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桃の章

煩わしい 〜一仁視点〜

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 朝起きて顔を洗い、朝食を食べに食堂へ行く。朝が弱い唯の姿は今日もない。入学してそこそこ経ったけど唯と朝食を一緒にとれたことは片手で足りるくらいしかない。朝が弱いところも可愛い。今日はハムサンドをあげようかな。

 制服に着替えて外で唯を待つ。少し経つとなんとなく結べているネクタイをし、寝癖をつけた唯が走って来た。いつものようにネクタイを直して、寝癖を整えるように頭を撫でて項の匂いをチェックする。まだ発情期は来ないみたい。この前あんなに俺のフェロモンを与えたのに。でもそんな体がお子様なところも可愛い。ハムサンドを俺の手からあげると、最初は照れながら食べるけど最後の方は黙々と食べるのも可愛い。

 授業はすごく退屈だ。中学まではずっと唯と同じクラスで、唯が授業に集中する姿やたまにうとうとしているのを見ていたから楽しかったんだけど。外を眺めたところでいい天気と雲しか見えない。教室内を見てもただの人人人人。重要なところを聞き逃して勉強に時間を使うことがないように、仕方なく授業に集中する。授業終わりに偶に質問してくるクラスメイトとがいる。君、社長息子だよね、こんなのも分からないでどうするの。社会的に不利になるから表には絶対出さないけど、、え、"僕の"時間がこんなのに使われるの? 1限後だからいいけど昼休み前だったら許さないから。

 昼はできるだけ唯ととる。僕に用事がない限り一緒にいれるんだけど、そんなこと無視して用事を押し付けてくる人がいるんだよね。藤宮先輩とか藤宮先輩とか藤宮先輩とか。今日はあの人が来なかったから一緒にいれる。うどん食べる唯可愛い。

 午後も退屈な授業の時間。でもあと少しで唯に会える、はずなんだけどαはΩより授業数が多くて唯達が終わったあとも授業をやってる。意味がわからない、その授業時間要らない。俺なら唯と同じ授業数でも2外だろうがなんだろうがこなせる。そんなわけで夕方は一緒にいれないし偶に唯が意味わからない時間に夜ご飯を食べるとそのまま会えないこともある。なんか、、みんなでゲームするとか、言って。今日もみんなで遊ぶからと言って俺の居ないうちにご飯を済ませて部屋にひっこんだらしい。唯が楽しく学園生活を送れているのはいいことなんだけど、俺の方がもたないかもしれない。

 そんなわけでこれが今の俺のだいたいの一日。確実に唯との時間が前より減ってる。小学校まではほぼずっと一緒にいたし、中学のあれがあってからは放課後はずっと唯と二人きりだった。唯の部屋で勉強しながらいちゃいちゃしたり、ゲームしながらいちゃいちゃしたり。お泊まりは隼人さんに許してもらえなかったけど。家、隣だし、いい言い訳出来なかった。だから俺はどうにかして唯との時間を増やしたいんだけど最近更に俺の邪魔をしてくるやつが出来た。












「授業お疲れ様です鮫島様! 今日はどんな授業だったんですか?」

「…………」

「あっ今からお昼ですか?、鮫島様はお好きな食べ物はありますか?」

「…………」

 こいつは吉川桃。入学式で俺を見て運命だと思ったらしくずっと付きまとわれてる。僕の運命は唯だけなのに、自分を運命だと言い張る失礼なやつだ。今まで人に寄り付かれるのは初めてでは無いが大体はこうやって無視し続ければ離れていく。なのにこいつはいつまで経っても離れていく様子がない。


「桃はお魚が好きです。あ、お肉も好きですよ。でも和食か洋食かでいったら和食の方が好きです。自分で作ったりもできるんですよ。鮫島様のお好きなもの「あのさ、」」

「はいっ!」

「その様付け、気持ち悪いから辞めれくれない?」
 訳:もう話しかけてくるな

「…っ、ごめんなさい! じゃあ、えっと、か、一仁、って呼びますね。あの、よかったらお昼ご一緒、あっ、い、一緒に食べない?」

 やってしまった。完全に言い方を間違えた。こいつのメンタルを考えたらあんな言い方で離れていくやつじゃないと分かるのに。離れていくどころか急に距離を縮めて来た。教室内の人もみんな昼を買いに行ったり食堂に行ったりで減ってきたからもう素直に言ってしまってもいいかな。

「嫌。お前といるくらいなら一人でいる方がいい。」

「おーい、そんなつれないこと言うなよ。みんなで食った方が、ご飯も美味しくなるよ? 俺も一緒に、三人で行こー。」

 横から割り込んで来たのは長谷川。君、俺が唯にプロポーズしたの知ってるよね?、なんでそいつの肩持つんだ。長谷川は今回だけじゃなくてことある事に吉川側について三人でいようとする。今まで俺に無視されても吉川が離れていかなかったのは長谷川のせいもあった。

「行かない。二人で行って。」

「……なんで涼と二人。一仁も一緒に行こ、もう三人でもいいから。」

「ねー、俺すごい寂しいこと言われてるから三人で行こうよー。」

 無駄な話で昼休みの時間もかなり削られてしまったし、今日はもう諦めるしかない。

「はぁ、わかった。でも食堂は無理。なんか買って、教室でならいいよ。」




 結局コンビニで買って空き教室で三人で昼を食べた。吉川はずっと喋ってて、吉川が俺に向けた質問に長谷川が片っ端から答えてた。吉川はβだが、一応配慮して人のいないところに来たから唯の姿も見ていない。はぁ、夜ご飯は絶対唯と食べる。




















 数日様子を見ていて気づいたことがある。

「ねぇ長谷川、君、吉川に気があるでしょ。」

「はぁ? 桃が好きなのはお前だろ、一目瞭然じゃん。」

 寛いでる長谷川は変わった様子を見せないけれど、否定しないし図星だな。ふぅーん。同室の交だし手伝ってあげてもいいかな。

「あの子じゃなくて君の話をしているんだけどね。ねぇ、俺あの子嫌いなんだよね。俺から離してくれない?、それで君のものにしてしまえばいい。協力するよ。」

「協力って何言ってんの?、あいつの気持ちわかってんなら勝手な事すんなよ。お前、桃に限らず他人への態度もっと改めた方がいいんじゃないか?、このままだと一宮くんにも迷惑がかかると思うけど。」

「俺を脅そうとしてるの? 君とは一年この部屋で過ごすんだからいい関係でいようと思ったのに。まぁいいや、君にその気がないなら勝手にするよ。今まで控えめにしてたけどさすがにもう片付けないと。吉川の気持ちを他に向けさせて終わらせようと思ったけど……他のやり方でもいいかな。彼、βの割には可愛い顔してるしね。」

 俺の唯を人質にしようとしたんだ。容赦はしない。恋の終わらせ方なんていくらでもある。それこそ過去の俺がやらかしたみたいな、ね。

「何する気だ?、あんま良くないことしてると足がついて、お前も、、一宮も、」

「まだそんなこと言うの。君には関係ないし、俺はそんなヘマはしないよ。もう話すことはないから。俺、もう寝るから、じゃ。」

「待て!!」

 その場を去ろうとしたら長谷川が腕を掴んで来た。痛いよ、僕もう寝るんだから離して欲しいな。

「……わかった、俺がやる。だからお前は今のままでいい、何もすんな。」

 俺がやる?、何をするんだろう。あ、君が僕からあいつを離すって話だったっけ。やっぱりやるんじゃん。初めから言ってくれれば余計な思考は要らなかったのに。

「そっか。じゃあ君に任せるよ。ちゃんと仕事してね。あと、吉川から目を離さないでね。」

 問題がひとつ片付きそうで良かった。早くまた唯と一緒にお昼食べたい。











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