょ?」
その可愛い顔なら、男でも女でもコロっといきそうである。
「難しくない?やったことないし」
体から関係を作るタイプなのだろうか。と言う事は前回のアレもその一環で、もしかして理一郎は自分を落とそうとしているという事か。恋愛的な意味で。
「た、ただれた生活……!普通、最初は服着たままだと思うんですけど!」
「えー……佐々木サンがそういうなら仕方ないか。……濡れちゃっても怒んないでね」
「ぬぬぬぬぬれ?!だ、誰がですか?!俺が?!君が?!」
「佐々木サンに決まってるじゃん!」
きょとんとした大きな目で見つめられても、佐々木は自身の勘違いに気付かない。
「ぬぬぬぬ、濡れませんよ!」
「そんなの分かんないじゃん!オレ服着たままやるの初めてだし……手元狂うかもだし……」
先程のユウちゃんとのプレイで使ったローションが頭を過る。そうか、今日はヌルヌルなプレイをしてくれる気なのだろうかとエロい妄想が瞬時に頭を過った。
「ロ、ローションプレイ何てそんなあー!」
「何言ってんの?口紅落とさないの?」
「――く、口紅?!」
「うん、口紅落とすためにここに来たんじゃん?」
佐々木はここに来てやっと自分がとんでもなく恥ずかしい勘違いをしていた事を悟ったのだった。頭がエロい事しか考えられなくなっていたとはいえ、恥ずかしすぎる。
理一郎の表情が『大丈夫かコイツ』とでも言いたげに見えて、慌ててネクタイを外すと、ワイシャツを脱ぎ、そそくさと畳んで理一郎に手渡した。
理一郎はそれを受け取ると、不思議そうに首を傾げながらシンクへと向かった。
手持無沙汰になった佐々木は、なんとなく理一郎の後を追うと、何をするのだろうとシンクを覗き込むんだ。うなじ越しに理一郎は口紅が着いた部分に食器洗い洗剤をかけてつまみ洗いし出した。
「口紅って油なんだよ。だからこうやってやれば……ほら、すぐだったし落ちたっしょ?」
「ホントだ!凄いです理一郎さん!」
ついてきた佐々木に少し得意気に語り掛ける。
「ま、女の子に昔教えて貰ったんだけどね」
少し遠い目で語った理一郎に、過去に何かあったんだろうと推察した。なのはの話の通り女でも男でもモテそうな理一郎には、佐々木には理解が及ばない壮絶な過去があってもおかしくないのだ。
「ほう……それは家庭的な彼女さんだったんですねぇ……」
泡立てた部分を洗い流すと、すっかり口紅は落ちていた。
「いや?彼女じゃなくって、ここで働いてた子だけどね」
「え?す、すみません……も、モテそうだからつい……。なのはさんも言ってたし」
「なのはちゃん?」
「ほら、男も女もメロメロって……そういえば『ウリ』って何ですか?」
度々の自分の勘違いに話題をずらしたくて、初めてなのはに会った時に言っていた言葉を反芻してみると理一郎はぎょっとした顔で佐々木を見つめてきた。
「えーっと……」
理一郎が視線をワイシャツに戻す。握りしめてしまったようでぎゅっと握った部分が皺になっている。
「あ、ここ洗濯乾燥機あるんだよね。いつもは女の子の衣装洗ったりしてんだけど、ちゃんと綺麗だからさ。ちょっと回してくるよ」
「え……?そこまでして頂くわけには――」
「まあまあ、ちゃんとアイロンもかけて渡すからさ。だってほら、ワイシャツ無しでどうやって帰るの?」
「確かに……」
夜は冷えるこの時期、肌着とコートだけで帰るのは心許ない。その返事を納得したと捉えたのか、理一郎はぐいっと背伸びをしてきた。
「オレのだとちょっときついかな?身長いくつ?」
キスされそうになったのかと、反射的にぎゅっと目を瞑った佐々木だったが、聞こえてきたのは他意の無い質問で、少しだけ残念に思った。
残念に思った自分を不思議に思った。
「――えっと、178です」
「いいなあ高くって。じゃあ鉄の服ならいけっかな」
部屋の隅にある洗濯物の山から、白いパーカを引っ張り出すと佐々木に投げてきた。広げてみると、佐々木の好きな可愛いアニメのキャラがプリントされている。
「鉄さんの……?アニメとか好きなんですか?」
これがあの黒いスーツの男の私服なのだろうか?隠れオタクというやつなのか?と、疑問を口にすると、面白そうに理一郎が訂正してきた。
「違い違う。あいつ顔ちょっと怖めだろ?女の子が怖がるんだよね。だから、女の子の相手する時用にかわいい服買ってやったんだ。……全然着ないんだけど」
「俺が着て良いんですか?」
「大丈夫大丈夫。ここオレの部屋だし。オレの部屋にあるって事は俺が好きにしていいってことでしょ」
発言にジャイアニズムを感じている間に、理一郎は洗濯部屋へと一旦出ていった。
とりあえず与えられたパーカに袖を通してみるが佐々木が着ても腕が余った。
自分の身長を低いを思った事はあまり無かったが、この服を着ていると否が応でも鉄という男が自分よりデカい事が感じられて、負けた気分になる。
「デカくてカッコよくて筋肉あるってズルすぎるだろ……」
鉄のスペックに若干毒を吐きつつ、改めて部屋を見渡してみる。相変わらず物は多いが、掃除はある程度されているようで、ほこりはあまり溜まっていない。コンセントからはたこ足のように充電器が繋がっていて、いくつかはスマートフォンの充電に使われている。
どうしてスマートフォンが五つも必要なのかはわからないけれど。
「あ、直ったの?やったー!じゃあね、お兄さん。あ、良かったら指名してね」
「こらこら、早くお仕事お仕事」
「はいはーい」
理一郎の顔を見た途端、猫も笑顔になったような気がした。ぴょこんと飛び起きたなのはが佐々木に名刺を一枚手渡して足音軽く部屋を出ていった。
入れ違いに理一郎が腰を降ろした。小柄ななのはに比べると、やはり体積が大きい。
「えーっと、余計な事をゴメンね」
「い、いいえそんな事は……」
真面目な話をされた直後だと言うのに、今気になるのは目の端に移る引きっぱなしの和布団だ。起き抜けの形のまま、かけ布団が乱れている。どうしても、前回あの布団に寝転がった自分が思い出されて勝手に体温が上がってくる。頭もぽうっとして、布団の横にあるティッシュですらものすごくエロく感じてしまう。
正直、期待している自分がいた。
「じゃあ、脱いで」
「ええ?!」
「脱がなきゃ落とせないじゃん?」
「お、おとおと、落とすってそんな……理一郎さんなら脱がなくても落とせるでしょ?」
その可愛い顔なら、男でも女でもコロっといきそうである。
「難しくない?やったことないし」
体から関係を作るタイプなのだろうか。と言う事は前回のアレもその一環で、もしかして理一郎は自分を落とそうとしているという事か。恋愛的な意味で。
「た、ただれた生活……!普通、最初は服着たままだと思うんですけど!」
「えー……佐々木サンがそういうなら仕方ないか。……濡れちゃっても怒んないでね」
「ぬぬぬぬぬれ?!だ、誰がですか?!俺が?!君が?!」
「佐々木サンに決まってるじゃん!」
きょとんとした大きな目で見つめられても、佐々木は自身の勘違いに気付かない。
「ぬぬぬぬ、濡れませんよ!」
「そんなの分かんないじゃん!オレ服着たままやるの初めてだし……手元狂うかもだし……」
先程のユウちゃんとのプレイで使ったローションが頭を過る。そうか、今日はヌルヌルなプレイをしてくれる気なのだろうかとエロい妄想が瞬時に頭を過った。
「ロ、ローションプレイ何てそんなあー!」
「何言ってんの?口紅落とさないの?」
「――く、口紅?!」
「うん、口紅落とすためにここに来たんじゃん?」
佐々木はここに来てやっと自分がとんでもなく恥ずかしい勘違いをしていた事を悟ったのだった。頭がエロい事しか考えられなくなっていたとはいえ、恥ずかしすぎる。
理一郎の表情が『大丈夫かコイツ』とでも言いたげに見えて、慌ててネクタイを外すと、ワイシャツを脱ぎ、そそくさと畳んで理一郎に手渡した。
理一郎はそれを受け取ると、不思議そうに首を傾げながらシンクへと向かった。
手持無沙汰になった佐々木は、なんとなく理一郎の後を追うと、何をするのだろうとシンクを覗き込むんだ。うなじ越しに理一郎は口紅が着いた部分に食器洗い洗剤をかけてつまみ洗いし出した。
「口紅って油なんだよ。だからこうやってやれば……ほら、すぐだったし落ちたっしょ?」
「ホントだ!凄いです理一郎さん!」
ついてきた佐々木に少し得意気に語り掛ける。
「ま、女の子に昔教えて貰ったんだけどね」
少し遠い目で語った理一郎に、過去に何かあったんだろうと推察した。なのはの話の通り女でも男でもモテそうな理一郎には、佐々木には理解が及ばない壮絶な過去があってもおかしくないのだ。
「ほう……それは家庭的な彼女さんだったんですねぇ……」
泡立てた部分を洗い流すと、すっかり口紅は落ちていた。
「いや?彼女じゃなくって、ここで働いてた子だけどね」
「え?す、すみません……も、モテそうだからつい……。なのはさんも言ってたし」
「なのはちゃん?」
「ほら、男も女もメロメロって……そういえば『ウリ』って何ですか?」
度々の自分の勘違いに話題をずらしたくて、初めてなのはに会った時に言っていた言葉を反芻してみると理一郎はぎょっとした顔で佐々木を見つめてきた。
「えーっと……」
理一郎が視線をワイシャツに戻す。握りしめてしまったようでぎゅっと握った部分が皺になっている。
「あ、ここ洗濯乾燥機あるんだよね。いつもは女の子の衣装洗ったりしてんだけど、ちゃんと綺麗だからさ。ちょっと回してくるよ」
「え……?そこまでして頂くわけには――」
「まあまあ、ちゃんとアイロンもかけて渡すからさ。だってほら、ワイシャツ無しでどうやって帰るの?」
「確かに……」
夜は冷えるこの時期、肌着とコートだけで帰るのは心許ない。その返事を納得したと捉えたのか、理一郎はぐいっと背伸びをしてきた。
「オレのだとちょっときついかな?身長いくつ?」
キスされそうになったのかと、反射的にぎゅっと目を瞑った佐々木だったが、聞こえてきたのは他意の無い質問で、少しだけ残念に思った。
残念に思った自分を不思議に思った。
「――えっと、178です」
「いいなあ高くって。じゃあ鉄の服ならいけっかな」
部屋の隅にある洗濯物の山から、白いパーカを引っ張り出すと佐々木に投げてきた。広げてみると、佐々木の好きな可愛いアニメのキャラがプリントされている。
「鉄さんの……?アニメとか好きなんですか?」
これがあの黒いスーツの男の私服なのだろうか?隠れオタクというやつなのか?と、疑問を口にすると、面白そうに理一郎が訂正してきた。
「違い違う。あいつ顔ちょっと怖めだろ?女の子が怖がるんだよね。だから、女の子の相手する時用にかわいい服買ってやったんだ。……全然着ないんだけど」
「俺が着て良いんですか?」
「大丈夫大丈夫。ここオレの部屋だし。オレの部屋にあるって事は俺が好きにしていいってことでしょ」
発言にジャイアニズムを感じている間に、理一郎は洗濯部屋へと一旦出ていった。
とりあえず与えられたパーカに袖を通してみるが佐々木が着ても腕が余った。
自分の身長を低いを思った事はあまり無かったが、この服を着ていると否が応でも鉄という男が自分よりデカい事が感じられて、負けた気分になる。
「デカくてカッコよくて筋肉あるってズルすぎるだろ……」
鉄のスペックに若干毒を吐きつつ、改めて部屋を見渡してみる。相変わらず物は多いが、掃除はある程度されているようで、ほこりはあまり溜まっていない。コンセントからはたこ足のように充電器が繋がっていて、いくつかはスマートフォンの充電に使われている。
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