ずっと隣に

をよよ

文字の大きさ
上 下
20 / 47
桃の章

悪魔〜一仁視点〜

しおりを挟む
家族との挨拶等を済ませて学園に戻る。唯が友達とお喋りを済ませた後、その友達の一人に呼ばれた。

 「鮫島くん、ちょっといい?」

 「何?、えーと。」

 「光。唯以外に興味が無いのはわかったけど、αサマは記憶力がいいんじゃなかった?」

 「ごめんね、光くん。でも俺もちょうど話したいことがあって、ちょうど良かった。」

 「、、、今までは見逃してたけど、今回は無理。臭すぎ、あんなに唯にフェロモン付けて。同室の僕への配慮はないの?」

  配慮のできるすばらしい光くんに嬉しい所を指摘された。少し照れる。

 「抑えられなくって。」

 「……僕が発情期になったら、唯からするαの匂いにつられて唯を襲っちゃうかも。」

 「……は?」

 「あんなに濃いの、誘発されてもおかしくないね。でも抑えられないならしょうがないね。僕も発情期は抑えられる自信がないや。」

  光くんが唯に……? そんなことできるのか?、いや、Ωのカップルがいないとは言いきれないし、Ωだって小さくてもついてるものはついてる……。流石は俺の認めるΩだ、αの扱い方をわかっている。これには僕も折れるしかない。

 「……気をつけるよ。」

 「ありがとう。」

 「俺からもいいかな。唯に寮の大浴場を使うなって言ったの、聞いてたよね。使って欲しくないんだ。光くんが誘ったんでしょ?、やめてくれないかな。」

 「そこは普通に無理。お風呂くらい好きにさせてあげなよ。ちょっとキモイよ。」

 「キモくて結構。たとえΩでも他の人に番の裸を見られていいαなんていないと思うよ。」

 「まだ番ってないでしょ。唯に"噛んで"も言って貰えてないのに、お風呂まで指図しないで。」

 「……わかった、前みたいな強制はしないよ。でもやっぱり行って欲しくないからその気持ちだけは毎日伝えようかな。唯ならわかってくれるかも。」

 「……はぁ、明日から僕が唯のネクタイやってあげなきゃな。」

 「……は?」

 「さっきのとは別の話だよ?、5月にも入ったし、そろそろネクタイも結べないじゃね。朝も頑張って早起きして、朝ごはんもちゃんと食べなきゃ。」

 「え、いやちょっとまっ……」

 「ていうか、朝だけじゃなくて、もう全部しっかりしよう!高校生なんだから。璃来はあれだけど、陽向も呼んで四人で勉強会すれば成績もアップだ。わー、明日から頑張らないと。楽しみだなー。」

  目の前で悪魔が笑っている。

 「やめて!、俺の朝の楽しみを奪わないで。わかった、お風呂は……諦めるから。」

 「本当?、一仁がΩに理解あるαでよかった。じゃあまた明日から唯のお世話頑張ってねー。」

  日々α同士のいろいろは完璧に対処してきた俺も、目の前で天使のように笑う悪魔には完全敗北だった。










~唯視点~

「唯、お風呂いこー。」

 「あ……うん。」

  今日も光くんはお風呂を誘ってくれる。でも、一仁と入った時、ちょっと口を滑らせちゃったし、内緒にしとくのが難しそう。

 「一仁なら大丈夫だよ。そんなに罪悪感あるなら、明日謝ってみなよ。許してくれるかもよ。」

 「そうかな。うん、謝る。」
 
 「うん。じゃあ、いこっ。」

  内緒にしててもやっぱりみんなでお風呂に入るのは楽しい。






  翌朝、いつものごとく一仁にネクタイを結んで貰ってる時に打ち明けてみた。

 「一仁、あのね、僕いままで約束破ってずっとみんなでお風呂行ってたの。ごめんなさい。」

 「…あぁ、あれは僕もちょっと言いすぎたかなって思ってたんだ。ごめんね、お風呂みんなで行っていいよ。」

 「本当?、ありがとう。」

  素直に謝ったら許してくれた。きっかけをくれた光くんにもお礼を言う。

 「光くんの言う通りだった、ありがとう。」

 「でしょ?、どういたしましてー。」

 「っ唯、行くよ。」

  一仁に手を取られて急ぎ気味で玄関まで向かった。








しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

運命の人じゃないけど。

加地トモカズ
BL
 αの性を受けた鷹倫(たかみち)は若くして一流企業の取締役に就任し求婚も絶えない美青年で完璧人間。足りないものは人生の伴侶=運命の番であるΩのみ。  しかし鷹倫が惹かれた人は、運命どころかΩでもないβの電気工事士の苳也(とうや)だった。 ※こちらの作品は「男子高校生マツダくんと主夫のツワブキさん」内で腐女子ズが文化祭に出版した同人誌という設定です。

王冠にかける恋【完結】番外編更新中

毬谷
BL
完結済み・番外編更新中 ◆ 国立天風学園にはこんな噂があった。 『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』 もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。 何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。 『生徒たちは、全員首輪をしている』 ◆ 王制がある現代のとある国。 次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。 そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って…… ◆ オメガバース学園もの 超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

処理中です...