7 / 16
推定乙女ゲームの世界に転生した、気がする
7
しおりを挟む乙女ゲームの世界なのでは? と思いながら過ごしていると目につくものが全て怪しく思えてきてしまう。
一昨日に至ってはなんと生徒会に入らないかと宰相の息子から声をかけられた。
忙しいのは本当らしく、先日の猫の手も借りたい発言は俺が入るって言ってくれないかな? という期待を込めていたらしい。
もちろん断ったけど、なんだか諦めていないっぽい。
俺は将来の権力者たちの人脈を求めにこの学園に通っているわけじゃないし師匠と修行以外のことに時間を取られるなんて正直ごめんだ!
というか、これがまさか『強制力』とかいうやつなのか? 俺が生徒会に入って攻略対象者(仮)達とよろしくやるように空気が動いていないだろうか。
そんなことを考え周囲の全てを訝しんでいるとまともに睡眠も取れず、言いようのない不安に襲われ続けもう三日も経つ。
寝れないので仕方なく魔法のことを考えながら夜を明かす日々を過ごしていたが、成長期の身体に睡眠不足はかなりダイレクトに影響し、今日ついに階段から足を踏み外して思いっきり転がり落ちてしまった。
「君、すごい石頭なんだね。あの高さから落ちてケロッとしてるの、普通無理だよ」
……思いっきり転がり落ちたわりには全く怪我がなく自分でも驚いている。
養護教諭の先生もそうらしく、興味深そうに俺の頭を触診していた。触っても硬いだけだと思う。
「まあ、診たところ頭の怪我はちょっとたんこぶがあるくらいかな。ナカも確認したけど多分大丈夫だよ。膝と腕も擦り傷くらい。それより……」
テキパキと怪我の該当箇所に消毒やら薬やらをつけてくれる手際を眺めていたら、不意に先生と顔が近づき目の下に指を添えられる。
中性的な美貌が目の前に迫り、思わずどきりとして身体が固まった。
「あぁほら、全然寝てないでしょ。こんな寝不足ですって顔で歩いてたらそりゃあ怪我するよ。何悩んでるのか私には分からないけど、睡眠だけはちゃんと取りなね」
どうやら先生は俺の目の下のうっすらとした隈をめざとく見つけたらしい。下瞼を引っ張られたり隈をみたりした後、身体を離しそんなことを言われた。
「……先生は」
「ん?」
「先生は、強制……いや、なんというか……。えっと、今後の人生の展開が既に決められたものだとしたら、どうしますか?」
ここが乙女ゲームの世界だとして、俺はその世界に踊らされているのかもしれないという妄想は想像以上に俺のメンタルにきていた。
俺の人生なのに、勝手に操られているのかもしれないという感覚が気持ち悪くてそれが拭いきれないのだ。
先生は「この子何言ってるんだろう?」という表情を隠しもせず俺をみていたが、不意に表情を柔らげ視線を向ける。
「まぁ、そうだね。その展開を自分も知ってるなら、そこに絶対起きないようなことをするかな」
「起きないようなこと?」
「うん。癪じゃないか、自分の人生が縛られてるなんて。相手の裏をかくことは戦闘の基本だろう?」
悪戯っぽく目を細めた先生の言葉はすとんと俺の中に入ってきた。
起きないような展開……。そうだ、俺は意志を持ってるひとりの人間なんだから、乙女ゲームっぽくない行動をとればいいんだ!
「先生っ、ありがとうございます!!!」
「うん、どういたしまして? 元気だね、君」
そうと決まればうじうじしていられない。
先生に頭を下げてそのまま学園を早退すると、師匠にメッセージを送るのも忘れて家に転移した。
16
お気に入りに追加
701
あなたにおすすめの小説
兄さん、僕貴方にだけSubになるDomなんです!
かぎのえみずる
BL
双子の兄を持つ章吾は、大人顔負けのDomとして生まれてきたはずなのに、兄にだけはSubになってしまう性質で。
幼少期に分かって以来兄を避けていたが、二十歳を超える頃、再会し二人の歯車がまた巡る
Dom/Subユニバースボーイズラブです。
初めてDom/Subユニバース書いてみたので違和感あっても気にしないでください。
Dom/Subユニバースの用語説明なしです。
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
召喚されない神子と不機嫌な騎士
拓海のり
BL
気が付いたら異世界で、エルヴェという少年の身体に入っていたオレ。
神殿の神官見習いの身分はなかなかにハードだし、オレ付きの筈の護衛は素っ気ないけれど、チート能力で乗り切れるのか? ご都合主義、よくある話、軽めのゆるゆる設定です。なんちゃってファンタジー。他サイト様にも投稿しています。
男性だけの世界です。男性妊娠の表現があります。
眠れぬ夜の召喚先は王子のベッドの中でした……抱き枕の俺は、今日も彼に愛されてます。
櫻坂 真紀
BL
眠れぬ夜、突然眩しい光に吸い込まれた俺。
次に目を開けたら、そこは誰かのベッドの上で……っていうか、男の腕の中!?
俺を抱き締めていた彼は、この国の王子だと名乗る。
そんな彼の願いは……俺に、夜の相手をして欲しい、というもので──?
【全10話で完結です。R18のお話には※を付けてます。】
【R18】うさぎのオメガは銀狼のアルファの腕の中
夕日(夕日凪)
BL
レイラ・ハーネスは、しがないうさぎ獣人のオメガである。
ある日レイラが経営している花屋に気高き狼獣人の侯爵、そしてアルファであるリオネルが現れて……。
「毎日、花を届けて欲しいのだが」
そんな一言からはじまる、溺愛に満ちた恋のお話。
【完結/R18】俺が不幸なのは陛下の溺愛が過ぎるせいです?
柚鷹けせら
BL
気付いた時には皆から嫌われて独りぼっちになっていた。
弟に突き飛ばされて死んだ、――と思った次の瞬間、俺は何故か陛下と呼ばれる男に抱き締められていた。
「ようやく戻って来たな」と満足そうな陛下。
いや、でも待って欲しい。……俺は誰だ??
受けを溺愛するストーカー気質な攻めと、記憶が繋がっていない受けの、えっちが世界を救う短編です(全四回)。
※特に内容は無いので頭を空っぽにして読んで頂ければ幸いです。
※連載中作品のえちぃシーンを書く練習でした。その供養です。完結済み。
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
騎士団長である侯爵令息は年下の公爵令息に辺境の地で溺愛される
Matcha45
BL
第5王子の求婚を断ってしまった私は、密命という名の左遷で辺境の地へと飛ばされてしまう。部下のユリウスだけが、私についてきてくれるが、一緒にいるうちに何だか甘い雰囲気になって来て?!
※にはR-18の内容が含まれています。
※この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる