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青の季節 第2章―確信ー
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とある昼下がり 綾夏は病室の小さなテーブルでりんごをむいていた。
「なぁ綾夏 父さんと母さん 死んでから十何年たったんだっけ?」
…なんてシミジミつぶやいてみた。
「ん?そっか… お父さんとお母さん死んじゃったの?残念だったね…」
(え……?)
ポカンとしてしまった。
「何言ってんだよ…父さんと母さんは10年以上前に死んでるだろ?」
「…あれ?そうだっけ?はは…ごめん忘れちゃって…」
苦笑いをして、綾夏はコツンと自分の頭をたたいた。
(もしかして…)
思いたくなかったよ
でも思わずにはいられなかったんだ
ボクは次の日 自分が入院中にも関わらず キミを別の病院に連れて行った
「立花さん 診察室へお入りください」
尚緒はここで待つようにと言って診察室に入った。
「診断の結果ですね ショックによる記憶の混乱でしょう
よくあることなんですよ 数日もすれば良くなるでしょう」
「混乱ですか?」
「ええ ショックを大きく受けるとなる事があるんですよ 心配しなくていいでしょう」
ボクはその時安心したんだ
だって キミにもしもの事があったら
父さんと母さんに何て言っていいのか分からなかったから…
その日は何も知らずにボクはキミと病院に戻って行ったんだ
1週間後 ボクは再び診察室で受診を受けていた
「…え?…」
「肺に転移していてね…」
レントゲンを見つめながら医師は言った。
”転移” ――――――――肺への”転移”
「再発…ですか…」
どうすればいいのか 分からなかった
悩んでも 悩んでも そう答えがでてこなかったから
これが引きがねになり 状況が悪化したのも事実
ドアを開けた。
たくさん並んだ、同じような白いドアのたった一つを。
「尚緒兄ぃ?」
肩をすくめる尚緒をじっと見つめていた。
―――――――…
「うそ…転移…してたの…?」
ボーゼンと問い返す綾夏に尚緒はハッキリと言った。
「ああ」
「どうして!?なんで尚緒兄ぃばかりが……っ!!」
―――――思わず声を荒げてしまった。
「……っ!!」
尚緒は抱きしめた。
「泣くな!!オレは父さんと母さんみたいに お前を置いて逝ったりしないっ!!
だからもう泣くな!!」
グチャグチャになった綾夏のココロを落ちつかせようとした。
「尚緒兄ぃ…っ」
それからというもの――――――
キミの看護のおかげか 久々に我家を見ることが出来たんだ
半年ぶりだったのかな
社会復帰した そんなある日だったんだ……
「ただいまー」
「おかえりなさい 尚緒兄ぃ」
リビングから綾夏の声
「……」
2行分の沈黙。
その後で――――――
「何…やってるんだ…?」
ボクに衝撃が走った
「え?見て分かるでしょー?」
理解が出来なかった だって それは……
「きれいでしょう?お花を飾って少しでも華やかに見せようと思って」
ボクは目を疑った
キミがきれいだと言って そこに添えてたのは
”花”ではなかったから
言葉を失わずにいられなかったんだ
キミはいつもと変わらない笑顔で”石”を花と言って笑ってたから
「……」
何も言葉が出なかった ただよぎる言葉はひとつだけ
その日の夕食 2人はいつもどうりにテーブルを囲んでいた。
「綾夏…どうした?」
尚緒は綾夏の手に目をとめた。
「え…?」
ドキン……胸が波打つ。
「あ… いいの いいの!尚緒兄ぃ 食べて!ごはん食べて」
ボクは この時
確信したんだ もう すぐ側にせまっているモノを確かに感じていたんだ
そう綾夏は箸がうまくにぎれずにガチャガチャと音をたてていた。
「へへ…どうしちゃったんだろう… おかしいね」
苦笑いをするばかり。
ただただみつめるしかできなかったんだ
to next→
「なぁ綾夏 父さんと母さん 死んでから十何年たったんだっけ?」
…なんてシミジミつぶやいてみた。
「ん?そっか… お父さんとお母さん死んじゃったの?残念だったね…」
(え……?)
ポカンとしてしまった。
「何言ってんだよ…父さんと母さんは10年以上前に死んでるだろ?」
「…あれ?そうだっけ?はは…ごめん忘れちゃって…」
苦笑いをして、綾夏はコツンと自分の頭をたたいた。
(もしかして…)
思いたくなかったよ
でも思わずにはいられなかったんだ
ボクは次の日 自分が入院中にも関わらず キミを別の病院に連れて行った
「立花さん 診察室へお入りください」
尚緒はここで待つようにと言って診察室に入った。
「診断の結果ですね ショックによる記憶の混乱でしょう
よくあることなんですよ 数日もすれば良くなるでしょう」
「混乱ですか?」
「ええ ショックを大きく受けるとなる事があるんですよ 心配しなくていいでしょう」
ボクはその時安心したんだ
だって キミにもしもの事があったら
父さんと母さんに何て言っていいのか分からなかったから…
その日は何も知らずにボクはキミと病院に戻って行ったんだ
1週間後 ボクは再び診察室で受診を受けていた
「…え?…」
「肺に転移していてね…」
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「再発…ですか…」
どうすればいいのか 分からなかった
悩んでも 悩んでも そう答えがでてこなかったから
これが引きがねになり 状況が悪化したのも事実
ドアを開けた。
たくさん並んだ、同じような白いドアのたった一つを。
「尚緒兄ぃ?」
肩をすくめる尚緒をじっと見つめていた。
―――――――…
「うそ…転移…してたの…?」
ボーゼンと問い返す綾夏に尚緒はハッキリと言った。
「ああ」
「どうして!?なんで尚緒兄ぃばかりが……っ!!」
―――――思わず声を荒げてしまった。
「……っ!!」
尚緒は抱きしめた。
「泣くな!!オレは父さんと母さんみたいに お前を置いて逝ったりしないっ!!
だからもう泣くな!!」
グチャグチャになった綾夏のココロを落ちつかせようとした。
「尚緒兄ぃ…っ」
それからというもの――――――
キミの看護のおかげか 久々に我家を見ることが出来たんだ
半年ぶりだったのかな
社会復帰した そんなある日だったんだ……
「ただいまー」
「おかえりなさい 尚緒兄ぃ」
リビングから綾夏の声
「……」
2行分の沈黙。
その後で――――――
「何…やってるんだ…?」
ボクに衝撃が走った
「え?見て分かるでしょー?」
理解が出来なかった だって それは……
「きれいでしょう?お花を飾って少しでも華やかに見せようと思って」
ボクは目を疑った
キミがきれいだと言って そこに添えてたのは
”花”ではなかったから
言葉を失わずにいられなかったんだ
キミはいつもと変わらない笑顔で”石”を花と言って笑ってたから
「……」
何も言葉が出なかった ただよぎる言葉はひとつだけ
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「綾夏…どうした?」
尚緒は綾夏の手に目をとめた。
「え…?」
ドキン……胸が波打つ。
「あ… いいの いいの!尚緒兄ぃ 食べて!ごはん食べて」
ボクは この時
確信したんだ もう すぐ側にせまっているモノを確かに感じていたんだ
そう綾夏は箸がうまくにぎれずにガチャガチャと音をたてていた。
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