七不思議たちは餓死寸前

雪代

文字の大きさ
上 下
5 / 8

その4 教室の怪異

しおりを挟む
「4年4組。僕の隣の隣のクラスだよ」
 がらがらと扉を開けるのを、教室の怪異はほくそ笑みながら待っていた。
『ふっ……来たな。私の怪異は七不思議の中で最もきょうあ』
「えっとね、ここの前から4番目、扉から4番目の席で校歌の4番を歌うと死ぬんだ」
 良寛がホワイトボードの上にある校歌の歌詞が書かれた額縁を指差す。
「ふーん。私メロディーとか知らないけど」
「適当でいいよ、適当で。えーと」
 少し音程の外れた良寛の歌に、もごもごと薫子が合わせる。
 あっという間に終わって、教室には元の静寂が戻った。
「……死なないけど」
「……死なないね」
 辺りを見回す二人の真ん前で、教室の怪異は膝をついていた。
『お、おいどうした、教室の怪異!』
『だめだ……私にはできない』
 涙を流しながら仲間達を見上げる。
『そもそも私の怪異は、子どもの魂をひとり占めするものなんだ。この状況で……皆が飢え死にしそうなこの状況で、そんな残酷なこと、私には……できないっ……!!』
『教室の怪異……!!』
 抱きしめ合いながら友情に浸る怪異を知りもせず蹴り上げて、良寛は言う。
「まあ、人間誰しもいつかはひとり孤独に死ぬものさ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。

あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。 その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。

処理中です...