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Ω先輩の章
休日の過ごし方①
しおりを挟むとある日曜日、朝食を済ませて自室で、僕は課題を、光くんは課題に飽きて倒立をしている時だった。ノック無しに璃来くんが部屋に入ってきた。
「おーい、こっちでゲームしようぜ。」
いつものようにゲームのお誘いだった。さっきまで綺麗に倒立をしていた光くんはすぐに起き上がった。
「待ってましたー!、早く行こー! ほら唯、問題集閉じて!」
「先行っててー。あと1問でキリがいいから。」
そう言って先に行ってもらい、僕もすぐに追いかけた。
向かった先は璃来くんと陽向くんの部屋の310号室。隣の隣で直ぐ近くだ。ノックして入ると、璃来くんはもうテレビの準備も万端でみんなのコントローラーを用意していた。陽向くんは勉強机の方で課題をしていた。
「よし、唯も来たな。4人で対戦しようぜ。」
「それはいいけど、みんな、課題は終わったの?」
璃来くんが始めようとしたところに、陽向くんが聞いてきた。
「僕はあと数学だけだから大丈夫。」
「唯偉い。で、2人は?」
「「…………」」
2人は何も答えない。まぁ、いつものことだ。
「ゲームで勝負しよう。1位の人が他3人に命令できる。だから陽向は1位になれば俺たちに宿題をやらせることができる。」
「さんせーい! 僕は1位になったらみんなに宿題をやってもらう!」
璃来くんの提案に光くんはノリノリ。今まで何回かゲームをやってきて、みんなのゲームの上手さがわかってきた。璃来くんと光くんはなんでもすごい上手い。陽向くんも上手いけど2人に勝てるほどじゃない。謎解きとか、チェスとかなら勝てるけど、こんな勝負をするのにそんなゲームを持ちかけるわけが無い。
「はぁ、まぁいいけど。これを何回か繰り返してたら僕が1位になるときが来るかもしれないしね。」
「よし、唯もいいよな。じゃあ勝負するゲームはこれな。」
そう言って璃来くんが出したのは「ぽよぽよテトラス」だ。ぽよぽよとテトラスのどっちかをそれぞれ選んでできる。でもどっちもパズルゲーム。いっぱい繋げたり揃えたりしてパズルを消して自分の画面をスッキリさせつつ、相手の邪魔をする。下から積み上がっていって上まで行ったら負け。僕これ苦手だ。僕もゲーム好きだけど僕がよくやってたのは配管工おじさんシリーズで、これは全然やってなかったから。
「えー、配管工おじさんパーティにしようよー。」
「んー、今の俺の気分がぽよテトだから却下。」
僕の提案は璃来くんの気分にすぐに却下された。もう、しょうがないな。やるからには全力でやろっと。僕が勝ったら2人に課題をやらせるために、勉強の時間にしよーっと。
4人でテレビの前に並んで座った。僕と璃来くんはぽよぽよ、陽向くんと光くんはテトラスだ。
「それじゃあ、3点先取な。ゲームスタート!」
「「おー!」」
璃来くんの掛け声とともにゲームが始まった。
カチカチカチカチカチカチカチカチ
すぐにみんな集中して、コントローラーのボタンの音が響いた。僕は頑張ってぽよを積み重ねて連鎖を狙う。結構連鎖出来ていい感じだけど、積み上げる速さが他の3人が速すぎるから、僕はすぐにばたんきゅーしてしまう。
結局僕は一度も勝てなくて、最終結果は陽向くん1点、光くん2点、璃来くん3点で璃来くんの勝ちになった。
「くぅっ、あと何回かやれば絶対勝てる……!」
「やりー! 俺が勝ったからみんな言うこと聞けな!」
悔しがる陽向くんの横で璃来くんが言った。光くんは、負けて言うことを聞かなきゃいけないのに、何故かニコニコでいる。僕は何を言われるかドキドキしてるっていうのに。陽向くんも諦めたように勉強机の方に向かった。
「はいはい。課題代わりにやってって言うんでしょ。いいけど、璃来がテストで赤点とって、夏休みに補習になっても知らないからね。」
「いーや、俺は光とは違うから。宿題は後で自分でやるし。だから、陽向への命令は、今から藤宮様か、一条様のとこ行って放課後の音楽室の使用許可取ってきて。」
てっきり課題を押し付けられると思っていた陽向くんは違う命令にびっくりして璃来くんを見た。
「 !!、なんで、」
「今度部活で使いたいから。あの二人ならどっちでもいいだろうから、陽向が行きやすい方に行ってきてくれない?」
「うん!、行ってくる!」
そういうと陽向くんはすぐに出ていった。走って行ったから、多分すぐ戻ってきてまた勝負になるかな。なんて僕は考えてたけど、璃来くんたちは次何のゲームするかって話し合っていた。
「光と唯はこのままゲーム続行なー。」
「もちろん!」
「それはいいけど、陽向くん待たないの?」
「あぁ、絶対夕方までは帰ってこないから。」
璃来くんは迷いもなく言ったけど、僕には意味がわからなくて、首を傾げた。そんな僕を見て、光くんが言った。
「今陽向は一条先輩の方に行ったんだよ。過保護な兄より、大好きな恋人の方。しかも、いっつも藤宮先輩が一緒にいるから滅多に会えない。こんな、ちゃんと理由があって2人きりになれるチャンスがあったら、暫くは一緒にいるよー。だから、陽向は放っておいて僕たちはゲームの続き! 宿題やれやれってうるさいのがいないうちにね!」
「あ、あー! すごい、璃来くん策士だ。」
僕もやっと理解出来て、陽向くんを見送った扉から顔を逸らして、2人の方を見た。僕は璃来くんの考えがすごいって思ったから褒めたつもりだったけど、璃来くん的にはそうではなかったみたいで、こっちを見て言った。
「そんな、嵌めたみたいに言うなよ。偶俺達にゲームする時間が出来ただけで、ちゃんと俺は陽向を一条様と会わせてあげようって思ってたよ?」
「あ、そっか。ごめん。璃来くんすごい優しい!」
「唯ー、騙されるなー。」
光くんがボソッと言ったけど、璃来くんと話をしている僕には聞こえなかった。僕は次やるソフトを選んでいる璃来くんの手元を覗いた。
「そんで次は、マリヨパーティやろうぜー。」
「やるー!」
璃来くんは言いながらあの有名な配管工のおじさんが描かれたパッケージのソフトを僕に見せた。
さっき僕がやりたいって言ったやつ! 勝ったのは璃来くんなのに僕の要望を聞いてくれるなんて本当に優しい! 僕は璃来くんに駆け寄って、隣に座った。そして僕たちはその後、お菓子とジュースを食べながら、夜までゲームをし続けた。
課題の方は、僕は終わったけど、光くんは終わらなかったっぽい。
配管工おじさんマリヨ ( ˙˘˙ )
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