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番外編
リアムの誕生日 前※
しおりを挟む三章はストックができたら投稿を始めますが、開始までちょくちょく番外編を投稿します。リクエストがあればコメントくださると嬉しいです!
番外編一発目から申し訳ありませんがちょっといかがわしいです。
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俺は今、めちゃくちゃ張り切っている。
だって今日は一年に一度の特別な日。
(そう、リアムの誕生日!!)
誕生日プレゼントは君がいい(意訳)ということを言われたけど、さすがにはいそうですかじゃあそれだけでってなるほど俺の面は厚くない。
とは言っても短期間で準備できるものなんてたかがしれている。
すぐ用意できてそれでいて特別感のあるもの……と考えた時に思いついたのが、リアムが俺の誕生日にくれた例のイミテーションだ。
俺も、俺の魔力を込めたアクセサリーを贈れば広義の意味でお揃いになるしいいんじゃないか!?
そう決めて、この日に向けてお小遣いで何個かアクセサリーを買って闇魔法を込めたのだ。
治癒とか結界とかはできないけど、いざという時彼の身を守れるよう相手に睡眠魔法をかけられるようにしたり、闇魔法と風魔法を組み合わせて空間の重力を操れるようにしたり。とにかくできる限り入れてみた。
ただひとつ問題があるとすれば……。
(うーん、ぜーんぶリアムに似合いそう!)
胸元につけられるブローチ、服の下に忍ばせられるネックレス、邪魔にならなそうなアンクレット。
当日になってもどれをあげようか迷ってしまっている。もちろん全部あげていいんだけど、全部って重くないか? とちょっと思っちゃったのだ。
それに確かアンクレットやブレスレットを贈るって、束縛したいとか相手を自分のものにしたいとかそんな意味があったような気がして、二の足を踏んでいる。いや、リアムが気付かないならただのプレゼントなんだけどね。
ネックレスが無難かなあ。ネックレスもなんか色々意味があった気がするけど、しょうみ深読みしすぎである。ネックレスが首輪を意味するだなんて言われたらお洒落ができないじゃんか。うんうん、そうだよな。
選んだそれを包装用の箱に入れベッドの横に置いておく。これは今日、一日が終わる前に渡そう。
しばらくしてリアムが帰ってくる。みんなで夕食を囲んで、家族団欒の誕生日会を過ごした。
孤児院にいた時は誕生日会って言ってもシスターからお祝いの言葉をもらうくらいで……それでも十分嬉しかったけど! でも、人の誕生日を大体的に祝ったことなんて無かった。自分の誕生日の時も思ったけど、こういうあったかい誕生日会は昔の俺の記憶にはない。
自分が祝われる時は勿論嬉しかった。けど大事な人の生まれた日を祝うって、こんなに嬉しくて優しい気持ちになるんだな。
改めてガルシア伯爵家に引き取られた幸運を噛み締める。ストーリー上の設定だったとしても、俺には有り余るくらいの幸せだ。
よしっ。あとは義兄と寝る時にプレゼントを渡すだけだ。俺まで楽しみになってきた! リアム、喜んでくれるかなあ。
(……って、思ってたはずなんだけど)
狭い空間で義兄に背後から抱きしめられている。お互い服は着ていない。
……なぜならここは、風呂だから!
俺がリアムと一緒に風呂に入ったのは例の一件だけで、それからはずっと一人で入っていた。当たり前だ。誘われても、申し訳ないが恥ずかしすぎて逃げていた。
だが今日はどうもお誕生日様の圧に負けてしまい、この有様である。
たしかに毎日リアムに抱きつきながら寝てるけど、寝る時にくっついてるのと湯船でくっついてるのってだいぶ話が違うと思うんだよなあ!
「シャノン?」
しーんとしている俺を不思議に思った様子のリアムが少しみじろぎして話しかけてくる。
素肌と素肌が擦れ合う感覚がして肩に力が入った。明らかに過剰反応な自覚はあるけど、本当に本当に本当に恥ずかしい! 今の俺はきっと頭から爪先まで真っ赤だ!
せめて変な声が出ないよう唇を噛む。
それをどう捉えたのか義兄は一度腰を浮かせ、なんと俺と向かい合う姿勢を取る。
……目の! やり場が! ない!!!
視線の逃げ場を失いあからさまに動揺してしまう。心臓はバクバクだし、視界には肌色が広がってるし、なんかいい匂いするし!!
あ、なんか目回りそう!
「ふ、ふふ、シャノン。こうも意識されると俺が嬉しくなってしまうだけだ」
「あう、うう……」
「……ドキドキしてる? 君だけじゃない。俺も」
もはや今この場でのぼせさせてくださいと祈る勢いの俺をみてリアムが薄く笑えば、俺の心臓の位置に手を置いた。
勢いよく脈打つ心臓のはやさが目の前の人に、手を通して伝わる。
更に俺の手をそっと取って、今度はリアムの胸に当てられた。
(あ、り、リアムもめちゃくちゃ脈早い……)
なんでもそつなくこなして、あんまり表情を崩さなくて、いつも一枚も二枚も上をいくこの人が俺に対してドキドキしているという事実に、殊更心臓が鳴る。
その時不意に彼の指先が胸の頂を掠った。
「んッ、」
……え!? おい待て、なんだ今の声!
今まで感じたことのないタイプの感覚を得たと同時に自分の口から甘えた声が漏れた。
それが信じられなくて、バッと口を塞ぐ。
「…………。シャノン」
「は、はははいっなんでしょうか!? あ、なんかちょっと熱いからもうあがろうかなぁ~? っ、んぅ」
リアムがなんだかちょっと怖い顔でつぶやく。嫌な予感がして戦略的撤退を練るも、直後に手首を取られ唇を塞がれて言葉が彼の口内に呑み込まれる。
「はっ、ん、んん……。あに、うえ」
「シャノンっ、ふ、シャノン……」
噛み付くようなキスに、食べられる、と思う。
リアムの舌に翻弄され酸素を求めるのがやっとだ。もう何度もこの人とキスしてるから、俺の好きなところはとっくに知られている。上顎をくすぐるように舌先で撫でられると思考回路がぐちゃぐちゃになった。
「……シャノン、誰にもここを触らせないと約束してくれ」
「さわっ……触らせませんよこんなとこ!!」
自分で触ったこともないよ!!
腹の上側を義兄の指が滑る。それだけでちょっと足先に快感が走って、え、俺ちょっとやばくない? と戦慄した。
「すまない、気が急いだ。抱きしめても?」
「…………いいですよ」
頷いたものの、思わず視線が落ちる。さっきからリアムのその……あの、リアムが緩やかに主張しているのだ。
(これ……これ、抜くの手伝った方がいいやつ? でもそれ俺から言うの、ビッチっぽいよな!? どうしたらいい?! 誰か!! 有識者!!!)
ひとりでパニックになってる間にリアムは俺を優しく抱きしめて、そのあと何事もなくあっさりと風呂を出る。
残された俺はしばらく呆然と何もない空間を見つめるはめになった。
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