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桃の章
心配ごと
しおりを挟む「それでね、全然覚えられなくて。」
「そっか、でもまだ時間はあるから少しづつ覚えていけばいいんだよ。」
「うん……。」
ある日の昼休み、久しぶりに一仁と一緒に過ごした。体育祭が楽しみな反面、ダンスが全く上手くいかないことを伝える。
「しかもね、衣装が……、何になるかまだ決まってないの。どうしよう、スカートになったら。ただでさえ下手なのにもう見ていられなくなっちゃうよね。うぁーん、やだぁ。」
「……へぇ、それは困ったね。」
「そうなの。助けて一仁ぉ。」
「なんとかなるよ。まずは曲を覚えようね。そうしたら体も勝手に動くようになるよ。」
「うん……。」
流石は一仁、本能で生きている光くん達とは違って的確なアドバイスをくれる。
「そういえば、一仁は何に出るの?」
「リレーと短距離走と騎馬戦と、、障害物競走だったかな。」
「いっぱい出るじゃん。お願い、頑張らないで。」
残念ながら一仁は翠組で別れてしまった。一仁にがんばられるとこちらが負けてしまう。
「ふふ、どうしよっかなー。」
「、、まぁ僕も頑張るし。こっちにだってすごい人いるかもしれないし、負けないよ。」
「うん、頑張ろうね。」
ご飯を食べ終えてまた少しおしゃべりして、始業のチャイムがなる前に別れた。
○一仁視点
久しぶりに唯とゆっくり話が出来て活力をチャージした俺は今、生徒会室に向かっている。癒し(唯との会話)で気になるところがあったから。久しぶりの唯もすっごい可愛かったし、こんなことしてないでもっと唯との時間に回したいんだけどな。
そもそもなんで最近唯と会えないかって、そもそもαのクラスはΩのクラスより授業が多くて放課後一緒に帰れなかったり、藤宮先輩に気に入られて生徒会の用事を押し付けられたり、βの吉川に付きまとわれたり、αのコミュニティでも色々あったりするからなんだけど。まぁこれもこの学園で優位に立って、唯と一緒に居るためだから頑張れる。αは縄張り意識が強いから大丈夫だと思うが、唯の安全のために日々気が抜けない。
と、色々考えている間に目的地に着いた。
コンコンコン
「失礼します。」
「あれ、一仁、今日は手伝い呼んでなかったと思うが?」
生徒会室の中には会長の藤宮先輩と風紀委員長の一条先輩がいた。
「いえ、今日は私用で。体育祭の事なんですけど。」
「うん?」
「ダンスがあるらしいですね。いいと思いますよ、Ωが踊って応援して、さぞみんなの士気が上がるでしょうね。でもだからといってスカートはやりすぎなんじゃないですか? 揺れるスカートたら覗く太もも、動きによっては下着なんかも見えたりして!、俺も唯のそんな姿が見れるのは嬉しいですけど他の奴らにも晒すとなると心底許せないです。先輩もいいんですか? 弟さんのそんな姿を晒して! 僕なら到底許せな」
「あーあー、お前の言いたいことはわかったから。そのスカートって誰から聞いたんだ? 確かに去年まであったが今年は無くした。前も言ったが確かに去年までの数年はこの学園もΩを性の対象としか見ない悪い風潮だったが、俺と、先輩達が変えたんだ。今はΩの生徒も楽しく過ごせるように努めている。ちょっと考えれば分かるだろ、俺は陽向のために生徒会長になって陽向のためにこの学園をつくりかえているんだ。そんな俺がΩの不利なことをするはずがないし陽向も嫌な気持ちになると考えただけで」
「そうだな。一仁もお前と同じように周りが見えなくなったんだろうな。ところで2人とも、あの子たちの衣装の話もいいけど、お前らが出る障害物競走のコスプレの案も色々あるみたいだね。お、この着ぐるみなんで最高に動きにくくていいんじゃないか?」
その後は完全に意識が逸れて、体育祭の他の部分に着いて話し合った。障害物競走のコスプレを含め色々とサクサクきまった。藤宮先輩は弟以外のことに関してはとても大雑把な人だけど、弟を含めΩの生徒など、助けの必要な人たちへの配慮はどこまでも突き詰める、そこだけは尊敬できる人だった。
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