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落ちていく道筋3
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マクシミリアンと婚約するという事は、すなわち時期王妃である事を示す。彼には腹違いの弟が二人いるが、王妃の第一子であるマクシミリアンは実力を鑑みても時期国王と周知の事実である。
実際、近衛騎士団で一番の実力者と謳われるエドワードと並ぶ実力と、国外の権力者と渡り合える明晰な頭脳が彼には備わっていた。
それなのに驕ることなく優しいマクシミリアンは稀有であった。
私は王妃教育に入ってから、嫌というほど彼の優秀さを思い知った。
聖女教育を乗り越えた自分なら頑張れると楽観的に捉えていたが、なかなかどうして難しい。
聖女教育で行われたのは、精神の統一、神殿での所作、魔法の習得とコントロールが主だった。系統で言えば、体育会系、アスリート育成に近い。
しかし王妃教育は真逆だ。この国の歴史、他国の歴史と現在の情勢と関係。加えてパーティーで踊るためのダンス、食事での作法、帝王学、王族としての振る舞い、階級の制度など多岐にわたる。系統で言えば文科系、目指せ才色兼備である。
聖女として活動する間、周囲は私に必要以上の情報を与えなかったし、私自身周囲を気にする余裕もなかった。あったとしても、帰るつもりだったから、興味すら示さなかっただろう。
完全に許したわけではないが、ここで根をはると決めてから得た情報から、召喚について一概に彼らを責められないと感じた。
人間としてなら彼らは間違っているが、国を背負う人間としては正しい。荒れていく土地を、死んでいく民を。成す術もないまま、それでも抗いながら国を動かす事がどれほど大変だろう。
もしそこに希望の光があるのなら、民のために彼らは聖女を召喚をするしか無いのだ。
あれほどまでに聖女教育が苛烈だったのは焦りからだった。
隣国に責められ、魔物に国を蹂躙される。数十年に一度訪れる災厄に対策ができるとすれば、自らが戦う力をつけるしかない。
しかしどれだけ魔物を討伐しても降って湧いてきてしまう。戦死者や負傷者が増える中で、他国が国を襲ってくる。
加えて召喚は一定量の瘴気に満たされないと実行できない。
私が召喚された時には、この国は破滅に向かっていたのだ。
完全に納得したわけでは無い。けれど私は上に立つ者には責任が伴う事を知ってしまった。
聖女でいたなら、ただ困る人々を助けて正論で無情だと訴えられた。だが自身が王妃としたマクシミリアンの横に立つのなら、この決断を支えなければならないのだ。
情だけでは、愛や思いやりだけでは国は成り立たない。犠牲になるものに胸の奥底で謝罪しながら、それでも決断するしかない。
重い、重い地位だった。
それでも、マクシミリアンの仕事を見れば支えたいと感じた。他国の高官と堂々と渡り合う彼をみれば、隣に立ちたいと願った。
彼が背負う負担を少しでも軽くできるなら、王妃教育をがむしゃらに頑張ることができた。
疲れるとマーガレットが私の好きなお菓子を焼いてくれた。マクシミリアンが優しく抱きしめて撫でてくれた。
大変だけど、私の毎日は充実してあっと言う間に過ぎていった。
気がつけば4ヶ月が立ち、私の努力は少しずつ成果を見せていく。
このグレイヒに来て、これ程までに充実した毎日はない。己の意思で目標を掲げ、それを達成できれば喜びを感じられた。
誰かに必要とされる生活は寂しさを埋めていく。
けれどここまでが私の最良だった。
1人の少女の登場は、私の心に混乱と憎しみと絶望をもたらした。
――今なら言える。
私の想いは本物だった。
彼の、想いは、思い違いだった。
実際、近衛騎士団で一番の実力者と謳われるエドワードと並ぶ実力と、国外の権力者と渡り合える明晰な頭脳が彼には備わっていた。
それなのに驕ることなく優しいマクシミリアンは稀有であった。
私は王妃教育に入ってから、嫌というほど彼の優秀さを思い知った。
聖女教育を乗り越えた自分なら頑張れると楽観的に捉えていたが、なかなかどうして難しい。
聖女教育で行われたのは、精神の統一、神殿での所作、魔法の習得とコントロールが主だった。系統で言えば、体育会系、アスリート育成に近い。
しかし王妃教育は真逆だ。この国の歴史、他国の歴史と現在の情勢と関係。加えてパーティーで踊るためのダンス、食事での作法、帝王学、王族としての振る舞い、階級の制度など多岐にわたる。系統で言えば文科系、目指せ才色兼備である。
聖女として活動する間、周囲は私に必要以上の情報を与えなかったし、私自身周囲を気にする余裕もなかった。あったとしても、帰るつもりだったから、興味すら示さなかっただろう。
完全に許したわけではないが、ここで根をはると決めてから得た情報から、召喚について一概に彼らを責められないと感じた。
人間としてなら彼らは間違っているが、国を背負う人間としては正しい。荒れていく土地を、死んでいく民を。成す術もないまま、それでも抗いながら国を動かす事がどれほど大変だろう。
もしそこに希望の光があるのなら、民のために彼らは聖女を召喚をするしか無いのだ。
あれほどまでに聖女教育が苛烈だったのは焦りからだった。
隣国に責められ、魔物に国を蹂躙される。数十年に一度訪れる災厄に対策ができるとすれば、自らが戦う力をつけるしかない。
しかしどれだけ魔物を討伐しても降って湧いてきてしまう。戦死者や負傷者が増える中で、他国が国を襲ってくる。
加えて召喚は一定量の瘴気に満たされないと実行できない。
私が召喚された時には、この国は破滅に向かっていたのだ。
完全に納得したわけでは無い。けれど私は上に立つ者には責任が伴う事を知ってしまった。
聖女でいたなら、ただ困る人々を助けて正論で無情だと訴えられた。だが自身が王妃としたマクシミリアンの横に立つのなら、この決断を支えなければならないのだ。
情だけでは、愛や思いやりだけでは国は成り立たない。犠牲になるものに胸の奥底で謝罪しながら、それでも決断するしかない。
重い、重い地位だった。
それでも、マクシミリアンの仕事を見れば支えたいと感じた。他国の高官と堂々と渡り合う彼をみれば、隣に立ちたいと願った。
彼が背負う負担を少しでも軽くできるなら、王妃教育をがむしゃらに頑張ることができた。
疲れるとマーガレットが私の好きなお菓子を焼いてくれた。マクシミリアンが優しく抱きしめて撫でてくれた。
大変だけど、私の毎日は充実してあっと言う間に過ぎていった。
気がつけば4ヶ月が立ち、私の努力は少しずつ成果を見せていく。
このグレイヒに来て、これ程までに充実した毎日はない。己の意思で目標を掲げ、それを達成できれば喜びを感じられた。
誰かに必要とされる生活は寂しさを埋めていく。
けれどここまでが私の最良だった。
1人の少女の登場は、私の心に混乱と憎しみと絶望をもたらした。
――今なら言える。
私の想いは本物だった。
彼の、想いは、思い違いだった。
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