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本編
理想の俺(巨体・厳つい・サングラス)「うるせーよばーか!」
しおりを挟む俺、春夏秋冬 蛍(ひととせ ほたる)は非常に、ひっじょ~に! 怒っていた。
二十四時前、そう、良い子はもう寝ている時間である。
俺は良い子なので二時間前にはすでにベッドに入っている。
『右右右右! 来てる来てる来てる! よっしゃナイス~っ!』
『この時間やっぱさー、強い人多いよね。いやー楽し……あっやべ……ああー! あ!』
軽快な男の声が壁の向こうから聞こえてくる。ゲーム音は聞こえないけど、話している内容から十中八九ゲーム実況だと分かる。
こいつは多分、俺の部屋側にパソコンを配置しているのだろう。
(寝れねぇ~~~~~~~!!!!!)
「はあ、そんで、一ヶ月前に隣に越してきた推定配信者の声が毎晩毎晩聞こえてきて、寝れぬ夜を過ごしていると」
「そーなんだよっ! 俺の住んでるアパート、今まで騒音に困ったこととかなかったからさあー……。まさかこんなに壁薄いなんて思ってなくて」
耐えること一ヶ月、ついに俺は同じ大学に通う友人である、桐谷の家に押しかけた。
魂胆は単純だ。泊めて欲しい。
「え、だってそれさ……言えば良くね? うるさいって……」
「ばっかお前それで怖いにーちゃんとか出てきたらどうするんだよ!」
「し、小心者……」
そう、そうなんだ。俺だってうるせーよばーかとか言えたらそれが一番良いのは分かっている。
うちの大家はすんごいテキトーな人なので多分まともに掛け合ってくれないし、お隣さんに直接言うしかない。
それで隣のチャイムを鳴らしてなんかすごい……カラフルな頭にピアスジャラジャラのお兄さんとか出てきたら俺はビビりまくって無言になる自信がある!!
おそらく対人ゲームの、その配信なんてやってる人間は陽キャに決まっている!!!
「それにさぁお隣さん、二十四時にはいつも静かになるんだよね……。俺いつも二十二時にはベッド入ってるからいつもの時間に寝れなくてこうなってるけど、よく考えたら二十四時ならまあ……遅くはないし……。……でも、俺は、つらい!!!」
「ああ~そういえば蛍、健康優良児だもんな。朝すんごい早いし……。おじいちゃんだもんなあ」
「悪口か?」
夜は眠くなっちゃうからバイトも閉店が早いところを選んでいる。
俺がもしいつも二十五時とかに寝てる人なら多少隣がうるさくても気にならなかったかもしれない。睡眠には問題ないし。
ていうか世の大学生は多分みんな普通に二十四時は起きている。それを自覚しているから言いづらいというのもある。
「でもさぁ、配信とかすんなら防音して欲しいよなぁ!? 俺、悪くないよな!?」
「うんうん悪くないよぉ~蛍ちゃん、かわいそうだねぇ~。普通に苦情言えばいいのに言えないビビりなとこもかわいいねえ~」
「だよなあ!? お前が俺を馬鹿にしてることは水に流すから今夜泊めてくれない!? 久しぶりに快眠したいんだよ!!」
桐谷が慈愛に満ちた目で俺を見てくることにイラっとするが今は今日の宿を探すことが先である。
「……あ~それなんだけどさ」
「あれっ、誰か来てるの?」
唐突にガチャッと音がして桐谷の家のドアが開く。
反射で扉を見ると、胸あたりまで伸びた髪の毛を器用に巻いている可愛らしい女の子がそこに立っていた。
「え?」
「この通り彼女がよくうちに来るから、今までみたいにその日来てその日泊めるとかができなくなるかな~って」
「え? え? 待てお前彼女っ、えっいつ? え? おま、俺があまりにも恋人いなくて可哀想だからしばらく作んないとか言っ、は?」
「伊吹、このかわいい子誰!? あっはじめましてっ、桐谷の彼女の雫です!」
「あーあーあーややこしくなっちゃったあ~」
桐谷がへらへら笑っているのにムカつき、今度はちゃんとデコピンをかましてやった。
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