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一章
世のブラコンの気持ちがちょっとずつ分かってくる
しおりを挟む「ああ、別に構わない」
「ん?」
「ん?」
この状況でリアムが帰ってくるのはまあまあ気まずかったけど、実際帰ってくると嬉しいが爆発して超特急で抱きつきに行ってしまった。
リアムが学園に行ってしまって寂しいのも帰ってきて嬉しいのも本当だけど、俺は赤ちゃん返りでもしてしまっているのだろうか。俺は俺のことが分からない。
義兄の背中にひっつき喉をゴロゴロ鳴らしていると、一緒に寝たい云々の件をアリアがリアムに伝えてしまった。
何で言うんだよ! 黙ってたらバレないだろ! という思いを込めてアリアを見ているとサムズアップされた。その良い仕事したみたいな顔は何なの!
俺はいくら周りから見たら子どもの範疇とはいえ、そろそろ十三になる立派な少年なのだが!?
リアムもさすがに「それはちょっと……」になると思っていたのに、間髪入れず快諾してしまった。
「え? 兄上? え~、え~とぉ……」
「シャノンがそこまで寂しがっているのに、気づかなくてすまない。俺も普段ひとりで風呂に入っているから、使用人の世話は必要としない。大丈夫だ。シャノンは使用人に風呂の世話をされるのが嫌なのだろう? 俺は使用人ではない」
いつになく饒舌に話すリアムに口を挟めない。だから任せろとでも言いたいのだろうか。どんな超絶理論だ。
というか、義兄はなぜこんなにノリノリなんだ。もし俺が可愛がっている弟に「一緒にお風呂入ろ?」なんて言われたら断る……こと……いやぁ~、いいよ!! って言っちゃうなぁ~!!!
ああ~!! 俺が可愛い義弟なばっかりに!!!!
「俺はシャノンと仲良くなりたいと思っているから、甘えてくれて嬉しい。では、また風呂の時間に」
リアムは不意に目を細め、口角を小さく釣り上げた。
「無」がデフォである義兄のちょっと意味ありげな笑みにどきりと心臓が跳ねる。
――主人公格美形の不意打ち笑顔、心臓に悪っ!
俺の髪をすくように撫でるリアムの手の熱に、なんだかドキドキがおさまらなくなってしまい顔が上げられない。
……リアム、ヤバいな。学園中の女の子のハートを根こそぎ盗んでそうだ。
そして処刑の時間になった。
一時は「義弟(俺)が可愛いのが悪いから甘んじて受け入れよう……なんか俺が言い出したみたいになってるし……リアム喜んでるし……」と思っていたけど、いざ一緒に入るとなると「やっぱやめない?」という気持ちが優勢になってきた。
寝るのもひとりでいい。寂しいし怖いが、今は恥ずかしさが勝っている。
「どうした? 服を着たままでは風呂に入れないぞ」
「わっ、わかってますよぉ! うう……そんな勢いよく脱がないでくださいぃ……」
「ん?」
どことなく意地悪な義兄の声色にカッと顔が熱くなった。
このままではもはやリアムに脱がされる未来もありそうだと思った俺は、半泣きになりながらシャツのボタンに手をかける。
「あ、兄上はなんでそんなに普通なんですか……。たしかに兄上が学園に行ってしまって寂しかったですけど、だからといって、一緒にお風呂……僕はっ、は、恥ずかしいです!」
言葉にすると余計恥ずかしくなってきたので、メソりながら地面を見つめぷちぷちとボタンを外す。
「…………かっ、ぐっ……」
「家具?」
「……なんでもない。俺は先に入るから、ゆっくりおいで」
顔は動かさず視線だけをリアムに向けると、義兄は顔を手で覆い天を仰いでいた。
いつのまに服を脱いだのか、タオルを腰に巻いた状態で先に風呂場に入ってしまった。
……ここまできたらもう腹を括ろう。俺はなぜか義兄に甘えたい欲が抑えられない。リアムはリアムで俺に構うのは楽しそう。ウィンウィンだ。
よし、もうこれでもかというほど甘えて兄弟仲を深めよう。俺、恥は捨てろ!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ウキウキで書きすぎて入浴までいきませんでした。ここまで引っ張るつもりはなかったのですが、次回こそ進みます。
いかがわしいことは全然ない(多分)ですが肌色が多いのでちょっと注意です。
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