8 / 32
第1章:闘う民と笑わない貴族
8, 信頼
しおりを挟む
「スザンナ。」
町を出る前にフェレスに挨拶をしようと思って学舎の門の前で待っていたら、フェレスが馬車に乗って出てきた。そして私に気づいて声をかけてくれた。
「フェレス。」
「どうしたんだ。」
「うん。もうここを発とうと思って。」
「……そうか。」
フェレスは馬車の上から私を見下ろして目を細めた。
「フェレス。また会えたらいいなっ。」
「あぁ。」
「じゃ、またなっ。」
手を振ろうとした時だった。その手がさっと掬い取られた。
「スザンナ。」
「うん?」
「お前は本当にいつも笑顔だな。」
「あはは。そうか?よく言われる。」
「いつまで旅を続けるんだ?」
「うーん。あと一ヵ月半かな。そしたら、アルブに帰るよ。」
「一ヵ月後。」
「うん?」
「俺は都に行く。」
「うん。」
「その時、お前、俺の護衛をしてくれないか。」
フェレスの目の色は、不思議なエメラルドグリーンだった。その目に吸い込まれそうだ。
「護衛?」
「あぁ……信用できる者を側におきたい。旅の間だけでいい。」
「今の護衛は信用をおけないのか?」
「おいている。だけど、その旅の時だけは、いつもとは違う者なんだ。」
「……へー。」
護衛に随分こだわるんだな、そう思った。
「何処から?」
「ブロイニュから。」
「見返りは?」
「十分。」
「……いいよ。」
微笑んで頷いた。フェレスは無表情のままありがとうと言った。
「じゃあ、一ヶ月後、ブロイニュのポルヴィマーゴの塔の下で会おう。」
「うん。」
了承した。
「じゃあな。」
「うん。フェレス。」
フェレスは私の手を離して馬車を前に走らせた。フェレスが掴んでいた自分の指が妙に温かい。嬉しくて、一人、微笑んでしまった。フェレスが自分に信用をおいていると言ってくれた事が、すごく嬉しかったんだ。
町を出る前にフェレスに挨拶をしようと思って学舎の門の前で待っていたら、フェレスが馬車に乗って出てきた。そして私に気づいて声をかけてくれた。
「フェレス。」
「どうしたんだ。」
「うん。もうここを発とうと思って。」
「……そうか。」
フェレスは馬車の上から私を見下ろして目を細めた。
「フェレス。また会えたらいいなっ。」
「あぁ。」
「じゃ、またなっ。」
手を振ろうとした時だった。その手がさっと掬い取られた。
「スザンナ。」
「うん?」
「お前は本当にいつも笑顔だな。」
「あはは。そうか?よく言われる。」
「いつまで旅を続けるんだ?」
「うーん。あと一ヵ月半かな。そしたら、アルブに帰るよ。」
「一ヵ月後。」
「うん?」
「俺は都に行く。」
「うん。」
「その時、お前、俺の護衛をしてくれないか。」
フェレスの目の色は、不思議なエメラルドグリーンだった。その目に吸い込まれそうだ。
「護衛?」
「あぁ……信用できる者を側におきたい。旅の間だけでいい。」
「今の護衛は信用をおけないのか?」
「おいている。だけど、その旅の時だけは、いつもとは違う者なんだ。」
「……へー。」
護衛に随分こだわるんだな、そう思った。
「何処から?」
「ブロイニュから。」
「見返りは?」
「十分。」
「……いいよ。」
微笑んで頷いた。フェレスは無表情のままありがとうと言った。
「じゃあ、一ヶ月後、ブロイニュのポルヴィマーゴの塔の下で会おう。」
「うん。」
了承した。
「じゃあな。」
「うん。フェレス。」
フェレスは私の手を離して馬車を前に走らせた。フェレスが掴んでいた自分の指が妙に温かい。嬉しくて、一人、微笑んでしまった。フェレスが自分に信用をおいていると言ってくれた事が、すごく嬉しかったんだ。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる