ずっと隣に

をよよ

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桃の章

仲直り親友宣言

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 「いい?、唯、お題が人だったら絶対に一仁のところに行くんだよ。ぼくのところに絶対に来ないでね!」

 次は僕の出る借り物競争だ。すぐ競技に向かわなければ行けないのに光くんがずっとこれを言って話してくれない。

 「なんで一仁?、それより他の組からも借りていいの?」

 「いい。いいから絶対に一仁のところに行くんだよ?、お題が眼鏡でもとりあえず一仁のところに行ってね。多分絶対持ってるから。」

 「えぇ?」

 「とにかく、絶対に僕のところに来ないでね。一仁のところに行くんだよ!!」

 「はーい。」

 さすがに一仁だって眼鏡は持ってないよ。だって目いいもん。とりあえず光くんがうるさいから頷いて競技に向かった。でも僕はお題を見た瞬間、光くんの気持ちが全て伝わった。

 「一仁!、お願い、一緒に来て!」

 「えっ、うん。」

 僕は一仁を引っ張ってゴールに向かう、というか途中から僕が引っ張られていた。

 「1レース目、たった今蒼組がトップでゴールしましたー! さて、お題はなんだったんでしょうか!」

 ふふ、お題は「親友」だ。光くんはわかってたんだ、だから絶対に一仁をゴールに連れて行って仲直りしろってことだよね。スゴすぎるよ光くん。今だって一仁はニコニコで僕の隣に立っている。いわれなかったら同じ翠組だし、今一仁とも話しずらいから光くんを連れてくるところだった。光くんのあの圧が僕の背中を押してくれたんだ。

  「えーっと、親友ですか。」

  「はい!、僕と一仁は幼なじみで昔からずっと一緒にいた親友です! これからもずっと!」

  「えーと、今後の進展に期待?ですかね。出来ればいい方に、関係が変わることを願ってます。」

 なんてこと言うんだ、司会の人がすごく不穏なことを言った。でも僕は勢いに任せて気持ちを全部吐き出す。今までの桃くんのことでずっともやもやしてたのは一仁が桃くんにとられると思ったからだったんだと今、気がついた。

「変わらないです!、僕達はこれからもずっと永遠に友だちです!!」

 桃くんになんて絶対あげない!
 ……言い切ったところで周りがしんとしているのに気がついた。こんな私怨まみれなことをマイクで全校に叫んでしまった。僕は恥ずかしくなって、一仁の腕を引いて静かに退場した。





「一仁、ごめん。僕熱くなっていっぱい叫んじゃった。見苦しかったよね、ごめん。」

 一仁はさっきまでのニコニコとは打って変わって凄く落ち込んでいる。

「一仁が桃くんとたくさん仲良くしてるの見てちょっとだけモヤモヤしたから、叫んじゃった。ちょっと前とか、今朝も、お昼も。でももう大丈夫!、桃くんとはお友達でも、僕ともずっと親友でいてくれるよね!」

 そう言うと一仁は顔を上げた。

「吉川と僕が一緒にいたから嫌だったの?、唯が吉川に嫉妬してたってこと?、それってさ、つまり、唯、僕のこと、、」

 なんか一仁が急に元気になって話始めたから聞いてあげる。

「うん?」

「唯は、僕のこと好き?」

 一仁の目は見るからに本気だ。なんか、告白みたいじゃないか?、でも仲直りしたばっかだからここで怒ったらダメだ。誠心誠意応えないと。

「うん、大好きだよ。嫌いになんてならない、ずっと前から好きだしこれからもずっと好き。」

「へっ」

 一仁の動きが一瞬止まって、ほっぺたにのびてくる。

「ずっと一緒にいたい。だからお友達やめたくない。ずっと親友がいい。」

「へっ」

 また一仁の動きが止まる。

「今朝のこともごめんね。なんか素直になれなくて……。今度からちゃんと日焼け止め塗るから、許して。」

 ほっぺたにいた手は下に降りて、ついでに顔も下を向いてしまった。あれ、間違えてないよね?、ちゃんと謝ったし言いたいこと言えた気がするんだけど。

「……はぁ……それはいいから、少しそっとしておいて。」

 怒ってはないみたいだけど一仁の機嫌は直らない。項垂れている頭を撫でてご機嫌をとる。すると頭を寄せてきたからもっと撫でておく。

「ねぇ唯、僕も、、僕も唯のこと、好きだよ、大好き、愛してる。ずっと一緒だから。」

「あ、うん、嬉しい。」

 一仁が顔を上げて言った。ちょっと目が赤い気がする。一仁も気にしてたのかな、悪いことしちゃったな。でも友達に喧嘩はつきものだからしょうがない。それにしても愛してるって、ちょっとびっくりした。言い過ぎな気もするけど嬉しかった。






 暫くして落ち着いたのか一仁が頭をあげたので一緒にテントに帰った。テントに着いた瞬間光くんに怒られた。

「馬鹿!、あんなの僕を呼べよ! なんで一仁のところに行くかなぁ。あぁ、でもお題を見誤った僕のミスか……。でもなんでここで親友、普通なら好きな人とかくるでしょぉ~。」

 後半はふにゃふにゃでよく聞こえなかったけど、一仁のところに行けって言ったのは光くんだから僕は悪くない。実際、仲直りできたので何も悪くない。寧ろとっても良い。

「光くん、次リレーだよ。早く行かなくていいの?」

「はぁ、行くよ。璃来、唯よろしく。」

 そう言って光くんは行った。

「何、僕をよろしくって。ていうか璃来くん玉入れ以外出た?」

「ダンスしたじゃん。」

「それしか出てないんだ。」

「いやー、運動苦手なんで。唯も見てたでしょ、ドッヂでの顔面キャッチ。」

 そういえばそうだった。僕達は大人しくリレーを見て、全力で光くんを応援した。







「うぅ~負けた~。」

「結果はそうだけど光くんすっごい速かったよ! かっこよかった。」

 リレーの結果は三位だった。一仁たちは二位で、一位は紅組だ。

「会長と一条先輩がいるんだもん、勝てないよ~。」

 紅組には生徒会長さんと風紀委員長さんがいて、すっごく速くて差がすごいことになってた。βともαとも張り合えるなんて光くんは十分すごいと僕は思うけど、光くんは凄く悔しいみたいで全然立ち直ってくれない。


 その後閉会式まで光くんはずっとあの調子だった。最終結果が発表されて紅組が優勝だった。そして僕達蒼組は最下位だった。

「うあぁぁん、頑張ったのに~。最下位だなんて~。」

 横で慶くんがすごい勢いで悔しがっている。今日、誰よりも気合いが入っていそうだった慶くんはすごい量の種目に出てて、そりゃあ悔しいだろうなと思う。

「俺、めっちゃ頑張ったのに~、みんなも頑張ってたよ凄く。うあぁぁん。」

「そうだね、今回は惜しかったけど来年もあるからまた来年頑張ろう?」

「来年も体育祭あるの?」

「あるよ、あるよね?」

「もち、あるある。」

 聞かれると不安になって璃来くんに聞くとやっぱりあるって。

「そうなんだ……うん、来年頑張るね。」

 慶くんは少し落ち着いたみたい。調理実習の完璧な慶くんとは違ってとっても可愛い。

「うん、片付けあるからみんなで頑張ろー。」

 閉会式を終えてみんなで片付けに移った。











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