19 / 47
桃の章
欲望*〜一仁視点〜
しおりを挟むまだ俺たちが白桃学園に入学する前のこと。俺は自分と唯の入学、入寮準備を理由に唯の母親、隼人さんとショッピングモールに来ていた。
「買い物はこれくらいでいいかな。ちょっと休憩しよう。」
「はい。」
隼人さんと近くのカフェに入り、お茶する。
「あの、隼人さん。高校に行ったらΩのネックガード配られるじゃないですか。唯のやつ、僕からあげてもいいですか?、実はもう作って貰ってはあるんです。勿論、まだ待てっていうなら待ちます。」
「ネックガードか。俺はつけたことないから分からないけど、好きな人から貰ったら凄く嬉しいんだろな。…唯は凄いお前のことが好きだよ、見てればわかる。だから、ネックガードは一仁からあげて。」
「…!!、ありがとうございます!」
「でもっ、噛むのはまだ駄目。まだっていうかあいつから言われるまで絶対に駄目。ヒートの時に言われたのもダメだからな、あんなの酔っ払いの言うことと同じだから。無理矢理ヒートを起こすなんて以ての外。」
「はい、勿論です。」
「……本当は、ヒートの時もあんま会って欲しくないんだ。一人でやり過ごすのは唯が辛いっていうのはわかってるけど、俺たちΩはaに手を差し伸べられたらあんま考えれないで手を取りたくなってしまうから。唯には選択肢を残しておいてあげたいんだ。」
隼人さんは冬嗣さんに中学生の時に番にされている。だから唯に番を選ばせてあげたいという気持ちがあるのは分かる。でもそのせいで俺はまだ唯を噛む許しを貰えない。こうなると冬嗣さんを恨まずには居られない。このショタコンめ。
「隼人さんの気持ちも理解しています。唯から「噛んで」と言われるまで噛むつもりはありませんし、少し辛いけどヒートの相手も頑張って抑えます。今はネックガードの許しが貰えただけで嬉しいです。ありがとうございます。」
「うん。」
その後、僕は隼人さんを丁重に家まで送り届けた。
5月に入って数日経ち、今日から四日間、唯と二人きりのお休みだ。これは唯を俺のフェロモンを馴染ませるという目的もあるけど、将来、結婚した後の二人の生活の予行練習でもある。楽しみで仕方がない。フェロモンを抑えられるわけが無いので存分に浴びせてあわよくば発情期にならないかなと思っている。
別荘につくと唯は大興奮で家中を駆け回っていた。気に入って貰えたようでよかった。唯は先ずやっぱりゲームに走る。でもその後はちゃんと勉強もさせる。俺の予定では四日目は勉強の時間を取らずにずっとまったりする予定だから、初日に課題を半分程やらせておく。料理は少し苦手みたいだ。たしかに俺の記憶の限り唯が料理をしている所を見たことがなかった。念の為に包丁を持たせなかったが、多分持たせていなかったら別荘殺人事件が起こっただろう。
そして夜ご飯の後、俺は少し欲が出て唯に一緒にお風呂に入るのを提案してしまった。唯は嬉しいことに、断らなかった。それは凄く凄く嬉しかった。でも……。
「ふぅー、あったかーい。」
「……。」
「ふふ、お背中お流ししましょーか。」
「……ううん、唯はずっと湯船つかってて。」
「えー、ノリ悪いなぁ。いつもみんなで……あ、ううん、なんでもない。」
先に唯に洗ってもらって、その魅力的な四肢を湯の中に隠す。気がいってしまうから正直ずっと黙ってて欲しい、我慢が辛い。唯が、恐らくまだ寮で大浴場を使っていると、口を滑らせたおかげで怒りが湧いて少し落ち着いた。
俺が洗い終わるまで唯は出てくれなかった。出ろ、とも言えないので離れて湯船に浸かる。お湯が透明で丸見えだ。こんなことならバラでもなんでも浮かべておけばよかった。あんなアヒル一羽じゃ何も隠れない。しかもアソコは完全に反応して出ようにも出られない。素数を頭の中で数えながら小さく蹲って唯が出るのをじっと待つ。
唯が出るまでそう長くはなかった。よく体を拭くように伝えて、俺は少し抜かせて貰った。
夜も我慢との戦いだった。唯は早くに寝てしまって、ベッドに転がるのはご馳走。項に顔を寄せればなんとも言えないいい香りがする。思わず歯をたてる。勿論ネックガードに阻まれるがお構い無しに何度も歯を立てる。
「ん、ダメ。唯、唯、ゆい、ゆい、はぁ……」
項から香る微かな甘みに俺の体も反応して、フェロモンはダダ漏れだし下もさっき抜いたのにまた勃ってくる。
「はぁ、ゆい、ゆい……んっ」
後ろから、少し布をまくって唯に触れ、思わずイってしまったがまだ熱は収まらない。僅かな理性で、このままではボロボロになりそうなネックガードにさっきまで髪を拭いていたタオルを巻き付けた。
まだ噛めない、まだ番になれない……。俺はいつまで待てばいいの? 覚めない熱をもって俺は長い夜を過ごした。
結局一睡も出来なかった。時間は朝6時半。まだ活動を始めるには早い時間だがシャワーを浴びるために起き上がった。ベッドも汚れていたので、唯を起こさないように軽く整える。その後はお風呂でずっと冷水を浴びて体を冷ます。夜もこうしておけば少しは眠れたかもしれないと今になって気づいた。シャワーから出ると唯が起きていた。いつもなら絶対に起きないような時間だ。俺がいなくなって目が覚めたのか、本当に愛おしい。
綺麗になったベッドに横になると唯が俺の匂いを嗅いでくる。まだ眠そうだから寝てもいいと言ったのにずっと匂いを嗅いでいる。こんなに惹かれあっているのにお前はどうして"噛んで"の一言を言ってくれない。
結局唯は俺の腕の中で眠りについた。本当に俺を惑わせる、でも愛おしくて仕方がない存在だ。
「……おやすみ、唯。」
俺も唯を抱いて少し眠った。
二日目から唯は凄い勢いで俺のフェロモンに慣れていった。俺から片時も離れないでずっと甘えてくれる。体が本格的なΩになろうとしているからかよく眠った。起きてもぼーっとしていてご飯も着替えもトイレも俺がする。こんなに幸せなことは無い。でも楽しい時間はあっという間ですぐに連休の最終日だ。俺は帰りの車内まで唯を可愛がった。
「唯、おかえり!……は?」
「安心してください、噛んでません。でも少しやりすぎちゃいました。」
唯の状態を見て固まる隼人さんに軽く詫びる。でも少し怒られた。唯もなかなか俺から離れないから最終的にはビンタされていた。隼人さん、それはさすがに唯が可哀想。
高校の名前書いてなかったかもと思って遡ったら多分書いてなかったです。
私立白桃学園です。理由はコレ考えてる時に私が桃食べてたからです。
43
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説


僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。


王冠にかける恋【完結】番外編更新中
毬谷
BL
完結済み・番外編更新中
◆
国立天風学園にはこんな噂があった。
『この学園に在籍する生徒は全員オメガである』
もちろん、根も歯もない噂だったが、学園になんら関わりのない国民たちはその噂を疑うことはなかった。
何故そんな噂が出回ったかというと、出入りの業者がこんなことを漏らしたからである。
『生徒たちは、全員首輪をしている』
◆
王制がある現代のとある国。
次期国王である第一王子・五鳳院景(ごおういんけい)も通う超エリート校・国立天風学園。
そこの生徒である笠間真加(かさままなか)は、ある日「ハル」という名前しかわからない謎の生徒と出会って……
◆
オメガバース学園もの
超ロイヤルアルファ×(比較的)普通の男子高校生オメガです。

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。

Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる