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Ω先輩の章
アンラッキーアイテム
しおりを挟む今日の1限目は数学。朝から数学は頭が働かないからいつもミスばっかり。でも今日は少し早起きしたし、朝から走り回ったからいつもより冴えてる。ほら、練習問題がちゃんとできてる。先生が解説しているのと自分のノートを見比べる。ここの問題が終わって先生は教科書にそって説明を始めた。数学の先生は厳しいめで多くの生徒から怖がられているけど、僕は先生の説明が分かりやすいから好き。
それにしても、教室はエアコンがついてても全然寒くない。カーディガンなくてもいいな、脱いでいいかな。僕は意識を教科書からカーディガンに移した。一仁のカーディガンは本当にいい匂いがする。ずっと昔から同じの、甘い匂い。匂いフェチじゃないけど、僕この匂い好き。全然匂いフェチじゃないけどね、だって他の匂いに好きとかないし。
「じゃあこの問題を、一宮。」
朝のあの恥ずかしい行動を思い出して暑くなってきた。僕また匂い嗅いじゃってる。寒くないし、これ脱ごうかな……、いや、着ててって一仁が言ってたし……。
「一宮、」
でも、教室で着てなくても一仁には分からないから、脱いでも大丈夫なんじゃ……。
「いちみやー」
でもなんとなく着てたい感じもするし……
「一宮ぁ!!!!」
「は、はいっ!」
先生に大声で呼ばれて慌てて立ち上がった。びっくりした、考え事してて先生がずっと呼んでたの聞こえなかったっぽい。先生は怖い顔で僕を見ている。元からちょっと怖い感じなのにさらに怖くなってる。目力すごい。
「この問題の答え何だ。」
先生はそう言いながら、前の黒板を指さす。僕は急いで黒板に書かれた問題を教科書から探した。……やばい、わからない。問題は見つけられたけどさっきの確認問題と比べ物にならないくらい難しい。よく見たら応用問題って書いてある。困った僕は助けを求めて、横の席の璃来くんの方を見た。けど、璃来くんは机に突っ伏して、爆睡していた。他のみんなも先生が怖いからか下を向いてるし、助けを求められそうにない。当てずっぽうの答えも思いつかなかったから、僕は正直に言った。
「……分かりません。」
「ぼーっとしてたもんな?、集中してちゃんと授業聞け、いつもはできてんだから。」
「はい……。」
僕は大恥をかいた。
それだけ言って僕は席に座った。先生の位置からはちょうど死角なのか、僕の横でぐっすりの璃来くんは怒られなかった。ずるい。
2限目は英語だ。英語の授業は内容は全然分からないけど、先生は優しいし、授業の雰囲気もいいから好き。好きだからって得意とは限らない。今も、教科書の英文を訳していってるけど全然分からない。toはさっきも出てきたけどさっきのと意味が違うらしい、何が違うの? 見たことない長い単語もある、なにそれ? 直訳はこうだけど自然な形にすると、ってなんで変わるの! この通り全然分からない。ついでに文の内容も分からない。隣を見てみると、さっきの数学とはうってかわって、璃来くんは集中して授業を聞いている。内容、わかってるのかな。周りも、訳を聞かれてちゃんと答えてる。
はぁ、僕だけか、わからないの。授業置いてかれないように、毎日頑張ってるのになぁ。僕はしょんぼりして机に突っ伏した。しばらくしょんぼりして、気づいた。あ、また一仁の匂いがする。朝からずっとこの匂い嗅いでるよ。一仁ってば香水付けすぎなんじゃないの! 顔を伏せているからか、顔が匂いに包まれてる感じがする。そこそこ時間が経っているのに、匂いは薄くなるどころか、濃くなってる気がする。さっき、この匂いのせいで怒られたのを思い出してムカつくのに、体の中のどこかが埋まる感じがして安心する気もする。はぁ、すごい一仁の匂いがするぅ。なんだかむずむずしてきた。
「はぁ……」
やばい、授業ちゃんと聞かないと。おいてかれちゃう。……でも、顔、あげられない。匂い嗅ぐの止まんない。
そして僕は突っ伏してたから気づかなかった、璃来くんがこっちを見ているのが。
「せんせー!、唯がひとりでえっちなことしてまーす!」
突然璃来くんが大声で言った。僕はその声で我に返った。他のことに気をとられてて、何を言われたか理解するのにちょっと時間がかかった。
「えっ! えっ、し、してない!」
僕は頭をあげて叫んだ。璃来くんてば、授業中なのになんてこと言うんだ。しかも僕がって!
クラスのみんなが僕たちの方を見ていた。僕の顔は多分真っ赤になってると思う。
「してましたー。服の匂い嗅いで、喘いでましたー!」
「してない!、ちょっと下向いてただけだから!」
服って、一仁のじゃん! 確かにちょっとだけ嗅いでたけど、なんにもしてないから! 僕は必死に否定するけど、璃来くんはずっとニヤニヤしてこっちを見ている。
「一宮君、授業、ちゃんと聞いてねー。」
先生にそう言われ、クラスのみんなに笑われた。
僕はまた大恥をかいた。
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