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Ω先輩の章
食堂でひとり
しおりを挟む3限と4限が終わってお昼の時間。今日のお昼は一仁が一緒に食べようって言ってたから好都合だ。絶対にこのカーディガン返す! ちなみに、2限の後はもうあのカーディガンは脱いだ。一仁も見てないし、授業に集中できないからいいかなって。それに、もう恥ずかしい思いしたくないし。
「今日は一仁とお昼食べるから。じゃあね!」
意地悪した璃来くんとは今日お昼一緒に食べないんだから! 教室で、光くんと璃来くんに言って、すぐに食堂に向かう。
食堂に着いて辺りを見渡したが一仁は見えない。人が多くて確かではないけど、まだ来てないみたい。一仁を待ってもいいんだけど、お昼の食堂で何もしないで立ってるのは人の目が気になるから、先に頼んでおこうとカウンターの方に向かった。
注文をして、待っている時に気づいた。カーディガン持ってたらトレーを受け取れない……、しょうがないから今だけ着てよう。席に座るまでの少しだけ、と思って僕はまた一仁のカーディガンを羽織った。それにしても、人の視線が気になる。人が多いからかそう思うのか、それとも僕が人に慣れて無さすぎて敏感になっているのか。いつもは光くんたちとおしゃべりしてるから気にならないんだけど、今は1人だから他に気を紛らわすことがなくて、他の人に集中してしまう。ほら後ろの人、絶対僕のこと見てるよ。顔見れないけど、視線がぐさぐさ来てる感じがする。なんで見られてるんだろう、ひとりだからかな。やっぱりどこかで一仁のことを待てばよかった。
一仁早く来ないかな、そう思った時後ろから肩を叩かれた。
「ねぇ、今日はひとり」
「唯!」
今、この後ろの人に話しかけられたと思って、恐る恐る後ろを向いたら、いたのは一仁だった。
「一仁!」
「ごめん、授業ちょっと延びて遅くなっちゃった。」
「ううん、大丈夫。授業お疲れ様。」
駆け寄ってきた一仁に飛びつかれてふらついたけど、何とか受け止められた。その後一仁の顔を見上げると、僕の後ろの人を見ていた。あ、この人は一仁のお友達だから僕を知っていて、僕が1人だったから声かけてくれたのかな。そう思って僕も後ろの人を見ようとしたら、一仁に顔を前に向けられた。前を見たらそこには僕のお昼ご飯が乗ったトレーが出てきていた。
「これ、唯の分がきたみたいだよ。気をつけて持ってね。席探しに行こう。」
「あ、うん。ちょっと待って。」
友達とのお話はいいのか、一仁はすぐに行こうとする。僕は後ろの人の顔も見れないで、急いで一仁の後をついて行った。
「一仁、席端っこの方にしよう?」
さっきまで他の人の目が気になってたのを思い出して一仁にそう提案してみると、一仁はすぐに賛成してくれて、僕たちは無事に端っこに席を確保出来た。
「じゃあ、僕も頼んでくるから。少しひとりにするけど、誰にもついて行かないで待ってて。」
「行かないよ。僕のこと子供だと思ってる?、それに、ここ学校の食堂だし。」
僕がそういうと、何故か一仁はむっとした顔をした。でもすぐにお昼ご飯を取りに向かったから、僕は大人しく1人で待った。
今日のお昼はうどんにした。そしてえび天を1個オマケしてもらった。ここのシェフさんは、Ωってだけで、可愛いからオマケ、って言って偶にサービスしてくれるから好き。でも、他のみんなにもやってるから、赤字になってないか少し心配。あんまり時間が経ったら麺が伸びちゃうから、先に食べ始めた。うん、おいしい。この後すぐに一仁も来て、僕の前に座った。一仁は蕎麦にしたみたい。
「唯の見て、麺の気分になっちゃった。でも、唯が天ぷらもつけるなんて珍しいね。食べ切れる?」
「食べれるよ。あそこの人、可愛いからって結構オマケしてくれるんだよ。ちょっと照れちゃう、えへへ。」
「ふーん……。そうだね、唯は可愛いから。で、誰に言われたの?」
一仁にかわいいと言われてうどんを吹き出しそうだった。こんなこと言われたの初めて……、いや、結構言われたことある。朝とか毎日のように言われてる。くっ、またばかにされた。
「わ、わかんない。あと別に僕、可愛いわけじゃないし。」
「ちゃんと思い出して。あのおじさんに言われたの? それともあっちのちょっと若い方?」
僕が誰にお世辞で可愛いって言われたかなんてどうでもいいと思うんだけど、一仁はさらに詰めてくる。でもどうしたって分からないから、ほかの話で気をそらそうかな。そう思って、さっき僕の後ろにいた一仁のお友達のことを思い出した。
「……そういえばさ、さっき並んでる時に後ろにいた人、一仁のお友達?」
「唯、話しそらさないで。誰に言われたの。」
話を逸らすは一仁に通じなくて、やっぱり誰にオマケしてもらったのか、しつこく聞いてきた。色んな人がサービスしてくれるし、αの一仁がどうしたらオマケ貰えるかなんて分からないから、僕は素直に言うことにした。
「わかんないよ! 僕がΩだからってみんなサービスしてくれるんだよ、光くん達だって貰ってるし。一仁も可愛い顔したら、何か貰えるんじゃない?」
一仁があんまりしつこいから、ムッとして言ったら、何故か一仁は少し笑ってた。もしかして、今度試そうとしてる?
「そっか、ならいいんだけど。あと、さっき唯の後ろにいた人は全然知らない人だから、もう忘れて大丈夫。」
そう言って一仁は蕎麦を啜るのを再開した。
でも、僕はうどんを食べる手を止めた。一仁が全然知らない人って言った。すごい見られたし、最後多分声をかけられた気がしたから、てっきり一仁の知り合いだと思ったけど。違うならなんで僕に……。あの人、圧があってαみたいだったかも……。
「唯?」
「あ、ううん、知らない人でちょっとびっくりしただけだから。」
「唯、大丈夫だよ。学校は怖いところじゃない。僕もいるし、他の人もみんな見てるから。警戒するのはいいことだけど、あんまり怖がり過ぎないで。僕は唯と楽しく学校生活を送りたいな。」
一仁は僕の気持ちがわかったのか、そう言ってくれた。僕は高校は頑張るって決めたし、友達もいっぱい出来て毎日が楽しいことを思い出した。ここでビビってたらもったいない!
僕は短く返事をして、ちゅるちゅるとうどんを食べた。
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