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Ω先輩の章
強制帰寮
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「んん~、あさ、」
朝、いつも通り目覚ましの音で目を覚ます。今日は何回目のアラームで起きれたのか、時間を確認すると、もう結構危ない時間だ。急いで起き上がって、隣でまだ寝ている光くんを起こす。立ち上がったら、少しいつもと違う感じがしたけど、遅刻するかもだから気にしてられない。
「光くーん、時間やばいー。起きてー。」
「……おきてる~」
寝てたのに起きてるって言うし、まだ全然寝てる。でも声かけたし、僕も急がないとだからあとは放っておく。光くんを起こした後は顔を洗って制服に着替える。朝ごはんの時間はない。空腹だからか、なんだか体が熱くて少しふらつく感じがしたけど、頭もお腹もどこも痛くないから、普通に学校に行く。半袖になった制服を着て、この前のカーディガンの一件から、僕も自分のを持っているんじゃ、と思ってクローゼットの奥から見つけた僕のカーディガンを羽織る。寝癖をある程度直して……と、
「唯~、行くよ~。」
「うん!」
僕より遅起きのくせに身支度が速すぎる光くんに呼ばれて、慌てて部屋を出た。
寮を出て学校までの短い道には他にも数人の生徒がいた。そして、いつも通り一仁も待ってた。
「よし、いつも通りセーフ。おはよう、一仁。」
「唯、おはよ、う……」
一仁におはようを言って駆け寄った。あれ、一仁はなんだか様子がおかしい。僕をみて一瞬固まって、その後少し強めにギュッてされた。やっぱり、だいたいいつも通り、?
「唯、今日は学校お休みしようか。」
全然いつも通りじゃなかった! 一仁にこんなことを言われるのは初めてで、僕はびっくりした。巫山戯てるのかもと思ったけど、真剣な顔をしてる。思わず僕は聞き返した。
「え、どうして?」
「少しだけど、匂いが強いから今日はダメだと思う。体、変な感じしない?」
一仁にそう聞かれて僕は少し考えた。
変な感じ? そういえば朝ちょっとだけ変な感じしたかも? でも、どうして一仁は分かるんだろう。あ、匂いが強いって言ってた。もしかして僕、変な匂いしてる?、病人特有のみたいな。昨日もちゃんとお風呂入ったし、今も全然元気なのに。
「何が? えっと、体は大丈夫だけど……、朝ちょっとだけおかしかったかもだけど。でもお腹空いてるだけだから、やっぱり大丈夫だよ。」
「ううん、駄目。帰ろう。寮の前まで送る。」
僕は大丈夫って言ってるのに、一仁はしつこく休むのを勧めてくる。勧めるっていうか、ほぼ強制になってる。僕はちゃんと授業に出て、勉強しなきゃいけないのに。
「ふぁ~。何の話してるの? 急がないと遅刻するよ。」
やっと目が覚めてきたっぽい光くんが聞いてきた。
「一仁が学校休めって言ってくる!」
「少しだけど匂いが強くなってる。今日中に発情期が来ると思うから唯を寮に返す。」
僕と一仁は同時に光くんに訴えた。あんまりちゃんと聞こえなかったけど、一仁が意味わからないことを言った。ひーと?、何それ?、何が来るの? 僕たちの言葉を聞いて、光くんは完全に目が覚めたっぽい。目がいつも通り大きく開いている。
「え! あ、た、確かに僕から見ても、さっきまで唯がうねうねしてて、元気そうには見えなかった。早く帰った方がいいよ!」
なんと光くんも一仁側についた。さっきまでほとんど目開いてなかったけど、適当に言ってない?
結局僕は二人に押されるように学校から離れてさっきまでいた寮に向かった。
僕の抵抗も虚しく、すぐにΩ館のエントランスまで帰ってきた。さっき出ていったやつが戻ってきて、警備員さんもジロジロ見てる。一仁が行ける、ギリギリのところで止まって僕に向かって一仁が言った。
「早く部屋帰って、薬飲んで、寝て。」
「薬?」
「そう。冬嗣さんから何か薬もらってない?」
父様の名前を出されて、何かあったかなーって思い出してみる。ここに来る時、母様は色々言って持たせてくれたけど、父様は特に何も……、
「あ、もらった。引き出しにしまってるやつ。」
この学校に入る前に父様からもらった薬の存在を思い出した。白い錠剤の1シート分。それを受け取った時、「一仁に飲んでって言われたら飲むんだよ」と言われて、僕は意味がわからなかったから適当に返事をしたのも思い出した。
「すごい、父様の言った通りになった。僕、一仁があの薬を飲んでって言ったら飲むって言われたの。なんでわかったの?」
本当に不思議だったから、後ろから僕を押してくる一仁に聞いてみた。一仁は薬のことも勉強してるのか、それとも父様に教えてもらったのか。一仁の様子を見てみると、ちょっとびっくりしてる様に見えた。そして、予想外の答えが帰ってきた。
「えっと、唯とずっと一緒にいるから、なんでもわかるよ。薬飲む前に何か胃に入れた方がいいから、これ食べて。今日の分のパン。あと、これも。」
そう言われて、一仁からいつものパンをもらった。今日は袋に入ったまま。そして、一仁のカーディガンももらった。今日はちゃんと、一仁のより小さい僕にピッタリサイズの同じやつ着てきたのに、その上から掛けてきた。でもすぐに部屋に行って脱ぐしと思って、特に断ることもしなかった。今回はちゃんと受け取った僕に満足したような顔をして、一仁は続けて言った。
「薬を飲んだら寝る前に、僕にメッセージ送ってくれる?、薬飲めたか飲めなかったかとか、体調悪くなってないかとか、何か必要なモノがあるとか、あと、僕に一緒にいて欲しい……とか。なんでもいい。迷惑とか思わないし、僕も唯の傍にいたいから。」
「わかった。でも全然元気だし大丈夫だと思う。早くしないと二人も遅刻しちゃうから、僕もう行くね。」
寮へ戻ろうとしたら、ずっと心配そうに見ていた光くんが口を開いた。
「部屋まで送らなくて大丈夫?」
「うん、平気。二人とも学校頑張ってね。」
心配そうに僕を見る光くんと一仁に笑顔で手を振って別れた。
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