ずっと隣に

をよよ

文字の大きさ
上 下
39 / 47
Ω先輩の章

アンラッキーアイテム

しおりを挟む


 今日の1限目は数学。朝から数学は頭が働かないからいつもミスばっかり。でも今日は少し早起きしたし、朝から走り回ったからいつもより冴えてる。ほら、練習問題がちゃんとできてる。先生が解説しているのと自分のノートを見比べる。ここの問題が終わって先生は教科書にそって説明を始めた。数学の先生は厳しいめで多くの生徒から怖がられているけど、僕は先生の説明が分かりやすいから好き。
 それにしても、教室はエアコンがついてても全然寒くない。カーディガンなくてもいいな、脱いでいいかな。僕は意識を教科書からカーディガンに移した。一仁のカーディガンは本当にいい匂いがする。ずっと昔から同じの、甘い匂い。匂いフェチじゃないけど、僕この匂い好き。全然匂いフェチじゃないけどね、だって他の匂いに好きとかないし。

「じゃあこの問題を、一宮。」

 朝のあの恥ずかしい行動を思い出して暑くなってきた。僕また匂い嗅いじゃってる。寒くないし、これ脱ごうかな……、いや、着ててって一仁が言ってたし……。

「一宮、」

 でも、教室で着てなくても一仁には分からないから、脱いでも大丈夫なんじゃ……。

「いちみやー」

 でもなんとなく着てたい感じもするし……

「一宮ぁ!!!!」

「は、はいっ!」

 先生に大声で呼ばれて慌てて立ち上がった。びっくりした、考え事してて先生がずっと呼んでたの聞こえなかったっぽい。先生は怖い顔で僕を見ている。元からちょっと怖い感じなのにさらに怖くなってる。目力すごい。

「この問題の答え何だ。」

 先生はそう言いながら、前の黒板を指さす。僕は急いで黒板に書かれた問題を教科書から探した。……やばい、わからない。問題は見つけられたけどさっきの確認問題と比べ物にならないくらい難しい。よく見たら応用問題って書いてある。困った僕は助けを求めて、横の席の璃来くんの方を見た。けど、璃来くんは机に突っ伏して、爆睡していた。他のみんなも先生が怖いからか下を向いてるし、助けを求められそうにない。当てずっぽうの答えも思いつかなかったから、僕は正直に言った。

「……分かりません。」

「ぼーっとしてたもんな?、集中してちゃんと授業聞け、いつもはできてんだから。」

「はい……。」

 僕は大恥をかいた。
 それだけ言って僕は席に座った。先生の位置からはちょうど死角なのか、僕の横でぐっすりの璃来くんは怒られなかった。ずるい。








 2限目は英語だ。英語の授業は内容は全然分からないけど、先生は優しいし、授業の雰囲気もいいから好き。好きだからって得意とは限らない。今も、教科書の英文を訳していってるけど全然分からない。toはさっきも出てきたけどさっきのと意味が違うらしい、何が違うの? 見たことない長い単語もある、なにそれ? 直訳はこうだけど自然な形にすると、ってなんで変わるの! この通り全然分からない。ついでに文の内容も分からない。隣を見てみると、さっきの数学とはうってかわって、璃来くんは集中して授業を聞いている。内容、わかってるのかな。周りも、訳を聞かれてちゃんと答えてる。
 はぁ、僕だけか、わからないの。授業置いてかれないように、毎日頑張ってるのになぁ。僕はしょんぼりして机に突っ伏した。しばらくしょんぼりして、気づいた。あ、また一仁の匂いがする。朝からずっとこの匂い嗅いでるよ。一仁ってば香水付けすぎなんじゃないの! 顔を伏せているからか、顔が匂いに包まれてる感じがする。そこそこ時間が経っているのに、匂いは薄くなるどころか、濃くなってる気がする。さっき、この匂いのせいで怒られたのを思い出してムカつくのに、体の中のどこかが埋まる感じがして安心する気もする。はぁ、すごい一仁の匂いがするぅ。なんだかむずむずしてきた。

「はぁ……」

 やばい、授業ちゃんと聞かないと。おいてかれちゃう。……でも、顔、あげられない。匂い嗅ぐの止まんない。
 そして僕は突っ伏してたから気づかなかった、璃来くんがこっちを見ているのが。

「せんせー!、唯がひとりでえっちなことしてまーす!」

 突然璃来くんが大声で言った。僕はその声で我に返った。他のことに気をとられてて、何を言われたか理解するのにちょっと時間がかかった。

「えっ! えっ、し、してない!」

 僕は頭をあげて叫んだ。璃来くんてば、授業中なのになんてこと言うんだ。しかも僕がって!
 クラスのみんなが僕たちの方を見ていた。僕の顔は多分真っ赤になってると思う。

「してましたー。服の匂い嗅いで、喘いでましたー!」

「してない!、ちょっと下向いてただけだから!」

 服って、一仁のじゃん! 確かにちょっとだけ嗅いでたけど、なんにもしてないから! 僕は必死に否定するけど、璃来くんはずっとニヤニヤしてこっちを見ている。

「一宮君、授業、ちゃんと聞いてねー。」

 先生にそう言われ、クラスのみんなに笑われた。


 僕はまた大恥をかいた。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

愛しいアルファが擬態をやめたら。

フジミサヤ
BL
「樹を傷物にしたの俺だし。責任とらせて」 「その言い方ヤメロ」  黒川樹の幼馴染みである九條蓮は、『運命の番』に憧れるハイスペック完璧人間のアルファである。蓮の元恋人が原因の事故で、樹は蓮に項を噛まれてしまう。樹は「番になっていないので責任をとる必要はない」と告げるが蓮は納得しない。しかし、樹は蓮に伝えていない秘密を抱えていた。 ◇同級生の幼馴染みがお互いの本性曝すまでの話です。小学生→中学生→高校生→大学生までサクサク進みます。ハッピーエンド。 ◇オメガバースの設定を一応借りてますが、あまりそれっぽい描写はありません。ムーンライトノベルズにも投稿しています。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

処理中です...