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Ω先輩の章
暑くなってくる時期
しおりを挟む体育祭も終わって六月がやってきた。やっと衣替えで制服が半袖になった。体育祭の期間は長袖じゃ少し暑くて大変だったからもっと前から半袖にしたかったな。夏服になって涼しくなったのともう一個、ネクタイが無くなった! これでもう僕は一人でちゃんと出来るようになった。でも早起きはまだ苦手で、ネクタイがなくていつもより早く出れたけど一仁はもう外にいた。
「おはよう、一仁。早いね。」
「唯、おはよう。ネクタイ無くなったちゃったね。」
一仁が僕の首元に触りながら言う。そのまま首に顔も近づけて来た。ネクタイ無くなって喜んでたの、こうゆう恥ずかしいのがなくなるからもあったのに、なくてもやるなんて!
僕は慌てて一仁から離れた。
「う、うん、もう全部自分で出来るから大丈夫!」
「、少し寂しいね。……半袖寒くない?」
「そういう一仁だって半袖じゃん。今日はちょっと暑いくらいだし、大丈夫だよ。」
「…教室寒いといけないから、これあげる。」
そう言って一仁は持っていたカーディガン着せてをくれた。別にいらないから返そうと思ったけど、体育祭の時のようにプチ喧嘩したくないので黙って受け取る。最近の一仁はすぐに機嫌が悪くなる気がする。外では完璧αって感じでいるけど、意外と子供っぽいところもあるんだな。僕だけにそういうところをみせてたりして。なんたって10年以上の親友だからね、兄弟と言っても過言じゃないね、へへへへ。
僕は可愛い弟を見るように一仁に向いた。そして弟の気遣いは無駄にしない、と素直に着た、んだけど、
「…ブカブカ」
「ふふ、可愛いよ。今日一日ずっと着ててね。」
可愛いのは意外と子供っぽい一仁の方なのに。一瞬で関係が覆った感じだ。悔しい。
一仁に借りたカーディガンはなんかちょっといい匂いする。いつもの一仁の匂い。袖は布がいっぱい余ってて嗅ぎやすい、、、はっとして顔をあげると一仁も光くんもじっと僕を見ていた。匂いを嗅ぐのに少し夢中になってて気が付かなかった。
「へ~?、唯っては匂いフェチなんだ~?」
「もっと嗅いで。」
ニヤニヤとこっちを見ながら言ってくる光くんと、何故か嬉しそうな一仁。
「別に!、ちょっといい匂いで気になっただけ!」
僕は不思議と恥ずかしくなって、一仁と一緒にいれなかった。
「もう!、今日は朝ごはんも食べたし、もう用事ないよね!、だから一仁は早く行って!」
「えー?、わかったよ、先に行くね。唯、今日お昼一緒に食べよう。迎えに行くから。」
一仁を何とか先に行かせた。
「唯ってば顔真っ赤ー。もう夏服のあいだはそのカーディガン脱げないねー。」
光くんはまだニヤニヤしながら言ってくる。
「別に!、暑いだけだし! 暑いからこれも脱いじゃうもん! ほら、光くん寒いんじゃない?、貸してあげるよ!」
「は!?、いい、いらない!」
「ちょっとだけ嗅いでみなよ、なんか不思議だけどいい匂いするから!」
「は!?、い、いらない!、わかってるから!」
僕から逃げる光くんと、光くんにカーディガンの匂いを嗅がせようとする僕も走って校舎に入っていった。
おふざけも終わらせて、靴を履き変えようと下駄箱をあけたら、
バサバサバサッッ
「な、何!?」
音を立てて落ちてきたのは大量のお手紙だった。ちゃんと全部僕宛てだけど知らない名前しかない。
「わぁ、凄いね、いっぱい。ラブレターじゃない?」
「えぇ、ラブレター!? どうしたらいいんだろうこれ。僕ラブレターなんて貰うの初めてだし。知らない人からっぽいし。」
「体育祭の友達宣言が効いたかなー。まぁでも、唯にその気がないなら無視でいいんじゃない?」
落ちたお手紙をひとつ拾ってみると、なんか変な匂いがするっていうか、なんだか嫌な感じがする。ラブレターじゃなくて、他になにか僕に伝えたいことがあるのかもしれないと思ったけど、知らない人からなんて怖いから無視していいかな。
「これ、変な匂いするよ? 大切な内容かもしれないけど怖いからさよならしようかな。あ、一仁に相談しようかな。ひとりじゃ不安だし。」
「え。怖いなら僕が一緒にいるよ!、僕が絶対唯を守るから、だから一仁に言うのはやめとこう?」
何故か光くんが焦ったように言う。他の人に言ったら何か良くないことがあるのかな?、でも僕たちΩだけで考えるのも不安だし。あと、これがラブレターなら、一仁がどうすればいいか知ってるはず。
「でも、光くんも危ないし。一仁なら多分上手くやってくれると思う。」
「僕強いから大丈夫だよ!、ていうかこれはもうここで捨てていこ、αサマならこんな女々しいことしないで直接かかってこーいってね!」
そう一息で言った光くんによって、お手紙たちは流れるように下駄箱横のゴミ箱に入っていった。ごめんなさい、お手紙くれた知らない人。
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