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2night--ホテヘル
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「佐々木サンってホント真面目だねえ」
あれから二日が経った。
理一郎からの一方的な約束にも関わらず案内所に訪れた佐々木を見つけた理一郎は、口笛を拭きながら半分呆れて笑った。
佐々木からしてもあんな事があって、正直な所ここに来るかどうか迷っていた。だが、頭から離れないのだ。理一郎と二人で過ごしたあのエロティックな空間が。
理一郎に目線を合わせると、ズレたサングラスの向こうに丸い瞳が見えた。笑った時に細くなる目に再会出来た事に佐々木の心は躍っていた。
「まあまあ、前回のはジャブみたいなもんだから。ゆるーいのから攻めていこうよオニーサン。次はもっと気持ち良い射精しようよ!」
「そんっ!も、もう良いですからっ」
「あ、そうだ一個だけ注意し忘れたんだけど」
肩を組んできた理一郎が、内緒話でもするように声を落とした。これは重要な話の声量だ。
「ミナミちゃんさ、皆に手コキやってるわけじゃないんだよね。つーかメンエスって基本射精禁止なんだ」
「えぇ?!じゃあ俺捕まっちゃうんですか?!」
ほやほやと理一郎の可愛らしさに浮かれていた佐々木の顔が、瞬時に引きつる。
ピュアな佐々木の反応に、どうしてか嬉しそうに理一郎言葉を続けた。
「いやいや、バレなきゃ大丈夫でしょ。でもネットに書いたり他のメンエス行くときに抜きアリだと思って行っちゃダメだよ?って言おうと思って」
「行きませんよ!!!」
「えー?まあ一応一応!」
「一応って……」
「ほら、今日はまた出しに行こう?リハビリ、リハビリ!」
「リハビリって……一応前回り、理一郎さんで出せましたし……」
「ん-……まあそこはほら、オレのテクが最上級だからさぁ。素人さんに求めるレベルじゃないんだよねぇ。それにハンドだけだと自慰と変わんないと思うなあ。やっぱもうちょいセックスっぽいのでイってもらわないと!」
「え?!」
ビクついた佐々木の肩をぽんぽんと叩きながら、ニシシと理一郎は耳元に口を寄せてきた、内緒話のようでドキドキする。
「ふふふ。皆まで言うなだよ佐々木サン。なんと本日は!恋人プレイが上手なユウちゃんの枠が取れそうなんだよ。今日はあの目の前のホテルに入ってくれればオッケー。受付に話通しておくから。とりあえず緊張しいっぽいし80分あればいいっしょ」
「いやいやいやいや、無理ですって!」
「まーまー分かってるって。男相手でも風俗店行きたい!とは男のプライド的に言い難い人いるもんなあ」
否定して逃げてしまおうとする佐々木の腕を、リイチローは掴んで離さない。可愛い顔をしていてもさすが男性。しっかりと掴まっている。
佐々木を捕まえたまま理一郎は鉄に目だけで指示を出すと、鉄はすぐにどこかへ電話をかけ『予約完了』のポーズで返してきた。仕事が無駄に早い。
「はい。これでユウちゃん予約取れました。ここから見えるラブホの403に入ってればユウちゃん来るかさ」
「そ、そんな強引な……俺は……」
理一郎ともう少し話がしたかったのだけれど、そんな時間すら貰えないのだろうか。不安げな佐々木を覗き込む理一郎の瞳は、百パーセント善意に見えた。
昨日の熱を帯びた瞳は本当にあくまでプレイだったのだろうか。だっていくらGメンだからって実際に抜くまでしてくれるなんて、そこに何かしらの感情が絡んでいる筈だと思って今日は勇気を出して来たと言うのに。
執拗にユウちゃんを勧めてくる理一郎に、若干の苛立ちを感じてしまう。
「どうする?行かないとユウちゃんが悲しむと思うんだけど?」
「うぅ……い、行きますよぅ……」
根本的に人の好い佐々木はそんな風に言われてしまっては断れない。
「よし、今日こそお楽しみくださーい」
ひらひらと手を振るリイチローに律儀にもお辞儀して、きょどりながらも佐々木は一人、おどおどとすぐそこのラブホへと消えていった。
あれから二日が経った。
理一郎からの一方的な約束にも関わらず案内所に訪れた佐々木を見つけた理一郎は、口笛を拭きながら半分呆れて笑った。
佐々木からしてもあんな事があって、正直な所ここに来るかどうか迷っていた。だが、頭から離れないのだ。理一郎と二人で過ごしたあのエロティックな空間が。
理一郎に目線を合わせると、ズレたサングラスの向こうに丸い瞳が見えた。笑った時に細くなる目に再会出来た事に佐々木の心は躍っていた。
「まあまあ、前回のはジャブみたいなもんだから。ゆるーいのから攻めていこうよオニーサン。次はもっと気持ち良い射精しようよ!」
「そんっ!も、もう良いですからっ」
「あ、そうだ一個だけ注意し忘れたんだけど」
肩を組んできた理一郎が、内緒話でもするように声を落とした。これは重要な話の声量だ。
「ミナミちゃんさ、皆に手コキやってるわけじゃないんだよね。つーかメンエスって基本射精禁止なんだ」
「えぇ?!じゃあ俺捕まっちゃうんですか?!」
ほやほやと理一郎の可愛らしさに浮かれていた佐々木の顔が、瞬時に引きつる。
ピュアな佐々木の反応に、どうしてか嬉しそうに理一郎言葉を続けた。
「いやいや、バレなきゃ大丈夫でしょ。でもネットに書いたり他のメンエス行くときに抜きアリだと思って行っちゃダメだよ?って言おうと思って」
「行きませんよ!!!」
「えー?まあ一応一応!」
「一応って……」
「ほら、今日はまた出しに行こう?リハビリ、リハビリ!」
「リハビリって……一応前回り、理一郎さんで出せましたし……」
「ん-……まあそこはほら、オレのテクが最上級だからさぁ。素人さんに求めるレベルじゃないんだよねぇ。それにハンドだけだと自慰と変わんないと思うなあ。やっぱもうちょいセックスっぽいのでイってもらわないと!」
「え?!」
ビクついた佐々木の肩をぽんぽんと叩きながら、ニシシと理一郎は耳元に口を寄せてきた、内緒話のようでドキドキする。
「ふふふ。皆まで言うなだよ佐々木サン。なんと本日は!恋人プレイが上手なユウちゃんの枠が取れそうなんだよ。今日はあの目の前のホテルに入ってくれればオッケー。受付に話通しておくから。とりあえず緊張しいっぽいし80分あればいいっしょ」
「いやいやいやいや、無理ですって!」
「まーまー分かってるって。男相手でも風俗店行きたい!とは男のプライド的に言い難い人いるもんなあ」
否定して逃げてしまおうとする佐々木の腕を、リイチローは掴んで離さない。可愛い顔をしていてもさすが男性。しっかりと掴まっている。
佐々木を捕まえたまま理一郎は鉄に目だけで指示を出すと、鉄はすぐにどこかへ電話をかけ『予約完了』のポーズで返してきた。仕事が無駄に早い。
「はい。これでユウちゃん予約取れました。ここから見えるラブホの403に入ってればユウちゃん来るかさ」
「そ、そんな強引な……俺は……」
理一郎ともう少し話がしたかったのだけれど、そんな時間すら貰えないのだろうか。不安げな佐々木を覗き込む理一郎の瞳は、百パーセント善意に見えた。
昨日の熱を帯びた瞳は本当にあくまでプレイだったのだろうか。だっていくらGメンだからって実際に抜くまでしてくれるなんて、そこに何かしらの感情が絡んでいる筈だと思って今日は勇気を出して来たと言うのに。
執拗にユウちゃんを勧めてくる理一郎に、若干の苛立ちを感じてしまう。
「どうする?行かないとユウちゃんが悲しむと思うんだけど?」
「うぅ……い、行きますよぅ……」
根本的に人の好い佐々木はそんな風に言われてしまっては断れない。
「よし、今日こそお楽しみくださーい」
ひらひらと手を振るリイチローに律儀にもお辞儀して、きょどりながらも佐々木は一人、おどおどとすぐそこのラブホへと消えていった。
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