13 / 53
一章
修正パッチ配布して欲しい
しおりを挟む本当に本当にいかがわしくないですが、肌色が比較的多いので一応ワンクッション置きます。よろしくお願いします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いくぞ、いくぞいくぞ! 俺!
勢いよく扉を開け、半ばやけくそで「兄上! お背中お流しします!」と叫んだ。
リアムは俺がもたもた服を脱いでいる間にさっさと髪を洗っていたらしく、いつもゆるく三つ編みにしている髪は解かれ、水に濡れて彼の肌に張り付いていた。
「俺より先に君の髪を洗おう。おいで」
額にかかる前髪をかきあげて手招きしてくる義兄の色気の暴力がすごい。倒錯的な気分になってくる。
俺、大丈夫だろうか。おかしな性癖に目覚めたりしないだろうか。
「し、失礼します……」
おずおずとリアムの前の椅子に座る。俺の素肌にリアムの手が触れて、思わず飛び上がりそうになった。
これは、ダメでは!? いけないことをしている気持ちになるんだが!?
変に意識しまくりで心臓がバクバクの俺とは裏腹に、リアムは優しい手つきで髪を濡らしていく。
「前から思っていたが、シャノンの髪はサラサラだな。色も綺麗だ」
「そっ、そうですか? ちょっとくすんでるけど、おっ……僕はこの色好きなので嬉しいです! 兄上の髪色ともちょっとだけ系統同じかなーって……」
「……そうだな、俺も好きだ」
髪色が!!
髪色がね!!! 好みって意味ね!!!!
やけに言葉の裏側が気になり少女漫画のヒロインの気持ちになってしまっている。完全に頭にフィルターがかかっている。
落ち着け、俺は義弟、相手は義兄。しかも俺は元々ざまぁ漫画の悪役のスペックがある男だ。
俺の結末を思い出してからもうすぐ一年。
それからまあまあ緊張して生きていたから、やたら近い距離で美形に甘やかされてちょっと夢見ちゃってるわけだ。
「シャノン?」
「はいっ!!! なっ、なん、なんでしょう!?」
「いや、暫く黙っていたからどうかしたかと……。大丈夫か?」
「はい! 大丈夫です!! 元気です!! かっ、身体は自分で洗いますね!」
でかい声を出してがばりと立ち上がり、義兄の背後に回り込んで背を向けた。
素数を数えながら爆速で身体を洗う。
もうお湯つからずに出ようかな……と思っていたところでリアムに名前を呼ばれたので、振り向く。
「……背中を洗ってくれるんじゃなかったのか?」
手を取られながらそんなことを言われ、身体が一気に熱くなった。
ねえ! なんか! 意地悪じゃない!?
表情が読みにくい彼の顔からは何の意図でこの言葉を発したのか汲み取れず、もうこの罰ゲームをさっさと終わらせようと小さく頷く。
泡をもこもこに立ち上げた後椅子に座ったリアムに向き直り、背中に触れた。
あー、なんか……。
リアムって精悍というよりは美形だし、小さい頃はそこらの女の子より美人だったろうな~っていう感じだけど、こうやってみると男性的な体つきだ。
思わず俺のほっそい腕とか一ミリも割れてないお腹を見る。いや、俺の成長期はここからだし。
背を洗っていると、何だか逆に動悸がおさまってた。人の背中を流すというのは精神統一作業なのかもしれない。
「兄上、くすぐったくないですか? ……お湯かけますね」
「大丈夫だ。……シャノンの手は小さ……あ、いや、悪い意味じゃない。すまない」
若干慌てた声色になるリアムに口元が緩み笑みが零れた。
お湯を流し、「終わりましたよ」と伝え……ようとして、足裏にぬるりとした感触が伝わる。
「あ」
「シャノン!」
石鹸のぬめりで足が滑ったらしい。
そう理解した時には滑った足は宙を蹴っていて、え、これ頭から転ぶ? と冷静に思った。
来るべき衝撃に備えてぎゅっと目をつむる。
……が、感じると思った痛みの代わりに全身に人肌を感じた。
「……あれ?」
「大丈夫か!?」
おそるおそる目を開けると、視界にリアムの顔がドアップで映る。
どうやら反射的にリアムが抱きとめてくれたようだ……と状況を把握するが、ぎゅうと抱きしめられた全身に伝わる義兄の肌の感覚にみるみるうちに頭が沸騰して、まともな言葉を発せなくなった。
「危なかった。怪我はないかシャノ……シャノン?」
先程の比でないくらい心臓が誤作動を起こしている。引くくらい顔が赤くなっているのが自分でもよくわかる。
心配してくれているリアムには申し訳ないがもはや泣きそうになっている俺は元気なお返事などできず、頷くので精一杯だった。
リアムもそんな俺を見て驚いているようで、小さく目を見張っていた。
そうだよあ~! 急に兄に対してこんな……こんな真っ赤になる義弟、普通におかしいよな~!!!
メンタルに深刻なバグが起きている俺はとりあえず湯船は諦めると決めた。そして、「念のため怪我をみてもらいます」となんとか告げてその場を後にした。
135
お気に入りに追加
4,783
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる