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ストーカー
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セナが出てきたのは、凌太がドリンクを飲み終えて少し経った頃だった。帽子を目深にかぶりキョロキョロと左右を見渡してセナが出てきたのを確認すると、空になった容器をゴミ箱に捨て、花束を持ったままコンビニの自動ドアを開けた。
いつもの焼肉屋とは逆方向に歩いて行くセナに、いくらなんでも店の目の前で声をかけるのは憚られた。
早く声を掛けたい気持ちを押さえ、少し離れたところで声をかけようと、距離をとってセナの後ろを歩いて付いて行くことにした。私服のセナを見るのはこれで二回目だが、店の中での着飾ったセナとは違う魅力に溢れている。
と、人影が怪しく揺れた。
セナと涼太のちょうど真ん中あたりにいつの間にかその人物は立っていた。一定の距離をとってセナの後ろをついて行っている。
凌太はピンと来た。ルカが言っていたストーカーはこいつのことだろう。
このままずっとついていくという判断もあったが、凌太はスマートフォンを取り出すと片手でセナにメッセージを送った。
あの一件以来セナに連絡を取るのは初めて事で少々緊張するが、今は緊急事態だ。
音はしなかったがバイブが鳴ったのだろう。
セナは歩くのを止める事無く、スマートフォンを取り出した。歩きながら文字を読んでいたセナの足が止まると、同じように影も動きを止めた。やっぱりストーカーだ。気づかれないように距離を取って、凌太は看板に身を隠した。
『驚かせてごめん。セナ君の後ろ、誰か付けてるみたい。その後ろに俺がいるから安心して』
『どういうこと?なんでりょーちんがいるの?』
セナの問いはもっともだが、ずっとそこで立ち止まってスマートフォンを操作し続けるのもおかしい。
『ストーカーの話、ルカくんに聞いてる。詳しい事は後で説明するから、今はストーカー捕まえようよ。協力するから』
『どうしたら良い?』
『近くに公園があった。そこに誘導しよう』
『分かった。わかんないけど任せる』
『大丈夫、俺がついてます』
スマートフォンの画面を明るくしたまま、セナが歩き出す。その後ろを影が再び追いかけはじめて、それをさらに凌太が追いかけた。
三人は寂し気な街灯が照らす、人気の無い公園に到着した。鉄棒、ブランコ、滑り台のついたジャングルジムがあるオーソドックスな公園だ。
昼間は子供が遊んでいるのだろう、砂場には、プラスチックの寂しそうに熊手が忘れられている。ジャングルジムの傍まで来たセナが、足を止め、くるりと体を翻した。
「ねえ、アンタなの?店の人に怒られたんじゃないの?いいの?セナになんかして。また怒られるよ?うちの店長怖いよ?……観念しなよ」
アンタとは、店で暴れていた男の事だろう。
公園の名前が刻まれた石碑に身を隠していた影がゆっくりと動いた。セナの方へ向かうかと思われた影が、良そうに反して凌太へと向かってきた。
「お前が犯人か!!!」
「えぇ?!」
とびかかって来た男をよけきれず、凌太は土の地面に転がった。土とはいえ結構固いので、内臓が浮き上がるような不快感が込み上げてきた。
腹部にかなり重い圧を掛けられて、吐きそうになる。下から見上げると、髪の無い男の姿が公園の街灯の光で浮かび上がった。
「お前……っ店の……!」
「妙な客だと思っていたが……!お前がストーカーだったのか!お前のせいで!」
屈強な黒服の振り上げた腕が、凌太の頬に降ろされる。
痛みよりも衝撃が先にきた。
腕力にモノをいわせ、上から押さえつけられていて逃げられない。交戦しようと鞄で体をガードしながら花束ごと腕を振り回す。味気ない地面の上に、薄紫の花びらが不釣り合いにひらひらと舞い落ちていく。
いつもの焼肉屋とは逆方向に歩いて行くセナに、いくらなんでも店の目の前で声をかけるのは憚られた。
早く声を掛けたい気持ちを押さえ、少し離れたところで声をかけようと、距離をとってセナの後ろを歩いて付いて行くことにした。私服のセナを見るのはこれで二回目だが、店の中での着飾ったセナとは違う魅力に溢れている。
と、人影が怪しく揺れた。
セナと涼太のちょうど真ん中あたりにいつの間にかその人物は立っていた。一定の距離をとってセナの後ろをついて行っている。
凌太はピンと来た。ルカが言っていたストーカーはこいつのことだろう。
このままずっとついていくという判断もあったが、凌太はスマートフォンを取り出すと片手でセナにメッセージを送った。
あの一件以来セナに連絡を取るのは初めて事で少々緊張するが、今は緊急事態だ。
音はしなかったがバイブが鳴ったのだろう。
セナは歩くのを止める事無く、スマートフォンを取り出した。歩きながら文字を読んでいたセナの足が止まると、同じように影も動きを止めた。やっぱりストーカーだ。気づかれないように距離を取って、凌太は看板に身を隠した。
『驚かせてごめん。セナ君の後ろ、誰か付けてるみたい。その後ろに俺がいるから安心して』
『どういうこと?なんでりょーちんがいるの?』
セナの問いはもっともだが、ずっとそこで立ち止まってスマートフォンを操作し続けるのもおかしい。
『ストーカーの話、ルカくんに聞いてる。詳しい事は後で説明するから、今はストーカー捕まえようよ。協力するから』
『どうしたら良い?』
『近くに公園があった。そこに誘導しよう』
『分かった。わかんないけど任せる』
『大丈夫、俺がついてます』
スマートフォンの画面を明るくしたまま、セナが歩き出す。その後ろを影が再び追いかけはじめて、それをさらに凌太が追いかけた。
三人は寂し気な街灯が照らす、人気の無い公園に到着した。鉄棒、ブランコ、滑り台のついたジャングルジムがあるオーソドックスな公園だ。
昼間は子供が遊んでいるのだろう、砂場には、プラスチックの寂しそうに熊手が忘れられている。ジャングルジムの傍まで来たセナが、足を止め、くるりと体を翻した。
「ねえ、アンタなの?店の人に怒られたんじゃないの?いいの?セナになんかして。また怒られるよ?うちの店長怖いよ?……観念しなよ」
アンタとは、店で暴れていた男の事だろう。
公園の名前が刻まれた石碑に身を隠していた影がゆっくりと動いた。セナの方へ向かうかと思われた影が、良そうに反して凌太へと向かってきた。
「お前が犯人か!!!」
「えぇ?!」
とびかかって来た男をよけきれず、凌太は土の地面に転がった。土とはいえ結構固いので、内臓が浮き上がるような不快感が込み上げてきた。
腹部にかなり重い圧を掛けられて、吐きそうになる。下から見上げると、髪の無い男の姿が公園の街灯の光で浮かび上がった。
「お前……っ店の……!」
「妙な客だと思っていたが……!お前がストーカーだったのか!お前のせいで!」
屈強な黒服の振り上げた腕が、凌太の頬に降ろされる。
痛みよりも衝撃が先にきた。
腕力にモノをいわせ、上から押さえつけられていて逃げられない。交戦しようと鞄で体をガードしながら花束ごと腕を振り回す。味気ない地面の上に、薄紫の花びらが不釣り合いにひらひらと舞い落ちていく。
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